ダンスで広がる子どもたちの可能性と絆【松本利夫さん、EXILE ÜSAさん、EXILE MAKIDAIさん・第7回】
「ダンスに挑戦したことによって得られた達成感が自信につながり、子どもたちはどんどん自分の殻を脱ぎ捨てて変わっていく」と語るのは、NHKのダンス番組『Eダンスアカデミー』で主任講師をしていたEXILE ÜSAさん。EXILEメンバーで現在ソロ活動をされている松本利夫さん、EXILE MAKIDAIさんとともに、ダンスを通して子どもたちの可能性を引き出す方法などについて、語っていただきました。
はじめの一歩はジャンプや足を踏み鳴らすこと
――中学校で必修教科になっているダンス。大好きという子がいる一方で、苦手意識を持っている子もいます。苦手な子のやる気を引き出すためには何をしたらいいですか?
松本利夫さん(以下、松本):正直言うと、苦手な子がいてもいいし、苦手だからといって無理に好きになろうとしなくてもいいと思うんです。ただ、やってみるとおもしろいと思うこともあるよね。
EXILE ÜSAさん(以下、ÜSA):食わず嫌いな子も多いよね。「僕はリズム感ないから……」みたいな感じで、何もしてないうちから自分で殻を作ってしまっている子も多いんじゃないかな。ダンスの最初の一歩目って実はすごくシンプルで、たとえばジャンプとか、足を踏み鳴らすとか、そんな簡単なことでいいんですよ。
ダンスは単純な動き――たとえば音楽が鳴ってジャンプをしたり、足を踏み鳴らしたり、そういう簡単なことって、実は誰でもできるんです。音に合わせて体を動かした瞬間に体がほぐれて同時に心もほぐれていく。それを繰り返すと、最終的にいろいろな技ができるんだなとわかってくる。それによって踊ることを楽しめるようになってきますよ!
――ダンスの楽しさを子どもたちに伝え、引き出してあげるためにはどうしたらいいですか?
松本:ダンスは、一見すると1人で踊っているように見えるかもしれませんが、実は共同作業なんです。みんなが踊って、みんなの温度感を合わせることによって相乗効果で楽しくなる。
たとえば日本の文化でいうと、盆踊りは1人だけで踊るわけではなく、たくさんの人が集まり、だんだん楽しくなって、その楽しい雰囲気に包まれますよね。そういった意味で、ダンスは1人で踊っているようだけど、協調性も大事なんですね。
EXILE MAKIDAIさん(以下、MAKIDAI):ダンスを通して、仲間と助け合いひとつのものを作り上げることってあると思うんですね。友達同士で「あそこの動きはこうしたほうがいい」とか、「こんなことやりたいんだよね」、「そんなことできるわけない」でもいいと思うんですよ。子どもたちはチャレンジする勇気もあるし、チャンスもあるし、何よりも時間がたくさんありますよね。ダンスを通じて、いろいろなことにチャレンジしていってほしいですね。
「苦手だと思っていたけど、やってみたらできた!」
――NHKのÜSAさんがやっていたダンス番組『Eダンスアカデミー』をみて、ダンスが好きになった子も多そうですね。
ÜSA:9年間子どもたちにダンスを教える担当をしていた『Eダンスアカデミー』は、本当に楽しかったです! ダンスに対して苦手意識がある子どもたちが、徐々に踊れるようになっていく姿をみるのがすごく嬉しくて……!
「苦手だと思っていたけど、やってみたらできた!」というのは、たったひとつのステップで感じられるんですよ。挑戦したことによって得られた達成感が自信につながり、子どもたちはどんどん自分の殻を脱ぎ捨てて変わっていくんです。
それを他の子どもたちと一緒にやることで、先ほどまっちゃん(松本さん)が言っていたように、「俺たちはつながっているんだ。1人で踊っているわけじゃないんだ」と、つながりも確認できる。自分の動きでリズムを感じることが、自信にもつながっていきます。
「恥ずかしい」を取り除くと、まったく別の世界が見えてくる
松本:ダンスが苦手な子は、「恥ずかしい」という思いがどこかにあるのかもしれませんね。ダンスに限らず運動全般、歌でもそうですが、「恥ずかしい」を取り除くと、まったく別の世界が見えてくると思います。
僕も子どもの頃、父親とか母親に自分がダンスしているのを見られるのがすごく恥ずかしかったんですよ。16歳のときにダンスに目覚めたんですけど、そのとき親に踊っているところ見られると恥ずかしすぎて、なぜか怒っていました。
MAKIDAI:僕も恥ずかしかったですね。ダンスをすること自体、新しい自分との出会いであり、そんな姿を親や近い人に見てもらうということも初めてのことだったので。自分自身も1人で踊るというよりクラスメイトの誰かとやりつつも、最初は人前で踊るとなったら照れもありました。でも何よりも本能で踊りたいと思ったので、それは止める必要はないな、と。
もし、これからダンスを始める子どもたちがいたとしたら、「恥ずかしい」という気持ちがあっても挑戦してみてほしいですね。そこから何か始まることがあるかもしれません。
(編集後記)
松本利夫さん、EXILE ÜSAさん、EXILE MAKIDAIさんのインタビューも今回で最後。「‟恥ずかしい”を取り除くと、まったく別の世界が見えてくる」という言葉はぜひ子どもたちに伝えてあげたいですね。その言葉をきっかけに、ダンスはもちろん、子どもたちが新しいことに挑戦していけることを願っています。
取材、文・長瀬由利子 編集・山内ウェンディ