はだしでいる子は”運動神経”が良くなるって理由とは?
「子どもの運動神経を伸ばしたいと思ったら、皮膚をさすったり、足裏をマッサージするだけでも効果が期待できます」と話すのは、健康教育コンサルタントの内藤隆さん。なぜ皮膚や足裏マッサージをすると、子どもの運動神経が良くなるのでしょうか。詳しくお話を伺いました。
まっすぐ立っていられない子どもが増えている
――子どもの運動神経をよくするために、親ができることはありますか?
子どもは皮膚を触ってあげるだけで感覚が育ち、その刺激は心身にさまざまな影響を与えます。たとえば、私たち大人はあまり感じないかもしれませんが、歩いているときも足の裏が小さな変化を感じ取って脳に伝えています。当たり前のように立って歩いていますが、それだって触覚がないと立てません。
今、立っていられなくて後ろに転んでしまったり、壁に寄りかかってしまう子どもたちが多くいます。原因のひとつとしては、家の中でも常に靴下をはいていたり、外でも靴を履いているため、はだしで歩くことが少なく、足裏への刺激が少なくなっていることです。
皮膚を触ることで体のセンサー機能が活性化します。その結果、運動神経に伝わるまでの時間が短くなり、体がすぐに反応できるようになるのです。足の裏を刺激することで、跳んだり跳ねたり走ったりという運動神経の向上も期待できるのです。
――家の中では靴下は脱いだほうがいいですか?
基本的には脱いでおいた方がいいです。もちろん外に行くときは足を怪我したら危ないので、靴を履いた方がいいですが、家の中ははだしで過ごしたほうが足への刺激は確実に増えます。
はだしを推奨する園や学校。そのワケは?
――学校によっては、はだしで過ごすことを推奨しているところもありますが、それは足の裏の触覚を育てるという意味があったんですね。
そうですね。
はだしで過ごすことで足指を使いやすくすることに加え、足の裏からいろんな情報を受け取ることによって、その子の運動能力は非常に伸びます。靴下をはいたり、靴に頼って生きていくと、固有覚といって、筋肉が過剰に緊張して自分の位置を知ろうとするようになります。
――それはどういうことですか?
たとえば靴を履く時間が長いと、足の裏の感覚ではなくふくらはぎが固まることでバランスを取ろうとしてしまいます。逆にはだしで過ごすことによって、いろんな触覚、感覚を受け取っておくと、体がすごく動くようになります。
皮膚をさすることで認知能力や社会性が育つ
――大人でも足や腕をさすることはいいのでしょうか。
大人でも効果はありますよ。自分で上から下へと20回くらい腕をさすって手をあげてみてください。さする前とさすったあとでは、あとのほうが手が軽く感じますよ。足も上から下にさすってあげるといいですね。
それが皮膚の触覚にすごく大事です。できれば家の床、芝生やコンクリートの上、砂浜などをはだしであるいて、いろんな感覚を受け取っておくことが非常に大事です。
リラックス効果もあり、触覚の刺激が体の発育や、物事を考えたり判断したりする認知能力の発達にもプラスに働きます。極端な話、小さい頃にあまりスキンシップを受けないで育つと社会的に孤立しやすかったり、スキンシップの多い子どもは社会性が高いという実験結果もあります。
1回につき30秒から1分でOK。忙しいママのスキンシップ法
――働くママだと、なかなかスキンシップする時間が取れないと思います。1回につきどれくらいさすってあげたらいいですか?
1回に10分やるよりは、30秒、1分を1日10回にわけてやったほうがいいですね。触覚もずっとやっていると、感覚自体が慣れてしまい、あまりいい刺激にはなりません。それよりも手を触ってあげたり、頭をなでてあげたり、頬を触ったり、ギュッと抱きしめたり、1日の中でいろんなスキンシップを取るのがいいと思います。単なる愛情表現だけではなく、子どもの成長に役立つということで大事です。
忙しいときでも1回につき30秒やってあげるだけで、子どもは親の愛情を感じるので、手をとめてこまめにやってあげてください。
取材、文・長瀬由利子 編集・山内ウェンディ イラスト・天城ヨリ子