文部科学省がメルカリ・楽天・ヤフオクへの宿題出品にストップ!「宿題代行」の背景にある問題点とは
夏休みや冬休みなど、長期に学校がお休みになると出される宿題、どのように対処していますか? 夏休みともなると日数が多いこともあり、かなりの量の宿題が出されることも珍しくはないようです。そしてその宿題をめぐった問題点が浮き彫りになっています。それが「宿題代行」です。
宿題代行とは
宿題代行とはその文字のとおり、子どもたちが学校から出された宿題(家庭学習)を第三者となる他人が代わりにおこなうことを指しています。特に多いのは読書感想文や作文の代行で、小中学生の場合は各科目の自由研究なども人気を集めています。中には、国語や算数などのドリルや絵日記、漢字の書き取りなどを依頼する人も多く、さまざまな宿題に対応できるよう出品者も多様化してきています。宿題代行に関する動きは、フリマなどの出品だけにはとどまらず、ひとつのサービスとして起業する人まで出てきているほどなのです。
「宿題代行」の根絶を目指す動きが始まる
文部科学省は8月に大手3社のフリマサイトを運営する「メルカリ」「楽天」「ヤフオク」に対し、子どもたちの宿題に関する出品を禁止できないかという打診をおこなっていました。その結果、3社は読書感想文の売買などをはじめとする「宿題代行」行為の根絶に向けて文部科学省からの通達に合意しました。
文部科学省とメルカリで交わされた合意内容
子どもたちの健全な育成環境の整備を目的にしたいと話している「メルカリ」と、通達を出した「文部科学省」両者で交わされた合意内容についてみてみましょう。
1. メルカリは、フリマアプリ「メルカリ」内において、子どもたちに代わって宿題を行う役務を提供することや、読書感想文や自由研究といった宿題の完成品を出品することを禁止いたします。宿題代行行為と思われる出品があった場合には、商品の削除等の対応を行います。
2. メルカリは、文部科学省と連携し、子どもたちが自ら宿題に取り組む環境の整備を推進してまいります。
これまでもメルカリは、子どもたちに代わって夏休みなどの宿題をおこなう役務を提供する行為は禁止してきました。原則、手元にない商品の出品や、なんらかの行為を代行する出品はメルカリではルール違反となっています。しかし、読書感想文や自由研究などの完成品を出品することで、ルールの網をかいくぐって多くの出品が目立つようになり始めました。そこでメルカリは完成品に対しては、氏名や個人情報が記載されている物は削除対応をおこなってきました。ですがそれ以外の出品商品に対しては、自由を尊重するという観点のもと、禁止としてはみなさなかったのです。今回の文部科学省との合意を通じ、完成品の出品も禁止とし、宿題代行行為の根絶に向けて取締りを一層強化していくことになりました。今後も各府省庁をはじめとした外部機構との連携を図りながら、子どもたちも安全に、安心して利用できる場所を提供していきたいと語っています。
宿題代行が横行する背景
宿題とは、本来子ども自身がやるものではないでしょうか。ではなぜ宿題代行行為はここまでおおごとになってしまったのでしょう。その背景にはさまざまな問題が隠されているのかもしれません。
忙しい子どもは時間がない
夏休みのような長期間学校が休みでも、今の子どもたちは塾や部活動、習い事など多忙な毎日を送っています。そうなると宿題をする時間を取るのが難しいという問題点が浮かび上がってきます。本来、学校から科せられる宿題とは学校で学んだことを定着させるためのものですので、毎日学校に行っているのと同じように、少しずつやっていけばクリアできそうなものですが、長期間のお休みだからこその外部の活動が増えることもあり、なかなか進まないというケースも多いようです。学年によっては中学受験を控えている場合もあり、そうなるとますます大量の宿題に時間を割くことができないという声が出てくるのは仕方のないことなのかもしれませんん。
簡単にできない宿題が多い
