74%の高校生が「自分はダメな人間」と思っている!母親の「満点主義」が子どもの自己肯定感を下げる理由【衆議院議員・下村博文】
「国語の成績はよかったけど、英語と算数のテストの成績がいまいちね。次は、英語と算数をもっとがんばりなさい」。ついつい子どもにいってしまいがちなこの言葉。実は子どもの自己肯定感を下げることにつながるって知っていましたか? 元文部科学大臣で、教育再生大臣を兼任した下村博文先生に「子どもの自己肯定感の高め方」についてお話を伺いました。
日本のお母さんは「満点主義」
これから教育改革をやるうえでは、お母さんたちの役割がものすごく大きいのです。今、子どもたちの学習知能は真っ白な状態です。しかし、お母さん自身が今の社会の既成概念に染まってしまっている可能性が高いです。どういうことかというと、お母さんは子どもに「すべてがバランスよくできること」を求めてしまいがちなのです。
たとえば、成績で国語が5で、ほかの英語や数学が3だったとしたら、「英語や数学もがんばってね」というのです。親からしたら当然のことかもしれません。子どもに対して、常に「もっともっとがんばれ。もっともっとがんばれ」といってしまうのです。
ほかにも学校の成績でテストで子どもが「80点とったよ」といったとします。お母さんは「すごいね」というだけで終わるだけではなくて、「クラスの平均点は何点だったの? 80点? それ普通じゃない」といってしまうのです。あるいは「そんなに100点の子はいっぱいいるの? じゃあ80点取れたって普通じゃない」といってしまうのです。つまり、ほかの子どもと比べて「もっとがんばれ」といっていることと同じなのです。
親としてはついつい「もっと上を目指して」と思ってしまうのですが、子どもからすると「自分は親から認められてない」と思ってしまうのです。それが10年も続いたら……自己肯定感はなかなか持てませんよね。
74%の高校1年生が「自分はダメな人間だ」と思っている
日本の高校生は、ほかの国の高校生に比べて自己肯定感がとても低いことがわかっています。国立青少年教育振興機構の高校生国際比較調査によると、米国・中国・韓国の高校1年生に比べて日本の高校1年生の方が自己肯定感が低く、74%が「自分はダメな人間だ」と思っているのです。高校生のときに「自分はダメな人間だ」と思っていたら、ますます自己否定感が強くなることが予測されます。これでは、その先彼らが幸せに暮らせませんよね。だから自分がだめな人間だと思う高校生が0になるような教育、社会を作ることがいま必要だと思うのです。
大学入試試験で問われる能力は「200あるうちの5・6個」
では、なぜ高校生の74%が自分はだめな人間だと思うのか。アメリカの教育学者によると、人間の能力は「やさしさ」「賢さ」「調べる力」など、200くらいにわけることができるのです。にもかからず、今の学校教育や大学入学試験で問われる能力は200のうちの5個か6個。つまり「ほかの子よりも暗記する力が強い」とか、「じっとして人の話を聞ける」という子の方が「勉強ができる」と評価されるわけです。
今の学校教育では「ほかの子よりもスポーツが優れている」「人に対して思いやりや優しさがある」「美しいものに感動する感性が強い」という能力は、評価されないのです。しかし、これらの能力は、社会に出たとき、自分が仕事をするうえでは長所になる可能性があるわけです。
今必要とされているのは「個人の多様な能力を引き出す教育」
「学校教育で評価される部分」の能力が高い子は問題ないと思います。しかし不得意な子からしたら、自分の苦手なところでばかり毎回評価されるわけなので「自分はできない人間だ」と自己否定しまうのは当たり前です。もっと多様な価値観があり、それで評価されることが大切だと思います。
パソコンを使った仕事をする人もいれば、おいしいパンを焼いて多くの人に食べてもらうことが生きがいの人もいるわけです。そういった個人個人の多様な能力を引き出すような教育をやっていくことが、今、必要とされている教育だと思います。
取材、文・長瀬由利子 編集・北川麻耶