ちょっと面倒な子どもの「コレ、なーんだ!?」をおもしろ楽しく描いた絵本『なつみはなんにでもなれる』
子どもって、変なポーズをして「コレ、なーんだ!?」とドヤ顔でママに迫ってくることがありませんか? そんなとき筆者は、内心「また始まった……」と身構えます。「ママは絶対正解してくれるハズ」という期待のこめられた、キラキラしたその表情がまずプレッシャー(汗)。だって、たいてい正解できないし、正解できないと子どもは不満そうだし、でも子どもはめげないからママは質問攻めにあうし……。子どもは可愛いけれど、子どもの相手って正直疲れます。
そんな、何気なくてママには面倒なはずの育児シーンを、おもしろ楽しくとらえた絵本に筆者は出会いました。
ヨシタケシンスケ作『なつみはなんにでもなれる』が、MOE絵本屋さん大賞 第1位に決定!
その絵本とは、ずばり! ヨシタケシンスケさん作『なつみはなんにでもなれる』です。こちら、先日「第10回 MOE(モエ)絵本屋さん大賞2017」第1位に輝いた一冊となっております。全国の絵本屋さん3000人のアンケートから、最も支持された絵本30冊を決定する年間絵本ランキングの「MOE絵本屋さん大賞」。ヨシタケさんの同賞第1位獲得は、第6回で『りんごかもしれない』、第8回で『りゆうがあります』、第9回で『もう ぬげない』、そして今回第10回で4度目。ユーモアを詰めこんだ“子ども目線”で、さりげないはずの日常を楽しく描き出すヨシタケ作品は、人々の心を惹きつけてやまないようです。
なつみがママに難題クイズの嵐をふっかける!絵本『なつみはなんにでもなれる』
今回は、なつみという女の子とお母さんのお話です。
『おかーさん! おかーさん! おかーさん!』
なつみが手と足をバタバタさせて登場。のっけから、なんだか騒がしそうです。
『なつみはね、すごく いいこと おもいついたよ!』
『なつみが なにかの マネをして、それを おかあさんが あてるゲームだよ!』
『え~~。あたんなくても おこんない?』
なつみのノリノリのテンションとは真逆に、お母さんはゲンナリとした顔……。
『かんたんだから だいじょうぶ!! じゃあ だいいちもんね! コレ、なーんだ?!』
ほんとうに「かんたん」なのかなぁ?? ここからなつみの「コレ、なーんだ?!」の嵐がママをおそいます。
毛布で体を覆ってすわり、顔だけ出して「コレ、なーんだ?!」
白いタオルをあごから垂らして「コレ、なーんだ?!」
イスを背もたれを下にして倒し、前に押して歩いて「コレ、なーんだ?!」
うまく正解できないお母さん。(正解を聞けば「なるほどね」となるけれど、イマイチ表現しきれていないから、大人はわからないものですよねぇ?)
はたしてお母さんは正解できるのか? そして、永遠につづくかに見えるなつみのクイズはいつ終わりをむかえるのでしょうか……?
「きっと正解してくれる」と意気込むなつみの姿に、お母さんの醒めた対応に、「こういう感じ、わかるわかる」と、読めば思わず”クスリ”と笑みがこぼれるような一冊。いつもは「ちょっと面倒だなぁ」などとやり過ごしていた育児の一コマが、絵本の中では輝いて見えるから不思議です。これぞ“ヨシタケワールド”でしょうか?
じつはヨシタケさんのお子さんも以前“なつみ”と似た状態で、ヨシタケさんはそのやりとりを新鮮に感じたのだとか。わかりあえないことを面白がれたら……そんな思いで『なつみはなんにでもなれる』を描いたそうです。
一見ネガティブな「わかりあえない」を面白がる——それって最強かもしれません!(笑)。育児のスムーズにいかないことを“面白がる”余裕をもてたら、子育て中のママのため息も減るかもしれませんね。
『なつみはなんにでもなれる』
作:ヨシタケシンスケ
価格:本体1000円+税
発売日:2016年12月14日
出版社:(株)PHP研究所
文・福本 福子
※参考:月刊MOE 2018年2月号(白泉社)