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母乳育児で辛い乳腺炎!前兆はある?やめておく方がいい自己流ケアは?

乳腺炎

おっぱいが詰まって、痛みがしこりや生じ、ときには発熱や寒気まで引き起こす「乳腺炎」。大きな悩みとなっている授乳中のママは多いことでしょう。症状が軽いうちに対処できればいいのですが、乳腺炎が起こる前触れはあるのでしょうか?

助産院ばぶばぶのHISAKOさんにお話を伺いました。

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乳腺炎には前兆がある!?助産院に相談するべきタイミングは?

――乳腺炎で助産院を訪れるタイミングは、乳腺炎になりそうなときがいいのでしょうか? それとも乳腺炎になってからの方がいいのでしょうか?

初めての方は乳腺炎になってからくる人が多いです。その後はおっぱいのメンテナンスとなり月1回程度の来院になります。

乳腺炎になってしまってからよりも、なりそうな段階で助産院に来ていただく方が良いです。というのも、乳腺炎はなってからの対処よりも予防の方が処置は簡単になるからです。

――乳腺炎の前兆のようなものはありますか?

通常の授乳の後は、おっぱいがスッキリします。乳腺炎の前触れとしては、たとえばモゾモゾしたまま、硬いまま、なんとなく飲み残した感じがありスッキリしない、といった“いつもと違う”という感覚です。軽い痛みや、乳輪に傷ができる「乳口炎」が前兆となることもあります。またいつもなら赤ちゃんが飲んでくれるのにすぐにおっぱいを外す、暴れて真面目に飲んでくれない、といったようなことも目安になります。

乳腺炎を繰り返した人は、自分でもわかるようになってきます。家で様子を見てもいい状態、助産院に早く行くほうがいい状態を的確に判断できるようになるんですね。

――赤ちゃんはおっぱいをまずいと感じるのでしょうか?

そもそも「おいしい/まずい」は、大人の視点での考え方ではあります。誰も赤ちゃんに戻っておっぱいを飲めないので、わかりませんよね。飲み始めと終わりでは母乳の脂肪分の含有量が変わってくるのですが、赤ちゃんがそれを認識できるとも限りません。

ただ乳腺が細菌に感染して膿が出る「急性化膿性乳腺炎」の場合は明らかに母乳の味がしょっぱく、大人が味見しても違うとわかるので、赤ちゃんが戸惑うおっぱいだと思います。

乳腺炎になりやすい月齢はある?

――赤ちゃんの月齢の面で見ると、乳腺炎になりやすい時期はあるのでしょうか?

赤ちゃんが母乳を飲まず余っている、いわゆる需要と供給のバランスを取りにくい時期が、そのまま乳腺炎になりやすい時期にもなります。

まず新生児のころは、慣れない赤ちゃんが飲みながら眠ってしまうことがあり、乳腺炎になりやすい時期です。その次は満腹中枢が出来上がる生後3、4ヶ月ごろ。遊び飲みが始まる時期で、しっかり飲んでくれないこともあります。離乳食が始まってからは、食べるのが好きな子だと急に授乳量が減ります。おっぱいは別腹という子もいますけどね。

――月齢以外に、乳腺炎になりやすい原因はありますか?

気圧は大きく関係するのではと思います。台風や雨の日は乳腺炎で来院される方がすごく増えますね。飛行機に乗っていて調子が悪くなったり、雨の日は古傷が痛んだりといったことと同じように、気圧によっておっぱいの根元である「基底部」に過剰に血液がたまりすぎてしまうようです。

乳首をかまれる!防ぐ方法はあるの?

――赤ちゃんに乳首を噛まれるのはとても痛いですよね。乳首を噛まれるのを防ぐ方法はあるのでしょうか?

防ぐ方法、あります! 授乳のベテランになると、噛まれる瞬間がわかるようになります。赤ちゃんは授乳の時、歯茎よりも舌を前に出した状態で、舌を丸めて乳頭を載せます。もしその状態で噛もうとすると、自分の舌も噛んでしまうことになってしまいますよね。だから噛む瞬間には、伸びていた舌が引っ込みます。おっぱいを離すのはその瞬間です。

――なぜ赤ちゃんは乳首を噛むのが好きなのでしょう?

