現在の教育制度は明治時代から変わっていない!?2020年「新学習指導要領」の真実とは【衆議院議員・下村博文】
2020年の教育改革で、小学校に外国語活動として英語教育が本格導入されたり、道徳が教科になったりと、これまでの教育と大きく変わります。ところで、なぜ教育改革を実施する必要があるのでしょうか? 長年日本の教育問題に取り組んできた下村博文元文部科学大臣にお話を伺いました。
2020年4月から「新学習指導要領」が実施される
2020年の4月から全国の小学校で「新学習指導要領」が実施されます。それにともない道徳が教科に加わり、小学校3・4年生から外国語活動が始まり、5・6年生からは英語が教科として成績がつくようになります。もう1つ大きな改革でいえば、大学入試センター試験が廃止され、「大学入学共通テスト」がスタートします。
現在の学校制度は、明治時代に導入した「義務教育法」がベース
一言でいえば、時代の転換期です。現在の学校制度は、明治時代に導入した義務教育法をベースとしているのです。明治は西洋の文化に追いつけ追い越せの時代、戦後は高度成長期を支える優秀な人材を育てるための理にかなった教育法でした。ところが、1990年代を境に情報化社会になってからは、教育に求められる質が変わってきたのです。
これまでの教育は「学んだことをきちんと理解しているか」が重要でしたが、これからは「学習して学んだことを社会の中でどう生かすのか」ということが重要になってきます。つまり、変化の激しい21世紀の社会を生き抜くために必要なスキルをきちんと身につけられるよう教育することが重要になってくるのです。
10年、20年後、今ある職業の半分はなくなる!?
米国のある学者によると、10年後、20年後の世の中では、49%の人たちが現在の職業とはまったく違う仕事に就いているそうです。同時に、ロボット産業の発展により自動化が進み、今ある職業の65%はなくなるだろうと予想しています。
また社会のグローバル化により、企業は積極的に外国人を採用するようになると考えられます。それに伴い、これまで以上に英語力が重視されるようになります。「英語が話せる」ことから「英語を使ってどんなことができるか」が重要視されるようになったのです。
これからは、変化のはげしい時代を生きる子どもたちが社会で活躍できるよう資質や能力を育てていくことが重要なのです。そのため教育では、子どもたちが社会で活躍するためのスキルを身に着けられるようにすることが大切なのです。今までの教育では、学校の先生が子どもたちに教えたことを「きちんと理解しているか」が評価されてきました。しかしこれから先は、教えられた知識を理解することはもちろんのこと、自分で考えて、表現・判断し、社会の中でどう役立てられるのか、が重要となります。
授業は「アクティブ・ラーニング」を導入
お母さんたちからしたら「授業内容などは、どう変わるの?」と気になると思います。1つは授業の中にアクティブ・ラーニングを導入します。
これまでの授業は、教師が黒板に重要なところを板書をして、子どもたちがそれをノートに書き写すというスタイルでした。これに対してアクティブ・ラーニングとは、子どもたち自身がテーマについて自分たちで考えたり調べたり、ときには問題を解決する「参加型の授業」です。授業の中にアクティブ・ラーニングを取り入れることで、生徒たち自身で考え、表現し、判断する。そのことが社会に出たときに役立つ力を身につけることにつながると期待しています。
取材、文・長瀬由利子 編集・北川麻耶