子どもによって得手不得手があるように、宿題も簡単にできるものもあればそうでないものもあります。例えば読書感想文や作文などの場合、本を読むことが習慣化していない子どもは本を読むだけでも一苦労です。さらには読書感想文の書き方を教えてもらっていないのに、定められた文字数をクリアした感想文を書くのは至難の業です。他にも絵を描くことが苦手、工作を作るのが苦手、そのような子どもたちの困ったをスルーした宿題の出し方そのものが、子どもたちを苦しめる結果になってしまっているのかもしれません。絵日記ひとつにしても、「夏休みの思い出を描きましょう」とだけいわれても困ってしまう子どもが出てくる可能性もあります。フォローもせず出しっぱなしな宿題の出し方にも問題が隠されているのではないでしょうか。
学校以外からも出される宿題に追われるケースも
『受験や進学校行ってたら塾の宿題もすごいし、読書感想文なんかで時間使うんだったら他の勉強したほうがいい』
学校からのたくさんの宿題に加え、塾に通う子どもは塾からも宿題がでることも珍しくありません。そうなってしまうとキャパシティオーバーになる子どもが出てくることもあるでしょう。そうなった場合、どちらがより大切かとはかりにかけるしかなくなり、学校の宿題が後回しにされ、そこから「宿題代行」へと繋がるのかもしれません。
宿題代行にまつわるママたちの意見
宿題代行に関するママたちの意見をママスタコミュニティからみてみましょう。
『夏休みの宿題くらいやれや! 何日あるんだよ』
『ずるいことを学んだ子に何の将来性があるのやら』
『宿題ができないならできないで怒られたらいいと思う。恥もかけばいいと思う。それも勉強』
全体的にお金を出して宿題を済ませる行為に関し、批判の声の方が圧倒的でした。ですが批判的な意見の中にも、宿題代行であったり、親が子どもの代わりに宿題をやる・手伝うのも仕方ないという声も多くありました。
ママたちが考える宿題の問題点
『お金で買おうとは思わないけど、特に小学生の宿題は親に負担がかかる』
『そもそも夏休みの宿題が多すぎるのが問題とおもう。小学生でそんなに書けないだろ~って感じ』
『宿題が多すぎるんだよね。もっと少ない方が子どものモチベーションも上がるし、ちゃんと勉強する』
ママたちの声の中で多かったのが宿題の量が多すぎるという問題点です。長期間の休みのときに出される宿題の多さにはみんな困っているのでしょう。筆者の子どもも、英単語と漢字の書き取りに数日かかっていました。積極的に取り組んでも数日かかる量というのはどうなのでしょう?
『外国の人が日本人は”休み”なのに宿題出してて意味わかんないっていってたな。それ見てあー確かにそうかもって思った。少しも休めない夏休みなんていらないよね』
『毎日観察する系のとか、真面目にやってたら旅行とか行けないしやめて欲しい』
長いお休みにしかできない体験や経験も、宿題を優先してしまうとできなくなる可能性もでてきます。確かに休みなのに少しも休めない量の宿題がでるのは、いろいろな意味で子どもの健全な生活や成長を奪ってしまいかねないのではないでしょうか。
少しのことで変わるかもしれない宿題の現状
『読書が好きな子にだけ書いてもらったら良いと思う。無理やり読んでもなんの感想も生まれない』
『書き方さえ分かれば1~2時間で書ける。大変なのは共感できる本選び。作文は2のつぎ』
『どこかの小学校は、夏休み中に本選びや要点まとめが宿題で、実際の感想文は授業で書くと聞いて、素晴らしいと思ったわ』
ただノルマをクリアするだけの宿題ではなく、その宿題をやることで生まれる課程や経験を大切にするという考え方は素晴らしいことではないでしょうか。結果ばかりをついつい求めがちになる中、学校こそ「課程」を大事にする考えを教えてほしいものです。いたずらに時間だけを消費してしまう宿題の内容や量については、少し見方を変えるだけで何か変わるかもしれません。
宿題代行、あなたはどう思いますか?
先にもお話ししたように、学校から出される宿題は誰かに頼ることなく子ども自身が取り組み、成し遂げるのがベストです。そう考えると宿題代行という問題は撲滅すべきものなのかもしれません。ですが子どもたちへの負担などを考えると、一概にも宿題代行だけが悪いとはいい切れないのではないでしょうか。多くの問題点があるなか動き出した宿題代行行為撲滅の流れ。みなさんはどう思いますか?
文・櫻宮ヨウ 編集・山内ウェンディ