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【前編】子どもを災害から守りたいなら一番最初にすることは「防災リュックの準備」ではありません

pixta_62276610_M全国各地で大規模な自然災害が続いている昨今、防災や備蓄への関心が高まっているように感じます。「何をどれくらい備蓄しておけばいいの?」「防災リュックの中身はこれでいいの?」と備蓄について考える機会が増えたママも多いのではないでしょうか? しかし「私が見聞きしたなかで、震度7の地震の最中に防災リュックを持って逃げられたママはいません(笑)」そう話してくださったのは防災ママカフェ®代表のかもんまゆさん。「リュックを持って逃げることができない」のは衝撃ですが、それならば今、私たちにできること、やるべきことは何なのでしょうか?

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備蓄品や非常用リュックの準備よりも前に大切なこと

かもんまゆ(以下、かもん): 私がやっている「防災ママカフェ®」でも、必ずといっていいほど「何をどれくらい備蓄しておいたらいいですか?」などと質問が寄せられます。

備蓄や防災リュックの準備ももちろん大事です。でもちょっと考えてみてください。備蓄も防災リュックも「生き残った後に使うもの」なんですよね。まずは大地震が起きたその瞬間を生き延びられなければ、頑張って備蓄しておいたところで出番すらない。防災は「リュックを作ること」ではなく「自分と大切な人のいのちを守ること」なんです。

親であれば誰でも、災害から大切な子どものいのちを守りたいと考えるのは当然のこと。でも、あなたが「何が起きるか知らない」「何も備えていない」のでは、子どもどころか自分のいのちすら守れるか怪しいものになってしまいます。まずは正しい順番で「備災」を進めましょう。

3つのステップで災害に備える=「備災」

「地震が来るかもしれない」「津波がくるかもしれない」未知の災害を想像し、恐怖を感じてしまうことは誰にでもあるものです。しかし災害に備えようとするときに重要なのは「かもしれない」という予測から一歩抜け出すことなのかもしれません。かもんさんのアドバイスを元に、敵を知るということ、そして災害に備える具体的なステップを考えていくことにしましょう。

かもん:以下、3つのステップに沿って備災について説明していきますね。

ステップ1:敵を知る~公の情報やハザードマップをチェック~

敵を知らなければ絶対に子どもは守れません。まずは自分たちを襲う敵がどんなものなのか、市役所にある地域のハザードマップを手に入れ、住んでいる地域の想定最大震度、津波、大雨や台風で河川が決壊したときの浸水地域などを知ることから始めましょう。地震は震度いくつが来るのか? 震度7か6かでも被害は違ってきます。津波は来るのか? 来るなら何分くらいで来るのか? 川が近くにあるなら浸水の可能性、山などが近ければがけ崩れの可能性なども大事な情報です。地盤の固さ、土地の成り立ちによっても被害のレベルが変わってきます。自分が住む地域の地盤、土地の成り立ちについてもネットなどで調べておきましょう。

ステップ2:「自分」を知る~あなたの家族が災害時にどうなるのかを知っておく~

敵がわかったら、次は味方の戦力チェックです。家族をチームと見立てて、わが家のメンバーはどんな顔ぶれなのか、赤ちゃんがいる、アレルギーのある幼児がいる=特別に準備するものが増える、高齢者がいる、幼児がいる=逃げるのに時間がかかるなど、一般的な大人と比べてみて、弱点を洗い出し対策を考えることが重要です。

「チームわが家」の実態が見えてきたら、次は実際に災害が起きたときどうなるのか、リアルなシミュレーションをしてみましょう。その際役立つのが「自分の家族と境遇が似ている被災者の体験談を見つけること」です。「東北の2歳に起きたことは、うちの2歳にも起きうる」そんな視点で被災地のママたちの体験談を読んでみると、乳幼児のいる家庭の被災生活にはどんな困難があって、今何を準備すればいいかが見えてきます。

ステップ3:ここでようやく「武器の準備」

ステップ1、2を経て、ここでようやく「武器の準備」に入ることができます。防災における武器とは「安全な家と部屋づくり」「家族を安心させられる防災リュックや備蓄」「生き延びるための家族会議」など、具体的な備えのこと。武器とは「敵の力」と「自分たちの戦闘能力」を見極めたうえで、そのギャップを埋めるためのものです。武器から考える戦いがないように、何が起きるかわからないのにリュックから考える防災もありません。何も知らないうちから防災グッズのことばかり考え、役に立たない武器にならないようにしましょう。