赤ちゃんは大好きなママに自分の方を向いてほしいのだと思います。赤ちゃんは飲んでいる最中にママの顔を見上げて、噛んで、ニヤッと笑いますね。「何をしたら大好きなママがこっちを向いてくれるかな? あ! おっぱいを噛むとママが『イタイ!』と過剰反応してくれる!」という、一種のお試し行動なんです。しかしママが過剰反応すると赤ちゃんの思う壺なので、なんとか痛みに耐えて、冷静に無表情で、「痛いからやめてね」と伝えるべきことは伝えてみてください。赤ちゃんは「思っていたのと全然違う、面白くない反応」と感じて、だんだん噛まなくなります。

――噛まれた乳首のケアはどうすればいいでしょうか?

乳首を噛まれると傷ができると、かさぶたが作られます。かさぶたは乾燥した状態なので、さらに赤ちゃんが吸うとかさぶたが割れてしまいます。そうならないように、かさぶたを柔らかく保湿しておくのがポイントです。おっぱい専用のクリームや馬油など赤ちゃんの口に入っても大丈夫なタイプの保湿剤を乳輪、乳頭に授乳のたびにつけ、かぶれたり痒くなったりしなければラップで保護してください。これを根気よく続けてくださいね。

自己流のおっぱいのケアでやめておく方がいいことは?

――助産師としてやめてほしい自己流ケアはありますか?

乳腺炎でおっぱいが詰まったとき、針で刺したり、爪で傷をつける方がいらっしゃるんですね。これらの方法は母乳を出せて一旦はおっぱいが柔らかくなるのですが、乳頭の先にかさぶたができます。かさぶたのせいで乳腺がまた詰まり、2,3日も経てば乳腺炎が再発してしまうので、やめてほしいですね。

あとはしこりになっているところを揉んだり押したりしながらの授乳もやめておくほうがいいです。捻挫した足を揉みほぐして症状が悪化する状態を想像してもらえればわかりやすいでしょうか。広い範囲を手のひらで圧迫しながら飲ませるのはいいのですが、しこりをグリグリと揉むのはやめましょう。

――インターネットで得た解消法を試す人もいます。これは間違った情報、というものはありますか?

乳腺炎の治療方法として「旦那さんに吸ってもらう」という方法をネットで見たことがあります。大人だとストローで吸うような力の加わり方になるのでおっぱいに負担がかかり、症状が悪化する原因にもなってしまいます。

また「温めた方がいい」、「冷やす方がいい」、などネットに解消方法は書いてありますが、一見同じような症状に見えても別の症状があればケアの仕方は変わります。合っていないケアのせいで症状が悪化することも考えられます。

正しい処置は症状によって異なるので、いずれの方法も助産師の判断なしで行うのはやめるほうがいいですね。

――おっぱいを問題なく出すには食事制限は必要なのでしょうか?

食事制限の必要がない場合もあります。助産院ばぶばぶでは、乳腺炎を起こしている人には粗食を進めますが、メンテナンス中で調子よくおっぱいが進んでいる人には食事制限はしません。

助産院ばぶばぶにも、「乳腺炎になっていろいろなことを試したけれど、改善せずこれ以上できることが思いつかない」と涙ながらに来られるママさんがいます。乳腺炎の原因はストレスや疲労、気圧の変化、授乳の体勢や方法というように食事以外にもあるのですが、「すべての原因は食事」と過剰に意識してしまっている人もすごく多いんですね。そういう方々にはまず食事制限を全部解除してもらい、乳腺炎になる確率が上がるか下がるかを一緒に見ていくところからスタートしています。

昔は食事制限が提唱されていましたが、最新の研究では食事の内容はあまり母乳に関係しないとも言われています。個人的にも、乳腺炎以外の人に食事制限をしても乳腺炎のリスクは下がらないと実感しているので、食事よりも注意すべきことを最優先にして指導しています。

 

HISAKOさん、ありがとうございました!

取材・編集部 文・しらたまよ 編集・しのむ イラスト・加藤みちか

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