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厚生労働省が2018年9月「特定妊婦」を対象に「妊婦判定費用を全額補助」の方針を固める。未受診による母子へのリスクとは?

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2018年9月、厚生労働省はほとんど医療機関を受診しなかったり、定期健診を受けない「未受診妊婦」を対象に、医療機関での妊娠判定費用を全額補助する方針を固めました。今回の厚生労働省の方針は、若年層や経済的に困窮しており、妊娠の可能性があっても医療機関を受診できない・しない女性たちを少しでも減らしたいという思いが背景にあるようです。2016年度に行われた調査によると、「特定妊婦」と呼ばれる、特に支援が必要な妊婦は約8,500人にのぼりました。さらには各地のセンターには妊娠・避妊に関する相談が合計9,525件もあり、早急に支援対策をおこなわなければならないと決断したのでしょう。

「未受診妊婦」を対象に妊娠判定費用を全額負担

支援を受ける女性自身が同意した場合は、保健師らが医療機関へ同行し医療機関での「妊娠判定費用」も全額補助する考えです。未受診のままで出産をしてしまうと、新生児が適切なケアを受けることができず亡くなってしまう「産み落とし」と呼ばれるケースにも繋がりかねません。母体にも影響が出ないとはいい切れないため、厚生労働省は少しでも早い段階で支援につなげられるように、妊娠初期の費用負担をなくし受診のハードルを低くする狙いがあるようです。

未受診妊婦が増えてしまう背景

日本産婦人科医会が2009~2012年に実施した「大阪府未受診妊娠調査報告」の「未受診になった理由」をみると、1位は「経済的な問題」が31%と高い数値を示しています。2位が「知識の欠如(16%)」で、3位は「家庭の事情」と「妊娠に対する認識の甘さ」がそれぞれ13%として並びました。中には「社会的孤立」などもあり、未受診の妊婦が増えてしまう背景には課題や問題が山積みとなっているようです。

検診費用が高すぎるというママたちの声

『毎回健診のたび6,000円以上取られています。補助券使ってもこんなにかかるとは予想外すぎる』

『無料だったり1,000円だったり5,000円だったりいろいろ』

ママスタBBSにも妊婦の定期健診にかかる費用が高額であることについて意見が寄せられていました。検診が無料や数百円で済むケースもあるようですが、全ての産婦人科が一律の金額設定ではないという声があがっています。

14枚からなる「妊婦健康診査助成券」の交付

『補助券使ってもお金かかるじゃんって思ってた』

2012年4月より国が示す標準検査項目の全てが公費負担の対象となりました。対象となる検査については、配布される14枚の「妊婦健康診査助成券」を会計時に使用することで、検査費用の負担を軽減します。しかし、産科医療の大部分では「自由診療」と呼ばれる「保険外診療」の割合が高いことから、検査を受ける病院や、検査の内容によって支払う金額に差が出てくることもあります。せっかくの「妊婦健康診査助成券」が交付されていても、それ以上の自己負担があることから経済的に困窮している女性たちは検診への足が遠のく結果にも繋がっているようです。全ての妊婦が安心して安全に出産できるようにと公費負担額を大幅に拡充したものの、自己負担面の大きさについての解決にまではまだ至っていないようです。

未受診のまま出産することのリスク

「未受診妊婦が増えてしまう背景」の項目でご紹介した「未受診になった理由」2位の「知識の欠如(16%)」ですが、この数字についてみなさんはどう思われますか? 未受診で妊娠を継続し出産することの危険性をきちんと知っておかなければ安全なお産ができない可能性があるのです。

妊婦健診を受ける理由

妊娠は病気ではないので妊婦健診を受けなくてもいいと軽く考えてしまうことは大変危険です。妊婦健診は赤ちゃんやママの健康状態を定期的に確認するものです。定期的に健診を受けることで何か異常があった際にいち早く対応することができます。また医師や助産師さんなどに、妊娠・出産・育児に関する疑問や不安、悩みなどを相談し、安心して妊娠期間をすごしてもらう役割も持っています。病気をみつけるだけが妊婦健診ではなく、妊婦さんを孤独にしないための強い味方にもなってくれるのです。

妊婦健診を受けないことで起こるリスク

一度も病気や怪我をしたことがない、健康に自信のある方でも妊娠中に重い病気にかかってしまうことがあります。知らない間に病気が進行してしまい治療が困難になる場合もあるのです。お腹の中にいる赤ちゃんも同じで、検査することでしか判明しない病気や疾患もあり、早期に手を打つことで改善するケースも少なくありません。未受診のまま出産となり病院に運ばれてしまうと、赤ちゃんの育ち具合や、母体・胎児に対し、注意すべき病気などがないかを確認することがすぐにできません。通常なら数か月かけて調べることを、その場でいきなり確認しなければならないため、母子ともに危険な状態でのお産になる確立がアップします。そうなると受け入れてくれる病院も限られてきますので、万が一があったときに手遅れになってしまうかもしれないのです。

1980年と変わらない周産期死亡率

未受診で飛び込み出産をするリスクとしてもう1つ、必ず知っていて欲しいのは死亡率の高さです。日本産婦人科医会の「大阪府未受診妊娠調査報告」では、出産間近前後の時期を指す「周産期」に未受診で飛び込み出産をおこなった場合の妊婦または子どもの死亡率は864人中17件と1980年当時の大阪府周産期死亡率に相当します。無事出産できたとしてもNICU(※)への入院率が高いことから、未受診での飛び込み出産は産まれてきた赤ちゃんにとっても、極めてリスクが高いといえます。

参考:公益社団法人日本産婦人科医会|第68回 記者懇談会「大阪府未受診妊娠調査報告~4年間の成果と今後の課題~」12ページ「周産期死亡率」

※「NICU」とは、「NEONATAL Intensive Care UNIT(ネオネイタル インテンシブ ケア ユニット)」の頭文字からなる略語で「新生児特定集中治療室」を意味しています。予定より早く生まれてしまったり、小さく生まれてしまった赤ちゃんなどには、さまざまな原因により出産直後から集中して治療が必要となることもあります。そのようなケアが必要な赤ちゃんを治療する場所が「NICU」です。

未受診妊婦と産後の児童虐待死の関係性

「大阪府未受診妊娠調査報告」の中には、未受診妊婦と産後の児童虐待死との関係性についても言及されています。未受診妊婦になってしまう理由と、児童虐待を起こしてしまう理由、それぞれの背景に「経済的困窮」や「知識の欠如」などの類似性があると発見されたのです。すべての未受診妊婦が児童虐待を起こしてしまうわけではありませんが、少なからず影響し合う部分があるようです。

全ての妊婦が安心して出産を行うために早期実施が望まれる

厚生労働省が今回実施を決定した政策は、2019年度の予算概算要求に盛り込まれました。早ければ2020年度には実施される見通しとなっています。一刻も早く実施されることで、未受診での飛び込み出産や、産まれてくる子どもたちの命が危険にさらされることが一件でも減ることを願うばかりです。

文・櫻宮ヨウ 編集・木村亜希

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参考トピ (by ママスタジアム
妊婦健診の費用高すぎる