IKKO:第2回 言葉のナイフに傷ついた子ども時代、母の美容室が居場所だった
第2回目となる今回は、IKKOさんの子ども時代についてのお話を伺っていきます。テレビのバラエティ番組では明るくチャーミングなキャラクターが人気のIKKOさんですが、このお話をしてくださるときは、少し言葉に詰まる場面もありました。
IKKOさんの子ども時代について聞かせてください。男の子としての自分に違和感を感じたのはいつ頃ですか?
よく「違和感を感じた時は?」という質問をされるんですけど、私は小さな頃から自分を女の子と感じて生きてきているので、自分自身に違和感を感じることはなかったの。それよりも、幼少期の頃の私にとって心に残っているのは、周りのお友達からの言葉のナイフなんです。
子どもというのは、何もわからないから、誰かが言ったことを真似して「おかま」とか「気持ち悪い」ということを簡単に言うでしょ?
そういうことをたくさん経験して、私はある時から自分自身を貝のように閉ざしてしまったんです。
その時の私は、人と話をしなければ、接することをしなければ、言葉のナイフで傷つけられることはないと思ってしまったのね。
今だったら、貝のようになって生きていくということが、人生にどんな影響を与えるかわ分かるけれど、小学校低学年の私にはわからなかったんです。
貝のように閉ざしたことで、どのような影響があったとお考えですか?
貝のように心を閉ざしたことで生じた問題というのは、まず人と接しないことで人格形成がうまくなされなくなりましたね。だって、どんどん自分の世界に浸っていくんだから。
人と距離をとって、自分の世界に閉じこもるというのは、人間形成に大きな悪影響を与えるでしょ。それは、本当にとても私の人生にとってマイナスでしたね。でも、その時はそれが分からなかった。その当時は、そうすることでしか日々を過ごしていく方法を見つけられなかったんですね。
それが、小学校3年生から19歳くらいまで続きました。
その悩みを、ご両親に相談したことはありましたか?
「なんで私は赤いランドセルを持ってはいけないんだろう」「どうして、私はスカートをはいてはいけないんだろう」と、ずっと思っていましたけど、そんなことを親にはとても言えませんでしたね
心を閉ざし、たくさんの我慢を抱えた小学生時代に、お母さまの美容室でたくさんの時間を過ごされたとお聞きしました。
そう、お友達と遊ぶこともなかったので、学校が終わった後は、母の美容室の隅っこに座って、母の仕事をずっと見ているのが好きだったんです。
お客さん達が、母の手によってどんどんキレイになっていくのを見ているのがとても楽しかった。母が魔法を使っているような感覚になって、どれだけ見ていても飽きなかったわ。
そのうち見よう見真似で、いとこの女の子の髪を結わえさせてもらったりもしました。私の美容家としての原点は、母の美容室にあるんです。
その当時から、美容師になりたいと思っていましたか?
いいえ、私、本当は客室乗務員になりたかったんです。
当時、「アテンションプリーズ」というドラマが流行っていて、その中に出てくるJALの制服がどうしても着たくて、夢中で見ていたの!そして2人の姉に「いつか3人で客室乗務員になろうね」って言ったら、「あなた男の子だから無理よ」って言われて、ものすごくショックを受けたのね・・。
でも私の美学の始まりは、あのJALの制服から始まったの。なんであんなにきれいなシルエットが出せるんだろう、色のコントラストは…あの帽子の形はどうやったら作れるんだろうって、ずっとそういうことを考えていましたね。誰も教えてくれなかったけど、その疑問を持ち続けて大人になって、数年前に私がプロデュースしたショップ「PINK by IKKO」のスタッフ用として、あのときの制服をモチーフに制帽と制服を作らせてもらいました(許可を頂き)。
小さい頃に描いた夢を、叶えられたんですね!
そうなんです!小学生の時に見て憧れたJALの制服を、JALさんに許可をもらって自分のブランドで作らせてもらったのは、すごく嬉しかったですね。私、こう思うんですよ。「思いは絶対実現する。」って。
何年かかっても、何十年かかっても、思い続ければ絶対に実現するんです。
すぐに叶うなんてことはほとんどなかったけど、私、小さい頃から思っていたことは、ある程度叶えてきた気がしています。
小さい頃から持っていた夢で一番最初に叶えたことはなんですか?
それは、美容師になったこと。客室乗務員という夢が破れた時に、美容師になろうと決めて、20代でそれを実現しました。
子どもの頃IKKOさんが経験したことから、子育て中のママへメッセージをいただけますか?
私は、子どもの頃勉強が好きじゃなかったんです。
例えば「1+1=2」でもいいですが、そうしたことを覚えることに何の意味があるのか理解できなかったし、勉強することの意味について他の大人から説明してもらったこともありませんでした。
ただ次から次へと、覚えること、学ぶことが指示されていく、そういう勉強をする意味がわからなかったんです。
けれど大人になって、その年齢に応じた内容をしっかり学んでおくことが人生の中でどれだけ重要なのかを知りました。
大事なのは「1+1=2」なことではなくて、「1+1=2だという意味をきちんと理解し、それを人生にどう活かすか」だと思うんですよね。
やみくもに「勉強をしなさい」と言うのではなく、勉強をすることがどういう意味で大切かを教えてあげると、子どもの勉強に対しての関心も変わるんじゃないかなと思います。
勉強に関しては学校の先生だけでなく、ママ達も関われるところがたくさんあると思うので、正しいかどうかわかりませんが、メッセージとして勉強嫌いだった私が体験したことをお話しさせていただきました。
愛をこめて IKKO
「努力の方向性を間違えなければ、思いは実現しやすいと思う」という言葉は、小さい頃からの夢を形に変えてきたIKKOさんだからこそ言える言葉であり、説得力がありましたね!
次回は、美容師の修業時代についてのお話を伺っていきます。お楽しみに。
(取材・文:上原かほり)