寝不足のママたちを救ってくれる、日本人初の睡眠コンサルタント愛波文さん
「なんで、寝てくれないのぉ~!」
子育て中のママが、きっと何度も呟いたことがあるはずのこの言葉。「寝ない子」「夜泣きをする子」「寝るのが下手な子」を持つママたちは、藁にもすがる思いで、寝てくれる子になるための情報を探しているのではないでしょうか。筆者も、寝ない子を持つ母だったので、その気持ちがよくわかります。
子どもの睡眠時間や質が、ママの日々の大変さを左右するといっても過言ではありません。
日本人初の「子どもの睡眠コンサルタント」の資格を取得し、寝ない子どもに悩むママたちの悩み解決のための活動をされている、愛波文(あいば あや)さん。著書『ママと赤ちゃんのぐっすり本』は、Amazonの睡眠、こどもの医学、赤ちゃんのいる暮らし全てでベストセラー1位を獲得しています(2018年7月10日時点)。
寝ない子どもの睡眠環境についてだけでなく、寝不足のママをもサポートしている愛波さんに、お話を伺いました。
「もっとハッピ―に育児しなきゃ!」と渡された一冊の本との出会い
――日本では聞きなれない「子どもの睡眠コンサルタント」とは、どのようなお仕事なのですか?
子どもの睡眠コンサルタントの仕事は、お子さんの夜泣き、長時間の寝かしつけ、早朝起きなど睡眠にまつわる様々な悩みを、科学的根拠に基づいた方法で各ご家庭・お子さまに合わせた改善策を提供することです。お子さまだけでなく、ご家族全員が快適な睡眠をとることで、子育てにも余裕ができ楽しめるようになります。
――愛波さんが、睡眠コンサルタントの資格を取ろうと思ったのはなぜですか?
長男が生まれるまでは、「赤ちゃんは寝るもの」だと思っていました。ベッドに置いたらずっと寝てくれるのが赤ちゃんだと思っていたのに、実際は全然寝ないし、ずっと泣いてるし……。やっと寝てくれたと思ったら、今度は静かすぎて何度も呼吸を確かめる。
海外で出産した私は、月の半分は出張で夫が不在という環境の中で育児がスタートして、すごく孤独を感じていたんです。初めての出産でママ友もいない状態だったので、同じ月齢の子を持つママたちと会ってみることにしました。そこで眠れないことや、子育ての日々に疲れていることを共感してもらえると思っていたのに、実際に会ってみたら「昨日の夜は飲みに行った」とか「昨日の夜はヨガに行った」とか、産後半年で、子育てだけではなく自分の時間も楽しんでいるママばかり。私みたいに悩んでいる人が誰もいなかったんです。
その人たちに「赤ちゃんが全然寝てくれないんだけど……」と落ち込んで伝えてみたら、「もっとハッピ―に育児しなきゃ」と言って、一冊の本を薦められたんです。それが子どもの睡眠本の中でも有名な「ファーバーメソッド」という手法の本だったんですが、読んでみると、まさに目から鱗! その後、図書館に行って関連する本を15冊ほど読み、徹底的に調べたいタイプなので、医学論文も読みました。
そして、実際に子ども1人で寝てもらう「ねんねトレーニング」を10ヶ月でスタートしたら、長男は4日目から1人で眠るようになったんです。そこから育児が楽しくなって、主人が早く帰ってきた日にはヨガに行ったりする時間を持てるようになりました。
そして、「ねんねトレーニングってすごいな」と思ったことをきっかけに資格を取りました。
お子さんが寝るようになると、みるみるママが元気になっていく
――どういう方が睡眠コンサルタントのサービスを利用されているのですか?
アメリカでは睡眠コンサルタントは普及しているので、「2ヵ月後に仕事復帰をするので、今から寝るリズムを整えたい」という予防策として取り入れる方が多いです。しかし日本ではまだこういうサービスが少ないこともあり、私のところに相談に来る日本人のママは、「お金を払ってでも頼みたい」「限界の限界」という状態で来る方が多いのです。そして抱えている悩みも深刻な分、お子さんが寝るようになると、みるみるママが元気になっていきます。
私は、「頑張りましょう」とはあまり言いたくないので、「一つずつやっていきましょう」と伝えながら、相談者の方に寄り添っていきたいと思っています。涙を流しながら感謝をされる仕事ってなかなかないと思うので、とてもやりがいを感じます。
――お子さんがなかなか寝てくれずに悩んでいる方は多いと思うのですが、実際に「寝るのが下手な子」というのは存在するのでしょうか。
うまく眠れないというお子さんはたくさんいます。
――「寝ない」お子さんに共通点はありますか?
