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娘を持つ母であり、かつて娘だったあなたに贈る本。西原理恵子さん『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』

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娘を出産してはや3年。近ごろ、娘が産まれた当時を懐かしく思い出します。
まだ新生児の娘を抱いて、子守り歌を口ずさみながら日々祈っていたことがあります。
「悲しみなんて知らなくていい。この子がこれから生きていく人生が、愛と笑いにあふれたものでありますように」

この春から幼稚園に通い出した娘の世界は、どんどん広がっていきます。その成長を見ているうちに、「悲しみを知らずに生きていくなんてことはできない」という当たり前のことに、ふと気がつきました。
「悲しみなんて知らなくていい」。親としては当たり前に願うことではあるけれど、これからの娘の人生、必ず「悲しみ」を乗り越えなければいけないときがくるんですよね。

そんなことを考えていたとき、西原理恵子さん『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』という本を本屋さんで見つけました。
娘を育てる母として、このタイトルを目にして本を手に取らない選択肢はありませんでした。

西原恵理子さんと言えば、毎日新聞で2002年から16年の長きにわたり連載していた『毎日かあさん』で「卒母」を宣言、連載を締めくくられたばかり。ちょうどそれと同じ時期に発売したこの著書は、子育て中のママたちの間で話題になっています。先日、タレントのつるの剛士さんもインスタグラムで紹介されていました。

本の第1章に書かれているのは、西原さんの娘さんの反抗期のこと。16歳になる娘さんに「お母さんなんてキライ」と言われ、その日から口をきかずに半年の月日が経過したということが書いてあります。
同じ家に住んでいて、半年も言葉を交わさない……。そう思うと、いずれやってくるであろう反抗期に早くも緊張してしまいます。

母になる前の、かつて「娘」だった自分とも向き合わせてくれる本

筆者は、10代に反抗期というものがありませんでした。なぜかと問われると、10代の頃の母は私にとって「絶対に逆らってはいけない存在」だったからです。
友人たちが親に対して「うるせー!」とか「ばばぁ!」なんて言っているのを横目に、そんなことは絶対言えないという気持ちで10代を過ごしました。
だから、進路を決めるときに「お母さんの言う通りにしなさい」と、勇気を出して伝えた自分の希望をあっさり聞き流されたときでさえ、逆らうことができませんでした。

よく「うちの子はイヤイヤ期がなかったの」とか「反抗期がなかったの」と話すお母さんを見ていると、「なかったんじゃないよ。これからなんだよ」と心の中で思います。
なぜなら、筆者がそうだったから。10代に反抗期がなかった反動は20代前半から30代の間に爆発しました。
遅れてやってきた反抗期は厄介です。人生でうまくいかないことがあると、簡単にそれを「母のせい」にして生きてしまう。
うまくいかないことを誰かのせいにして生きるのはとても楽なんです。何があっても「あのとき、私が希望した進路に進めていたら、今ごろ……」という言い訳で、ダメな自分を肯定してしまう。
「自分らしく生きたい」なんて言いながら、都合のいいことは人のせいにして過ごした20代。きっと私は大切な物をたくさん見落としてしまったのだろうと思います。

「自分の人生は自分で責任を持たなければ」。そう思えたのは夫と出会ってから。遅い反抗期が終わったのは30代を過ぎてからです。

「女の子を育てていく中で必要なこと」が書かれていると勝手に想像して読み始めたのに、思いがけず、母になる前の「娘」であった自分自身と向き合うことになりました。

「夢と現実」を知った10代の終わり。親の反対で諦めた夢、うまくいかないことを誰かのせいにして過ごしてきた20代……。
この本を読み、忘れていた若かりしころの自分を思い出したら、成長していく娘に対して「親としてできること、すべきこと」はなんだろうという気持ちが沸いてきました。

親として、大切な娘にしてあげるべきことはなんなのか

私は自分の経験上、「子どものやりたいことを尊重する親になる」という気持ちだけは強く持っています。
娘はまだ3歳でも自己主張は大人顔負け。おませなもので口も達者。そして、誰に似たのか気も強く頑固。そんな彼女が主張することは、まだまだ3歳らしくかわいらしいものばかりですが、この先きっと「さすがにそれは……」と思うようなことが起こるのでしょう。
その時、親として、私がしてあげるべきことはなんなのか。

この本を読んで、私の課題は「反抗期を迎えるべき時期に、しっかり反抗期を迎えさせてあげること」なのだと思いました。
第一次反抗期と言われる2歳ころからのイヤイヤ期は、しっかりばっちりイヤイヤしまくった娘。
第二次反抗期が始まると言われている12歳ごろまで、約10年。その時期にしっかり「ママなんてキライ」と言える子にしようと。

本の中には、「ある日、目が覚めたら娘が、金髪になっていた」というエピソードがあります。
娘さんの金髪は3日で黒髪に戻り、その姿を見て西原さんは娘さんの気持ちが少しわかったようです。
「やりたいことができたけど、努力の方向性がわからない。それで金髪」と。
演劇という夢を見つけた娘さんに対して、西原さんは「やりたいことができると、人はどうしたって自分のコンプレックスと向き合うことになる」と書いています。
どうしていいのかわからない。何が不安で、何にイライラして、何をどうするべきなのか……。 その混乱や不安を、金髪にするという行動で表した娘さん。

自分の子どもが、ある日突然金髪にしてきたら、みなさんはどうしますか?
「金髪なんてやめなさい!」と叱りますか? 「この子が何を考えているかわからない」と悩みますか? 「助けてあげなくては!」と世話を焼きますか?

正解はわかりません。でも、筆者は、「こればっかりは手助けなんてしようがない。自分でどうにかするしかない。みんな自分でどうにかしてきた」という西原さんの言葉のままだと思うのです。

その人生を生きるのは親ではなく、その子自身。
何か悩みを抱えたときに、誰かがそれを解決してくれていては成長できない。
大切なのは、傷を負ったときにその痛みを治す方法。一人で乗り越えられない壁にぶつかったとき、「そんな時は力を貸すよ」という存在(親)がいるという支えを、お守りのような気持ちで持たせてあげることなのではないかと感じました。

今や、社会で活躍していくことに、男女の差はありません。
女だからといって、結婚をして家に入り家庭を守るという時代ではなくなりました。男性と同じように世の中で戦い、立派に地位を確立できるのです。
しかし、その分負う傷は増え、打ちのめされることもあるでしょう。
そんなときに必要なのは、「壁にぶつからない生き方」をすることではなく、「ぶつかった壁をどう乗り越えるか」という術をどれだけ知っているかということ。
転んだって立ち上がれるということを知れば、戦うことが怖くなくなります。
転んで立ち直った数だけ人は強くなれるんだと知れば、立ち直るために必要な策を自分の中に蓄えていくことができます。

「幸せは自分で取りに行ってください」

西原さんの〆の一言。筆者は娘にこの言葉と、そこに込められた意味を教えていきたいと強く思いました。

文・鈴木じゅん子 編集・伊東杏奈

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