【浦川泰典さん第1回】「アフターコロナ」で変わる教育。大切なことは、どんな状況であれ「学習を止めない」こと
新型コロナウイルスによる緊急避難事態宣言が全国的に解除されつつあります。臨時休校が続いた影響は子どもたちの学習にどのような影響を与えるのでしょうか。また我が子に学習の遅れがみられた場合、親としてはどうサポートしたらいいのでしょうか。「個別指導塾ATOM(アトム)」代表の浦川泰典さんと、子どもの塾選びをサポートするサイト「塾シル」代表の古岡秀士さんとの対談から、アフターコロナを生きる子どもたちの学習について考えてみましょう。
臨時休校期間は約3か月。子ども自身や教育への影響は?
古岡秀士さん(以下、古岡):新型コロナウイルスの影響により、休校の期間が続いたことについて、今の子どもたちの状況をどのように感じていますか?
浦川泰典さん(以下、浦川):3月から休校になり、学習面と教育でいろんなことが変わり、子どもたちへの影響もとても大きいと感じています。卒業式を迎える子どたちにおいては、1つのけじめとなる式であり、先生や友達と十分なお別れができないままになってしまいました。また、この夏の甲子園のために青春をささげてきた高校球児たちもたくさんいます。球場に立つことすらできない悔しさは、はかり知れません。
古岡:学習面においても、臨時休校が3か月近く続いたことで大きな影響が出ていますよね。
浦川:学習面では、塾に通っている子とそうでない子の間に、差はつきそうですね。弊社学習塾「ATOM(アトム)」ではオンラインによる授業(1対1、1対2の個別指導)を導入して学習を継続していますが、学校によってはまだオンライン授業を導入していないところもたくさんあります。「我が子の学習が遅れてしまうのではないか」というママたちの不安はとても大きいと思います。
「規則的な学習」を家庭で行うのは難しい
古岡:浦川さんもお子さんがいらっしゃいますよね。お子さんの状況はいかがですか?
浦川:実は、うちの中学2年生の息子も塾に通っておらず、部活もお休みなのでゲームばかりでした。臨時休校が長引くのにゲームばかりやっているのはさすがによくないと思い、途中から僕のやっている塾に強制的に入れました。
古岡:学校では時間割表を配るなど、規則的な生活ができるように促していますが、実際には難しいですか?
浦川:学習面では、毎日勉強を続けることが大事です。しかし子どもが自主的に勉強に取り組むことは難しいでしょうね。子どもに「この時間割通りにやりなさい」といっても、なかなかその通りに動ける子はいないと思います。大人だってテレワークで集中できないという人が多いから、中学生や小学生にはもっと難しいと思います。
子どもが塾に通っていない場合は、学校の宿題とは別にドリルなどに取り組む家庭もあると思います。ただ、それも親が見てあげられる環境があってできることですよね。ママは、食事も三食作らなければいけない、洗濯物も増える、そのうえで子どもの宿題をみなければいけないとなるから、相当大変だと思います。
「つまずいたとき」に大人に聞いて解決できるかで差が大きい
古岡:子どもによって学習に差が出てきそうですね。
浦川:学習面に関しては、当然塾に行っている子のほうが進みます。これは塾に行くことで、1時間でも2時間でも集中して勉強する時間が取れること。またわからないことがあればその場で講師に聞くことができることも大きいです。子どもはわからない問題にぶつかると、そこでつまずいて、だんだんと勉強をするのが嫌になってしまう傾向があるので、つまずいたときにすぐに聞いて問題解決できるというのは、大きいと思います。
「うちの子、塾に行っていないからどうしよう。学習面で相当遅れてしまうかも」と心配するママやパパがいるかもしれません。しかし、そこまで悲観的になることはありません。たとえば、ここで3か月間の遅れが出たとしても、長い目で見たらそれほど大きな差ではないし、必ず巻き返せます。
「遅れているんだからがんばれ」はNG。親の焦りは子どものプレッシャーになる
古岡:親として「我が子の学習が遅れているかも」と思うと、つい「だからちゃんとやりなさい」「遅れているんだからがんばれ」と言いたくなります。
浦川:もし、学校が再開したときにまわりの子と差がついてしまったと感じるのであれば、「今まで休んでいたから少しペースを上げて頑張ろうか」といって、子どもを励ましてあげる。逆に、ここでママが不安になって「みんなもう先に進んでしまっているんだから、あなたもがんばりなさい!」なんてプレッシャーをかけるのはよくありません。
大切なのは本人が遅れている意識があること。学習に勢いがついて逆に追い抜くこともできると思いますよ。
コロナ騒動を踏まえ、学校や家庭で必要なことは?
古岡:アフターコロナ、ウィズコロナの教育はどうなると思いますか?
浦川:アフターコロナと聞くと「学習の遅れが気になる」「中学受験や高校受験に不利になるんじゃないか」など、教育は悪いイメージばかりが思い浮かぶかもしれません。しかし、実際にはこのコロナで教育のオンライン化、ICT化が一気に加速しています。今回のコロナを機に教育は少しずつより良い方向に進んでいくでしょう。
古岡:今回のコロナ騒動を踏まえ、今後、学校や家庭でどのような学習が必要だと考えますか?
浦川:コロナに関しては、第2波によってまた臨時休校になる可能性もあります。そのため、学校が再開されたあとも学習習慣を継続することが大切です。心配なときは、学校の先生でも塾の講師でも相談してみてください。親が一人で抱え込んでしまうと、子どもはその影響を受けて学習に対して自信を無くしてしまいます。大切なことは、どんな状況であれ学習を止めないこと。これを意識して乗り切りましょう。
取材、文・長瀬由利子 編集・北川麻耶