<大学生の機会損失>オンライン授業でも学費は同じ!?新型コロナウイルスで一変した大学生活
2022年4月、娘が晴れて社会人となりました。新型コロナウイルスの影響を受け、思うように動けなかった大学生活後半。授業は全面オンラインに切り替えとなり、予定されていた学校行事はすべて中止。1年間の海外留学が中止になったときは、未来が奪われたような気持ちになりました。
けっして「充実した大学生活」とは言い難い時間を過ごした娘たち。同世代の大学生たちはこの期間をどのように過ごしていたのでしょうか。
オンライン授業のメリット・デメリット
オンライン=便利というイメージがあるかもしれませんが、実際には授業をする側の先生にも、授業を受ける側の学生にも「オンラインが苦手」という人が一定数いるのではないでしょうか。
ベネッセ教育総合研究所が2021年12月に実施した調査によると、大学生がオンライン授業のメリットとして挙げたのは、「自由時間が増える」「好きな場所で受講できる」などの利便性。一方デメリットとしては「一方的な授業が多い」「対話や議論がしにくい」など、学習のしにくさに関する項目が上位となりました。
娘が授業を受けている様子を覗き見したときは、先生がマイクやカメラの設定であたふたしていました。また先生が問いかけても、学生からは反応がなく静まり返る授業も。オンラインになったことで、授業への意欲が持ちづらい点もあったかもしれませんね。周りに親やきょうだいがいると、集中して授業が受けられないこともあったでしょう。
娘のクラスでは、日を追うごとに授業に出席する生徒が減っていったのだそう。とはいえ、画面上では誰がいないのかわかりづらく、ずいぶん後になってから「あの子、退学したんだってよ」と聞くこともあったようです。
友だちや仲間との繋がりは?
また学内での友だちに関する質問では、「悩み事を相談できる友だち」がいない、もしくは1人と答えた学生が、全体の1/3以上を占めました。新型コロナウイルス感染拡大時と入学時期が重なる2020年度入学の学生(下図では2年生)においては、特にその割合が大きい結果となっています。
本来であれば、授業のほかにもサークルや部活動、アルバイトなど、さまざまな人との出会いが期待できる大学生活。それらの場が制限され、友だちを作る機会が少なくなった様子がうかがえます。
もしくはオンラインでのコミュニケーションが主流になり、気心知れた友だちのほうが連絡をとりやすかったのでしょうか。娘の場合は、大学の友だちではなく、高校時代の友だちと連絡を取り合うことのほうが多かった気がします。
ひとり暮らしの部屋をどうするか
またオンライン授業へ切り替えとなったことで、アパート住まいを続けるのかどうかを考えた家庭もあったかもしれません。なかには、しばらくの間、実家に帰ることにした学生もいたはずです。
家主がいなくても、家賃や光熱費はこれまでどおりかかります。かといって部屋を引き払ってしまえば、いざというとき実家から学校へ通うこととなり、学校が完全再開したときに部屋を借りなおす必要も出てきます。それはそれで、また敷金や引っ越し費用がかかるという、なんとも悩ましい問題。
わが家では検討した結果、娘のアパートは借りたままにしましたが、クラスメイトのひとりはアパートを解約し実家へ戻りました。登校する日は新幹線を使い、往復5時間ほどをかけて通学していたようです。
それでも学費は同じ?減額や返金の措置をした大学は少ない
もうひとつ、親として葛藤を抱いたのが学費の問題です。オンライン授業で単位は問題なく取得できても、先生と顔を突き合わせて学ぶゼミ、サークル活動や学校行事などはすべてなし。「経験」という意味においては、得られなかったことがたくさんあります。それでも支払う学費はコロナ前と同じなのです。
一般社団法人私立大学連盟が令和2年におこなった調査によると、
『講義をオンラインで実施した等の理由による学費の減額・返金等の措置は、ほとんどの大学で実施していない』
という結果に。
学校を維持していくために、さまざまな費用がかかるのは理解できます。でも学生たちの経験が奪われた現実を見ると、何かしらの経済的な救済策があってもよかったのではないかとも、筆者は思うのです。たとえば学費が減額・返金されるとか、1年間在籍を延長しても新たな学費はかからないとか。そうすれば、娘のように留学の機会を逃した学生や、就活のタイミングを見計らいたい学生が、大学生活を延長するなどの選択ができるかもしれません。
同時に、予測不可能な出来事だったとはいえ、わが子の学ぶ意欲を応援するために、親がもっと余裕を持った資金計画をしておかなければならなかったのだな……という反省にもつながりました。
辛いのは自分だけじゃない。でも……
新型コロナウイルスの感染拡大が、自分にとってどのような影響を与えたかという質問に対しては、「プラスに影響した」と答えた学生が40%強、「マイナスの影響があった」と答えた学生が約30%となりました。
プラスだと感じた理由としては、「自由になる時間が増えた結果、将来や進路を考える機会になった」「資格を取得するための勉強ができた」「家族や友だちとすごすことの大切さを感じた」などが挙げられています。一方マイナスと感じた理由として、オンライン授業へのネガティブな意見や、精神的な辛さを挙げた学生もいました。
海外留学が中止になり、気持ちが塞ぎ続けている娘に「辛いのはあなただけじゃないのよ、お友だちもみんな一緒でしょ」と、励ましのつもりで言葉を掛けたことがあります。すると娘からは「そんなの言われなくてもわかってる! でもこの辛さは経験してないお母さんには絶対わからない」と言われてしまいました。
わが子が葛藤しているときは早くそこから脱してほしいと、個人的には思ってしまいます。悩んでいる姿を見るのは辛いですし、解決のきっかけが少しでも作れたらと考えてしまうのです。でも悩むのも、そこから抜け出すタイミングも本人が決めることなんですよね。やっぱり親は待つことしかできない。その事実を改めて突きつけられた出来事でした。
人生は寄り道だらけ。ターニングポイントは後からわかる
突発的な出来事で人生計画が狂ったとき、それをどう捉えるかは、今回に限らず人生の大きなテーマではないでしょうか。
親の私たちにも、人生が計画どおりに進まなかった経験がきっとありますよね。どうしようもなく不運に思えた出来事が、今となっては人生の糧になっていることもある。むしろ苦しかった経験ほど「あれがターニングポイントだったかも」と感じることも多いはずです。
でも渦中にいる子どもたちは、それが良い経験になるとは思えないんですよね。若い頃の私たちがそうだったように。
ただ思いがけないトラブルを「ツイてない」ととらえるか、「何らかのチャンス!」ととらえるのかは、自分で決めることができます。自ら望んだ寄り道ではなくても、そこでしか経験できない何かが待っていると思えば、それも悪くない気がします。
人生は寄り道だらけ。まっすぐ進めないところにこそ新たな発見や出会いが待っていることも多いのではないでしょうか。そんなものの見方もあるよ、ということは、折に触れて子どもに伝えていきたいですね。
名称:第4回大学生の学習・生活実態調査
調査テーマ:大学生の学習・生活に関する意識・実態
調査時期:2021年12月
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国の大学1~4年生4,124名(男子2,228名、女子1,896名)
※男女比が実際の大学生の比率になるように調整
※各学年25%ずつ(1,031名ずつ)抽出した
文・Natsu 編集・しらたまよ
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