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【後編】発達障害の子どもが教室にいられない……別室登校から学んだこと

【後編】発達障害の子どもが教室にいられない……別室登校から学んだこと
小学5年生のときに別室登校を経験した、軽度発達障害の娘。その後、小学6年生で再び引っ越すことになりました。

新しい小学校はひと学年2クラスと規模が小さめ。娘は相変わらず新しい環境になじむのに苦労していましたが、秋ぐらいから好きなアニメの話題を友だちとできるようになり、以前ほど登校渋りはしなくなりました。

小学6年生からそのまま同じ土地で中学校に入学。隣のマンモス小学校と同じ校区になるため、娘の小学校の卒業生は中学校では少数派です。かろうじて同じ小学校で同じアニメ好きの子が1人、一緒のクラスになったので喜んでいました。しかし夏になる頃、そのお友だちが不登校気味に……。娘はどこかのグループに所属しているわけではなく、ときどき「私、ぼっちになるけど、先生は全然気づいていない」とぼやいていました。そして短い夏休みが明けた頃、「5年生のとき利用した、別室があればいいのになあ……」と言ったのです。

再び「別室を利用したい」。まずはスクールカウンセラーへ相談

娘がそこまで追い詰められていたのかと驚きましたが、中学校の別室登校について私はまったくわかりません。そこで娘に「それならスクールカウンセラーの先生に相談してみる?」と提案してみました。

今住んでいる学区のスクールカウンセラーのS先生は、中学校と近辺の小学校2校を兼任していて、いつも中学校にいるわけではありません。面談の予約で学校に電話すると、「すでに予約がかなり埋まっていて、来週のこの時間がダメなら1カ月後です」と言われ、慌てて次の週を予約しました。新型コロナウイルスの影響で、特に小学校で相談が必要とするお子さんがかなり増えているそうです。

別室を利用したい理由に驚き

面談で「どういうときに別室を利用したいの?」と尋ねられ、娘が答えたのは「教室にいるのがしんどいなと思ったときやモヤモヤしたときに、一人で静かなところにいって一旦落ち着きたい」というものでした。以前の「教室にいるのがしんどいから」だけではなく、「気持ちを落ち着かせて再び教室に戻るために」だったのです。

具体的には「給食時間など指示が一度にいろいろあったり、時間がなくて急かされたりしたとき」「学習内容でわからない問題にぶつかって、その後もずっと頭の中が真っ白になったとき」「休憩時間とかに話す相手がいなくて孤独なとき」などでした。

先生は「そういうとき、すぐに教室から立ち去りたい? それとも休憩時間まで待てる?」と優しく聞いてくれました。娘は「休憩時間まで待てます」とはっきり返事。そばで聞いていた私は、娘なりにずいぶん成長したと感じずにはいられませんでした。

ちなみに「一人で静かな空間に行って気持ちを立て直す」という方法は、発達障害の娘が幼少時から通っていた療育でよくとられていた手法です。友だちとのトラブルや大人からの指示に納得がいかず、怒りや悲しみで感情がうまくコントロールできないときに、療育の先生から「あっちのお部屋で静かに過ごす? 落ち着いたら戻っておいで」とよく声をかけられていました。娘にちゃんと「自分をコントロールする方法」として根付いていたんだなあと、改めて当時の先生たちに感謝の気持ちでいっぱいです。

さすがプロ!スクールカウンセラーから助言

カウンセラーのS先生は娘の話を聞いた後、「それならば……」と保健室と別室登校専用の部屋を教えてくれました。こちらの中学校の別室は、自習ができるように各自のスペースが区切られていて、担当の先生がいてくださるというものです。勝手に別室に行ってしまうと娘が行方不明状態になってしまうので、利用するときのルールはクラス担任の先生と後日決めることになりました。

S先生からは「モヤモヤしたときや、しんどいときに、ちょっと一人になりたいなと思うことは全然悪くないよ。でも中学3年生になる頃までには、途中で休まなくてもいいようになろうね」とアドバイスもいただきました。

例えばモヤモヤしたときは「好きなアニメのことを考える」「これから先の楽しい予定を考える」「帰ってからのおやつや、あと何日学校に来たら休み、とご褒美を考える」……これらの方法で、気持ちを入れ替えるのです。娘にとっては新鮮なことが多かったようで、面談終了後に「今日どうだった?」と聞いたら「とっても楽しかった!」と笑顔で答えてくれました。その笑顔を見て「親以外の大人に相談しても、ちゃんと答えてもらえる」と娘が実感できたことが、今回の面談の一番の収穫だったような気がしています。

別室利用には周囲の理解とルール作りが大切

そして先日、担任の先生とのルールを決めました。まず別室に行きたいときは、学年の先生の誰かにひと声かけること。娘が「休憩時間だけでも大丈夫」と言ったそうで、普段の休憩時間は「娘の教室と同じ4階にある空き教室」、時間が長めの昼休憩時間は「1階にある別室登校専用の部屋」を利用していいことになりました。

担任の先生から電話で報告を受けた私が「カウンセラーの先生は保健室でもいいとおっしゃっていたのですが……」と聞いたところ、「学年の先生たちと相談したのですが、保健室はやはり体調が悪い子が行くところなので……」。「あれ?」とは思いましたが、やはり現場の先生との調整は欠かせないということでしょう。

娘は「いざとなったら休む場所がある」とわかっただけでも安心したようで、今のところ別室の利用はしていないです。また担任の先生だけでなく学年の先生たちにも娘の気持ちと特性を知ってもらうきっかけになったので、親の私も一安心。まだまだつまずくことがあるでしょうが、周囲に相談しながら、娘と一緒に親も成長していきたいと思っています。

文・千永美 編集・しらたまよ イラスト・善哉あん

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