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空へ旅立った赤ちゃんとの最初で最後のクリスマス

数年前、初めておなかに子どもを授かりました。私の婦人科系疾患の治療と不妊治療の末に、やっとやってきた赤ちゃん。喜びはとても大きかったです。

妊娠判定をする血液検査で陽性。そしてエコーで胎嚢を確認してもらい。あとは心拍が見えてくれれば一安心! という……ここまでは順調だった赤ちゃんの成長を日々楽しみに過ごしていました。

そんなある日のこと。私は夢を見ました。

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目が覚めて、私は夢に出てきた女の子は、直感的におなかの赤ちゃんだろうと思いました。おなかに宿ってくれたことを知らせに来てくれた嬉しい知らせ……そう思いたかったけれど。女の子が無言で手を振っていた。それもただ静かに。それがどうしても私は気がかりでした。

もしかしたら「こんにちは」ではなくて「さようなら」の夢だったのではないだろうかと感じたのです。

嫌な予感でいっぱいにはなりましたが、体調には特に変化がありませんでした。どうか思い過ごしであってほしいと願いながら迎えた次の健診で、先生から厳しい話を聞かされました。

実は前回の胎嚢が確認できたというエコーは誤診であり、胎嚢ではなかったこと。その代わりに、週数平均をかなり下回るとても小さな状態の胎嚢があることがわかりました。

先生は「心拍が見えてくれれば良いけれど……覚悟をしておいてください」そう言って私に”稽留流産”についての説明をしました。

稽留流産とは……
『出血や腹痛などのいわゆる流産の徴候がないが、超音波検査で発育が停止(流産)していると診断されるもの(引用:日本産婦人科医会「8.稽留流産の診断」』

その後、数回検診をしましたが、赤ちゃんは成長しないままでした。

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私はギリギリまでは自然に任せて、1日でも長く赤ちゃんと一緒にいたいと思いました。しかしタイミングが悪く、年末に差し掛かって病院の長期休業間近。年末年始にもしも体調不良が起こってしまった時に病院として対応が難しくなるからと、とうとう流産の手術日を決めなければならなくなりました。そのリミットは奇しくも12/25。クリスマスでした。

11月頭に妊娠したけれど、そのまま育たなかった赤ちゃん。それでも、じっと私のおなかの中に1ヶ月半も留まり続けていてくれました。かなり早い段階で、赤ちゃんの方は「さようなら」をしてくれていたのに、まるで私がその覚悟ができていないことを察してくれたかのようでした。

赤ちゃんはそのまま流れることなく、手術の前日、クリスマスイブを迎えました。

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本当なら、元気に生まれてきて食べてみてほしかった。ひと目でも喜ぶ顔が見てみたかった。でもそれはもう叶わないので……。私のところに来てくれてありがとう、その感謝を精一杯に込めながら、私は自分がケーキを食べることで、まだおなかに居てくれている赤ちゃんに届くよう願いました。

翌日、流産手術は無事に終わり、赤ちゃんとはお別れとなりました。

先生は「前へ進みましょう!」と励ましてくださって、術後の回復を待って、すぐに次の赤ちゃんを迎えるための準備に入りました。そのための検査をしていくと、前の赤ちゃんがとんでもないプレゼントを残していってくれたことがわかったのです。

それは、長年悩まされていた婦人科系の病気がきれいさっぱり消え、子宮環境が今までに無い程ベストな状態に整っていたこと。先生から「最高の状態です! すぐに次の移植やりましょう!」と太鼓判を押されたほどでした。

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もちろん、妊娠したから病気が治ったなんて、とても信ぴょう性のない話です。長年の治療の成果がたまたまこのタイミングで現れただけのことだと思います。

けれど次の赤ちゃんを迎えるために、「前の赤ちゃんが病気を治してくれたんだ! これならきっと今度こそ大丈夫だ!!」……私がそう信じたかったのです。病気からの回復は、赤ちゃん……夢でみたやさしい笑顔の”お姉ちゃん”からのプレゼントだと思い、流産に怯えずにとても前向きな気持ちで次のステップへ挑むことができました。

結果は……

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あれから数年。今は、とっても元気な息子ちぃくんが大きな口を開けて、私の目の前で嬉しそうにケーキを頬張ってくれています。

ちぃくんを授かるための最高のアシストをしてくれたのは間違いなくあなたです。

ありがとう”お姉ちゃん”。

文、イラスト・Ponko

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