睡眠の土台が整っていないことです。昼寝を大事にしていない、夜遅くまで起きている、テレビを見ている時間が長いということがあります。もちろんそれ以外にもあるのですが、それらの問題点を一つ一つ改善していくことで、「寝ない子」と言われていたお子さんがぐっすり眠るようになるので、とても驚かれます。
――寝かしつけで、パパができることはなんですか?
お子さんが寝ないことを旦那さんに相談できずに一人で悩んでいるママは多いと感じます。でも、「パパができることは」と聞かれたら……それはママと同じことですよね。ママだから、パパだからというのはなくて、同じことができるはずです。
だから、「週末の寝かしつけはパパ担当」もしくは「パパがいる日はパパが必ず担当」というようにルールを作るといいと思います。お子さんが「ママが良い」と言っても、「今日はパパの日なんだよ」と伝えたり、カレンダーにパパの日、ママの日というのをビジュアルで見せてあげたりするといいですね。
――会話が成り立つ前の月齢からでも伝えることをしたほうがいいですか?
「言ってもわからないだろう」と思わなくていいと思います。表情で子どもは理解してくれます。「新生児に伝えても……」という気持ちになると思いますが、それでも語りかけるということは赤ちゃんにとって刺激になります。
――お子さんが寝なくて悩んでいるママたちに、愛波さんが伝えたいことはなんですか?「ハッピーに子育てをする」ということを意識してほしいです。まずは、自分を満たしてあげてほしい。自分のために何かすると自己中心的だと言われたり、子どもの為に全てを犠牲にしなくてはならないという考えを押し付けられたりすると思うんですが、まずはママがハッピーにならないと子どもを満たすことはできないんです。だから、まずはママ自身のことを考えてほしいです。
私は相談者の方に、今の状況で何がイヤなのかを聞きます。洗濯物を片付けることがイヤなのであれば、1日くらいさぼったっていいということを伝えたいんです。全てを完璧にする必要はないことを知ってほしいし、手を抜くことを知ってほしい。
育児に携われる時間は限られていると思うんです。だからこそ、その時間はものすごく貴重。そのことをちゃんとわかっているママたちには、育児の時間を大事にしてほしいです。
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ママの気持ちに寄り添いながら、睡眠コンサルタントというお仕事をされている愛波さんが書かれた『ママと赤ちゃんのぐっすり本』。この本には、寝ない子がぐっすり寝るようになるためにするべきことが紹介されています。
ねんねトレーニングは、2歳からでも3歳からでも遅くはないとのこと。「寝かしつけのコツ」は、新生児から5歳まで年齢別に詳しく書いてあります。子どもの睡眠で悩むママたちの悩みが、どうか解決しますように。
『ママと赤ちゃんのぐっすり本 「夜泣き・寝かしつけ・早朝起き」解決ガイド』
愛波 文 (著), 西野 精治 (監修) 出版社: 講談社
■愛波文(あいばあや)
子どもの睡眠コンサルタント。APSCアジア/インド代表。IMPI日本代表。一般社団法人日本妊婦と乳幼児睡眠コンサルタント協会代表理事。慶應義塾大学卒業。2012年に長男出産。夜泣きや子育てに悩んだことから乳幼児の睡眠科学の勉強をはじめ、米国IMPI公認資格(国際認定資格)を日本人で初めて取得。2015年に次男を出産。現在、2人の男の子の子育てをしながら、子どもの睡眠に悩む保育者のコンサルティングや個別相談、日本人向けに子どもの睡眠教育プログラムを提供。IMPIと提携し、妊婦と子どもの睡眠コンサルタント資格取得講座の講師も務めている。著書に『ママと赤ちゃんのぐっすり本 「夜泣き・寝かしつけ・早朝起き」解決ガイド』(講談社)がある。
取材、文・鈴木じゅん子 編集・しらたまよ