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習い事での突然の嫌がらせで子どもが体調不良に……親子で乗り切った対処方法とは?

115_親子_加藤みちか
娘が小3のころ、夫の転勤で現在住む地方都市へ引っ越してきました。引っ越しに伴い、今まで習っていたスポーツを続けるため生徒数が5~6人程度の小さなクラブに入会しました。チームの雰囲気や仲間・コーチとの相性も良かったので、当初は週に2回楽しく通っていたのです。

しかし入会して半年経った頃のことです。娘の腕に小さな湿疹ができました。きっとすぐに治るだろうと悠長に構えていたのも束の間。搔きむしっていると気づいた頃には湿疹は全身に、間もなく顔にも広がってしまいました。

娘の肌の異変に筆者が気づいたときは、大型連休中。病院はお休みで皮膚のトラブルで救急病院に行くのは気が引けてしまい、連休明けに受診することにしました。転入した小学校でも入会したクラブでも、娘は楽しそうに活動していると思っていたので、娘の急な体調不良に筆者は戸惑うばかり……原因は一体何だったのでしょうか。

仲が良いと思っていたのに……クラブのチームメイトが娘へ嫌がらせ

ある日のクラブからの帰り道、突然娘が、クラブのチームメイトであるA君から言葉による嫌がらせを受けていると筆者に告白しました。A君は娘より一つ年下で、頻繁に顔を合わせるチームメイトであり、クラブにはA君のお兄さんも在籍しています。

A君は娘に近寄ってきては「ウザイ」「どけ」などの悪口を言い、ミスをからかったり、練習場で付きまとったり、娘の言動をまねしたり。一方でいずれの行動も、ほかの人に気付かれないよう振る舞っていたようです。

いつから嫌がらせをするようになったか娘に詳しく聞いてみました。するとその時期は、入会した翌月に地域の小さな大会で娘が優勝した直後だったことが明らかになりました。その後も何度か大会に出場し、娘が活躍するたびA君の嫌がらせに拍車がかかっていったそうです。娘は半年以上も、嫌がらせを親にも言わず我慢していたのです。

一人でつらさを抱えてしまうタイプの娘と話し合い

娘は頻繁に顔を合わせるチームメイトからの嫌がらせが続き我慢し続けた結果、体調に悪影響が出るようになってしまいました。娘は困難の渦中にいると、一人でつらさを抱えてしまうタイプ。嫌な気持ちを消化できたり解決した頃に「実は……」と親に告白をするので、筆者から「そのときに教えてくれればいいのに」と諭すことが今までありました。しかしもしかしたら知らず知らずのうちに筆者は、娘が弱音を吐きにくい環境を作ってしまっていたのかもしれません……。そのことは大いに反省しました。

さて次は、A君からの嫌がらせにどのように対処するべきか娘と考えることにしました。考えた対処法は嫌がらせをされたら「やめて」とはっきり言う、相手にしない、その場を離れる、上の学年の親しい子たちやチームメイトであるA君のお兄さんを頼るなど。さらに嫌がらせをされているからといって相手の全てを嫌うのではなく、A君から良いことをされたらきちんと感謝することも伝えました。娘に偏った考え方をしてほしくないからです。

しかしどんな方法を試してみても、嫌がらせはなくならず全く効果はないようで……。

不本意だけど「クラブを辞めたい」と話した娘の本音

ある日、娘のかきむしった肌に対してA君が「気持ち悪い。あっちへ行け」と言ったことで、娘はとうとう耐え切れなくなりました。初めて「クラブを辞めたい」と弱音を吐いたのです。いろんな対処法を試してきましたが効果はなく、最終手段としてA君が嫌な言葉を言ってきたら「嫌な言葉をオウム返し」してみてはどうかと提案すると、娘は「イヤな言葉は言いたくない」と相手への思いやりをみせました……。娘の優しさを感じ、A君の理不尽な嫌がらせに対して親として怒りがこみ上げてくると同時に、だからこそ娘には負けないで乗り越えてほしいと願いました。