乳幼児ママにとって「避難所に行きさえすれば大丈夫……」は幻想

かもん:もしかすると「自分で災害への備えをしておかなくても行政や誰かがどうにかしてくれるだろう」「避難所に行けば何かもらえるんでしょ?」そう考えるママもいるかもしれません。しかし実際に停電や道路の寸断などによって避難所にたどり着けないケースもありますし、たとえ避難所に行けたとしても、被災した東北ママは「乳幼児ママには想像を絶する辛さだった」と教えてくれました。

避難所の備蓄は、誰もが使う水や毛布などごくわずか

これもちょっと考えたらわかることですが、実際どんな災害が起きて、何人が避難してくるかもわからない。予算や備蓄する場所を考えると、市民全員が満足できる分、備蓄を用意しておくことなんかできないですよね。避難所に行けば水や食べ物を貰えると思いがちですが、基本的には水や毛布など「誰でも使うもの」しか用意していません。たとえば150万人都市でも非常食はたった9万人の1日分、つまり27万食しか用意されていないなんてことも普通にあります。「防災ママカフェ®」に参加された自治体防災課担当者は「おむつを備蓄しています」とおっしゃったけれども、おむつにサイズがあることはご存じありませんでした。女性や子どものもの、おむつやミルク、生理用ナプキン、アレルギー対応の食品など「使う人が限られているものは準備されていない」と思って準備してほしいと思います。

感染症の多発など、衛生面も懸念は山積み

津波を経験した東北のママは「避難所はとてつもなく不衛生だった」と言っていました。発災当初の避難所は混乱、そして危険なこともあって土足で歩いていたところもありました。そのような場所でも赤ちゃんはハイハイしてしまう。地震のときは元気だったのに、避難所に着たら高齢者や乳幼児が嘔吐下痢やノロウイルスなどの感染症になってしまう、今ならコロナウイルスも心配ですね。

避難所は不特定多数の人が集まっている場所。「きっとザワザワして騒がしいんだろうな」と思うかもしれませんが、非常時ですので大人も不安と緊張からピリピリした雰囲気で、逆にシーンとしていました。「次に大きな地震が来たらどうなるのか」そんな底知れぬ不安の渦の中で、泣き止まない赤ちゃんの声や子どものグズる声が響けば「うるさい、出ていけ!」「黙らせろよ」など心無い声もあったと聞きます。子ども連れにとって、避難所はけっして安心して過ごすことのできる安全な場所ではないことも見えてきますよね。

トイレは大行列、子どもにとっては怖い場所

食べものの心配をする方は多いのですが、大変なのはトイレです。100人の避難所であればトイレは大行列になります。避難所の仮設トイレは、普段子どもたちが使い慣れていない和式タイプ。洋式トイレしか使ったことがなければ、トイレでしゃがむだけでもひと苦労かもしれません。また汲み取りなどもすぐには来ないので、強烈なにおいも耐え難いもの。地震のストレスから「頻尿」といって何度もトイレに行きたくなる症状が出たお子さんもいらっしゃいましたが「このトイレはイヤ!」と泣き叫んでいる子もいました。

仮設トイレは屋外にあるので真っ暗になるわけですが、男の子でも「触られた」など性被害もあったと聞きました。非常時には何が起きているかわからない、そうしたことも想像すると、乳幼児のママにはトイレは準備しておいてほしい防災グッズの筆頭です。

災害が起こる前に家族でたくさん話をしておこう

かもん:「うちはまだ1歳だから」「怖がるから教えていない」という方がいますが、実は逆。知らない子ほど、小さい子ほど大変な思いをするのが災害です。年齢に関わらず、普段から地震や台風の絵本を読み聞かせたり、「今、災害が起きたら?」と親子で想像ごっこをしてみるなど、災害を変にタブーにせず、平時から親子でたくさん話しておきましょう。

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「ちきゅうくんのくしゃみ」
作:防災ママかきつばた+乳幼児親子のための地震防災絵本プロジェクト
絵:neco

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「ママのための防災ブック そのときママがすることは?」
企画制作:(社)スマートサバイバープロジェクト

知れば家族の未来は変えられる。ママ次第で守れる命

少しずつ見えてきた避難所のリアル。災害や避難所の実情を知ることで、不安や恐怖が増したママもいるかもしれません。しかし「そのとき」はいつ誰に起こるかわからないもの。だとしたら、いつか直面するかもしれない不安や恐怖を、自分ごととして捉えておくことは決して無駄にならないはずです。心配しすぎだと言われてもいい。神経質だと言われてもいい。大切な子どもたち、そして家族の命を守りたいという気持ちに素直になって、まずは知ることから始めませんか? そのうえで具体的な備えについて進めていきましょう!

取材、文・一ノ瀬奈津

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