ママの「孤独」は子どもに影響!?兄弟を平等に愛する「一人っ子作戦」
兄弟がいる家庭では、「ママはだれのことを一番かわいがっているのか」を、子どもはとても敏感に感じ取ります。ママからしたら「どの子も同じでかわいいわよ」と言うかもしれませんが、子どもから見ると、「ほかの兄弟のほうがかわいがられている」と感じることもあるようです。こんなとき、子どもたちにどのように接したらいいのでしょうか? 「花まる学習会」の代表、高濱正伸先生にお話を伺いました。
子どもは「ママの愛情」を敏感に感じている
ある家庭での話です。ママは上のお姉ちゃんには厳しく、弟はかわいがるといった様子でした。お姉ちゃんを花まる学習会に送ってきたときは、プンプンしながら「先生、うちの子ちゃんと勉強していますか?」と言っていました。僕が「ちゃんとやっていますよ」というと「おかしい……!」と、とにかくお姉ちゃんには否定的です。
2年後、弟が入会しました。弟はダメダメ君なんですよ。でもママからしたらすごくかわいいのです。「先生、うちの子かわいいですよね」と話しかけてくるくらい。お姉ちゃんと弟を見るママのまなざしがまったく違うのです。
そうなるとお姉ちゃんはママからの愛情をしっかりと受け取れないので、心に穴があいてしまいます。お姉ちゃんからしたら「お母さんは弟しかかわいくないんだ」というふうに思ってしまうのです。孤独な子ども時代を送ってきたこのお姉ちゃんの証言によると、自分と弟を見るママの目が違うというのです。たとえば「ケーキを買ってきたよ」というとき、ママの顔は絶対に弟の方を向いているというのですよ。
旦那さんには伝わらない。ママ自身が感じる「孤独」
では、なぜママがそうなってしまったのでしょうか。ここにはママ自身に深い原因があります。ママは毎日家事や育児を必死にがんばっています。だけどそのがんばりはだれにも、分かってもらえていないのです。掃除して当たり前、洗濯して当たり前、PTAのことをやって当たり前。町内会のことをやって当たり前。そんな時とき、毎日だれかがママをねぎらって「大変だね」「がんばったね」と言ってあげることが必要だったのです。
なんでもかんでも「母親なんだから、やって当たり前」と家族から思われてしまう。ママは自分こそがかまってもらってないから、愛を受けていないから、子どもに対して厳しくなってしまうのです。
残念なことに、このママの孤独が旦那にはまったく伝わらないのです。「伝わらないよね、この人には!」「ちょっと聞いてほしいだけなのに、知らんぷりしやがって」と思い、さらに「俺は外で働いてきたんだ」みたいな顔されると、心底腹が立つわけですよ。でも、これはごく普通の夫婦です。
なにが言いたいかと言うと、ママは大人だからそれでも立て直せるかもしれません。でも子どもは親だけが頼りです、兄弟それぞれに愛情を注いでほしいわけです。
「一人っ子作戦」で兄弟それぞれとの時間を取ってあげる
では、ママがなにをしたらいいかというと「一人だけに愛情を注ぐ時間」を作ってあげることです。これは専業主婦、働くママでも同じです。土曜日の午後はお姉ちゃんとママが買い物に行く、日曜日の午後は弟とママが買い物に行く。それだけでいいのです。これを花まる学習会では「一人っ子作戦」と呼んでいます。
「どうしても下の子しかかわいく思えなくて……」という人こそ、じっくり向き合い、一緒に過ごす時間をとってあげてください。
親子1対1の時間を作ってあげる。このことによって子どもは「自分はママに愛されている」と実感することができ、それが将来にわたっての自己肯定感につながっていくのです。
取材、文・長瀬由利子 編集・北川麻耶