しかし忍耐力が尽きてしまったような表情を見せる娘……。これ以上がんばらせるのは酷だと判断し、娘の辞めたいという気持ちを受け入れることにしました。

コーチから引き留められ……娘の決断

「辞めたいです」と娘がコーチに伝えると、案の定引き留められました。個人レッスンや週末の自主練習も行いながら技術習得に励んできた娘の努力は、親よりもコーチの方が何倍も理解されているでしょう。「つらいだろうけど負けないでほしい」と言われ、娘は嫌がらせに屈して辞めたくない気持ちを刺激されたのか、しばらく黙って下を向いてしまいました。しかし再びコーチの「負けないでほしい」という言葉を受けて、「続ける」と言ったのです。

筆者が娘に対して「自分自身に打ち勝ってほしい気持ち」と「無理強いさせたくない気持ち」という2つの気持ちの間で苦悩したように、娘の心も揺れ動いていたのですね。

気分も新たに再出発を切った娘ですが、A君の嫌がらせは以前と変わらず……。万策が尽きて悶々とするなか、筆者がある雑誌を読んでいると、「“相手の幸せを願う”ことにより状況の変化が期待できる」という言葉に目が留まりました。どういうこと?

「続けたい気持ち」をモチベーションにしよう!

「“相手の幸せを願う”ことにより状況の変化が期待できる」。嫌なことをしてくる相手の幸せを願うということでしょうか。雑誌には理由が述べられていないのでどういうことかわからず、怪しいと言ってはなんですが、ともかく信じられません。そもそも、娘の心身をズタズタにしたA君の幸せを願うだなんて、到底考えられませんでした。

しかし筆者は、その言葉が気になり……。しばらく葛藤が続きました。娘の肌の状況は一進一退で、気持ちも一喜一憂。娘自身が習い事を続けると言ったとはいえ、希望が見えない状況に親としても不安は募るばかりでした。ほかの対処法も見つからないので娘に雑誌に書いてあった“相手の幸せを願う”ことを提案したところ、案の定「イヤだ」との返事。相手の幸せを願える状況ではない娘からの返事は当然だと思います。

娘の気持ちを理解できたので、私なりにアレンジを考えてみました。「みんなの」幸せをただ祈るだけ、練習が楽しくなるようにと祈るだけというアイディアです。娘をクラブに車で送った際、予告なしに「A君も私もみんなと楽しく練習できますように」と親子で口に出して言ってみました。それを続けて10日ほど経った頃、帰りの車でいつものように「今日のA君の様子」を尋ねると、「ちょっかいを出してこなかった」と言うのです。たまたま、でしょうか……? 理由はわかりませんが、とにかく良い兆候です。

「みんなの幸せを願おう」という声掛けが、娘にとって前向きな気持ちにつながる暗示になったのでしょうか。A君に対する娘の表情と雰囲気が柔らかく変わり、それがA君に伝わったのかもしれません。まるでイソップ寓話『北風と太陽』のようにA君の態度も次第に軟化していきました。

嫌がらせが減り体調は回復。今後も子どもが親を頼れる関係づくりを

A君の嫌がらせが減るにつれて娘の肌は回復していき、半年後には見事完治! その後はA君との練習時間も重ならなくなりました。チームを辞めずにA君への嫌がらせに屈せず、困難を乗り切った娘に拍手を送りたいです。

苦しくなったとき娘のように弱音を言えず感情を内にためてしまうタイプか、A君のように自分の成績が振るわないと他人に八つ当たりするタイプかはさまざまだと思います。しかし共通して悩みを自分の中にためてしまう子も、他人に攻撃的になってしまう子も、今の状況がつらいというSOSを何らかの形で出しているのはないでしょうか。

今回の出来事を通して、日頃から親に遠慮せずにつらい気持ちを吐き出せるよう安心して頼れる親子関係を築きたいと、より一層強く思いました。

文・ななみや 編集・横内みか イラスト・加藤みちか

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