「かけ流し」「pH」って何のこと?泉質にこだわった温泉選びで満足度アップ
暑い夏が過ぎ、朝晩が涼しくなってくると、ポカポカと体の芯から温まる温泉が恋しくなってきますよね。ところで、みなさんは温泉地を選ぶとき何を基準にしますか? 景色や設備をメインに選ぶという人や、周辺観光地を目的としているので、温泉であれば特にこだわりがないという人もいるでしょう。筆者は添乗員として全国各地、様々な温泉に入ってきましたが、泉質が異なれば入浴したときの感触も異なり、温泉とは奥が深いものだと感じました。実は「温泉法」という法律上、「温泉」とされていても、温泉成分が100%の温泉もあれば、そうではない温泉も数多くあります。せっかく温泉に入るのであれば、泉質などこだわって自分好みの温泉を選んでみてはいかがでしょうか。
豊富な湯量の源泉100%かけ流し温泉がおすすめ
温泉の標識で「かけ流し」や「循環式」といった表示を確認してみたことはありますか? 温泉の湧出量の多い温泉地であれば、「かけ流し(完全放流式)」の温泉をよく見かけることでしょう。源泉かけ流しの温泉には贅沢な湯量や泉質別適応症を期待できる魅力があります。大型温泉施設は大きくて広い浴槽を楽しめたり、1箇所の浴場内で多様なタイプの浴槽を楽しめたりする魅力がありますが、源泉かけ流しの温泉を体感したことがない方は、せっかくなので温泉施設の規模にとらわれず、源泉かけ流しの温泉を楽しんでみてはいかがでしょうか。
「かけ流し」と「循環式・循環ろ過式」
かけ流しとは、浴槽内には常に湧き出た新しい温泉が入っていて、温泉を再度浴槽内に戻していないので、豊富な湯量が必要になります。逆に、循環ろ過式とは、浴槽内の温泉を循環ろ過し、再度浴槽内に戻している方式です。大型温泉施設だとどうしても湯量が足りず、なかなかかけ流しにするのは難しいのかもしれません。このような場合、循環ろ過式で湯量を保ち、また、多くの入浴客がいるために消毒などの衛生管理がなされていることが多いようですよ。
「加水」や「加温」と書かれているか
「加水」や「加温」は、高温の温泉に水を足して適温にしたり、湯量を足すために水を足して温めたりしていることを指す表現です。他には強すぎる温泉成分を薄めるために希釈している場合もあります。温泉法において、「加水」や「加温」をしている場合は、その理由を明記しなければならないので、表示がある場合はその理由も確認してみましょう。
アルカリ性から酸性まで泉質は様々
地中から湧き出る温泉の中に含まれる水素イオンの濃度「pH」によって、酸性・中性・アルカリ性に分けられます。pH3未満が酸性、pH3以上6未満が弱酸性、pH6以上7.5未満が中性、pH7.5以上8.5未満が弱アルカリ性、pH8.5以上がアルカリ性です。また、温泉の泉質は、温泉に含まれる成分の種類や量によって10種類に分けられています。今回はその中からおすすめの泉質を2種類ご紹介します。
肌がすべすべになる「アルカリ性単純温泉」
温泉水1㎏に含まれるガス性以外の物質量が1000㎎未満、湧き出ている温泉の温度が25度以上、pH8.5以上の温泉を「アルカリ性単純温泉」と呼ばれています。肌への刺激が少なく、柔らかい肌触りの泉質で、入浴すると肌がすべすべした感触があるので「美肌の湯」としても有名です。pH数値が高くなれば高くなるほど強アルカリ性になり、中にはpH10以上もある温泉もあります。
温泉に来た!と実感できる「酸性泉」と「硫黄泉」
「酸性泉」は名前の通り酸味のある温泉で、「硫黄泉」は、卵の腐敗臭に似た独特な臭いがするので、温泉に来たと実感できるでしょう。いずれの泉質も、日本では各地でみることができる、比較的多い泉質です。環境省自然環境局のパンフレット「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」には、特徴として殺菌力が強く、アトピー性皮膚炎への泉質別適応症が表記されています。筆者はpH1.2の強酸性で有名な秋田県の玉川温泉と新玉川温泉に入浴したことがありますが、入浴した瞬間に肌がピリピリとする感触があり、全国各地様々な温泉に入ってきた中で、これほどまでに刺激的に感じた温泉はありませんでした。何日も滞在して温泉に入っているという湯治(温泉に浴して病気を治療すること)客も多いようです。機会があればぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
「酸性泉」と「硫黄泉」には注意が必要
「酸性泉」と「硫黄泉」は刺激が強いため、皮膚または粘膜が過敏な人や、皮膚乾燥症の高齢者などは入浴が禁止されています。泉質によって皮膚にアレルギー反応が現れる場合もあるので過敏な人は注意しましょう。
妊娠中も温泉に入って良い
妊娠中の温泉入浴は可能かどうか、妊婦さんは気になるところですよね。温泉入浴の一般的禁忌症の一つとして、「妊娠中(特に初期と末期)」が挙げられていましたが、2014年に「妊娠中」が項目から削除されています。つまり妊娠中も温泉に入って良いということです。ただし切迫流早産などの危険性があると診断を受けている場合は、かかりつけ医に相談して下さい。また、温泉成分によって浴場内が想像以上に滑りやすくなっていることがあります。全国各地の温泉に日常的に入っていた筆者でさえ、思わず足元を滑らせたことがあるほど。妊娠後期のお腹は大きくなり、足元が見えにくくなっているので特に注意が必要です。安全に入浴することを心がけるようにしましょう。
みなさんも好みの温泉で疲れを癒やしてみてはいかがでしょうか。自分で選び抜いた泉質であれば、旅の満足度もアップするかもしれませんね。
文・ゆかりんご 編集・物江窓香