セリフのないわが子にモンスター・ペアレンツ化!? 親の不満続出の「劇」に先生の対応とは?
お子さんの小学校では、学習発表会がありますか? 歌や楽器の演奏、劇や朗読などの発表をするお子さんも多いのではないかと思います。
筆者は今海外に住んでいて、子どもの通っている小学校では「学習発表会」という名前の行事はないのですが、毎年子どもたちが劇の発表をします。
練習は1ヶ月以上、入念にリハーサルをします。お裁縫や絵を描くのが得意な親は、ボランティアで衣装などの準備をします。学校ではほかにも子どもたちが発表を行う場はいろいろあるのですが、劇が一番力の入った行事です。
毎年の劇の発表、目立つ子はいつも同じ
1年生のうちは、子ども全員が一言ずつ、セリフを順番に言っていくような劇だったのですが、3年生くらいからは、もっと物語が展開する長い劇をやるようになってきました。主人公と準主人公がいて、その他の名前もないような役がたくさんあって、主人公役は何人かが交代でやるものの、長いセリフをたくさん言って、出番も多く、その他の役だとセリフはなし。年々セリフや歌が上手な子だけが目立つようになってきました。
「うちの子、今回は自分で主人公役がやりたいって手を上げてオーディション受けたのよ。セリフ多くて家でもがんばって練習してよくやっていたわ!」
というママもいれば、
「うちの子はほただ舞台を端から端まで行進しているだけの役だから、練習の必要はないみたい」
というママもいるので、ママ友同士でもイマイチ話は盛り上がれませんでした。
セリフのないわが子にモンスター・ペアレンツ化?
4年生の時、息子がやった劇は「オズの魔法使い」でした。主人公のドロシー、ライオンやブリキ、カカシの役の子はいつも舞台の真ん中でライトを浴びてセリフがたくさんあるのに、その他のほとんどの子はセリフのない役。主役級の役をやる子は去年の劇でも目立っていた子ばかり。なぜか女の子ばかりなのですよね。
ママ友の1人が
「うちの息子今年もセリフ1つももらえなかった! 本人はやりたがっているのに、先生に苦情のメールしちゃった」
と言っていました。ちょっとモンスター・ペアレンツ気味の行動だったのかもしれませんが、気持ちはわかるような気がしました。
筆者の息子は、エメラルド・シティの「門番その1」だったので、主役級以外の役の中では比較的セリフがあり、やっぱり観ている親としてはうれしいものでした。でもそんな気持ちを表立っていうこともはばかれるような雰囲気で、ちょっと重苦しかったです。
多くの親が言っていたのは
「いつも同じ子達だけが目立っている」
という不満でした。学校の劇といっても親が見たいのはやはり自分の子どもが活躍する舞台なのですよね。
先生はなぜ「地味」な劇を選んだ?
翌年、息子が5年生の時の劇は、「ハーメルンの笛吹き」でした。「オズ」よりかなり地味な話で盛り上がりに欠けるのでは、と筆者は作品選びが良くないように思いました。
でも、子どもから配役の話を聞いて、あっと思いました。先生は全員に見せ場のある舞台にするため、主役が活躍しながら物語が動いていくストーリーを避けたのではないか、と気がついたからです。
笛吹き男は5人編成で3交代。ネズミ役15人、町の人の役20人、子どもの役20人。そんな具合にどの役も大勢いて、セリフが子ども全員に与えられていました。
セリフを言うのが得意でない子も最低1つ以上はセリフをもらっていて、いつも主役をやっているような子は、2役やるなど出番が多いのですが、特別目立っている感じではありませんでした。劇で歌う歌の練習に力を入れていたようで、子どもたち全員の合唱に、観ていた親たちはみんな感激していました。
みんなが活躍できる舞台に感動
どの子の親に聞いても、
「今年の劇はよかった!」
とほめていて、今までやった劇の中では一番の評判がよかったように感じました。みんなで作り上げる劇に仕上がっていました。
本当に子どもたちの歌声はすばらしかったので、今も筆者はよく覚えています。子どもたちが輝く舞台は親にとっても大切な思い出になりますね。
文・野口由美子 編集・しのむ