豊田エリー:第4回 出産はとにかく感動そのもの。私も彼も号泣でした
お父様のいる海外へ旅行をするなど、比較的元気な妊婦さんだったというエリーさん。ついに出産のときを迎えます。そして大きなひと仕事を成し遂げたあとに待っていたのは──?
出産はスムーズだったんですか?
わりと安産だったんじゃないかな? 私、もともと痛みにすごく弱いんですよ。それでまわりからいろいろな話を聞くうちに恐怖心が勝ってしまったこともあり、無痛分娩を選んだんです。分娩室に入ってから出てくるまでに何時間かかったかなぁ……? それほど長くはなかったと思います。
母がひとり目を産んだときは、けっこう大変だったみたいなんですよ。何日もかかったけど出てこなくて、結局帝王切開になったらしくて。フルコースを味わったそうなので「私は大変だったのに、いいわね」ってうらやましがられました(笑)。
スルリと産まれたわけですね
それが……普通は吸引になることが多いみたいなんですけど、なぜか私の頭の中に「吸引はイヤだ!」というのがあって。まぁ、どうしてもというときには仕方ないんですけど、「吸引しますか?」という話になったとき「いや、私、頑張りますから!」って。
でもやっぱりなかなか出てこないので、結局お医者さんが私のお腹の上に完全に乗っかっちゃう形になって。すごいアザがお腹に残りました。結局絞り出された形ですね(笑)。
壮絶な図ですね(笑)。出産自体の痛みが強いから、そのときはさほど気にならなかったのでは?
そうですね。たしかにそれほど感じていなかったです。よく覚えているのが、助産師さんがよい方で「先生、人前に出るお仕事の方なので、アザは残さないであげてください!」って(笑)。あとで見て「おおお~……」みたいな戦いの痕ができましたけど、今は平気です。
ただ、私は入院するのもはじめてだったので、そのあと夜ひとりで病室のベッドにいると不安がどんどん募ってきて。まぁ、子どもと同室ではあったんですけど、あまりにも生まれたての新生児なのでそれも心配で眠れないんですよ。本当に静かに眠るので「生きているのかな?」と不安になって、鼻の前にティッシュをたらして生存確認したり(笑)。そんなこんなで入院中の数日でトータル数時間しか寝ていないんですよ、私。完全に睡眠不足でした。
普通は出産すると体力が尽きてヘトヘトになりますよね?
それ以上に気が張っていたんでしょうね。夜も目が冴えて眠れなくて、子どもをずっと見ては定期的に「ううううう……」って泣いたり。小さな病院だったので、窓の外がすぐ隣家の壁なんですよ。空がまったく見えなくて。4~5日間ずっとその病院内で、検診と病室の行き来をするだけでした。
ただでさえ出産直後でホルモンバランスが乱れがちなのに、うつになりそうですよね
入院中はなりかけていたと思います。ご飯を食べながら涙が止まらなくなったこともあります。だからたまにお友達が来てくれると「わぁ~!」って。ただ、中にはまったく帰ってくれないお友達もいて、すごく疲れちゃったり(笑)。すごく仲のいい子だったんですけどね。
たしかに来てくれるのはうれしいけど、ずっとだと疲れますよね、出産経験がないと、出産後にどれほど疲れやすくなっているのかがわからないんですよね
そうそう。「退屈だろうから」って、逆に気を遣ってくれていたんだろうなと思うんですけどね(笑)。
出産したときは、どんなお気持ちでしたか?
すごく感動しました。すでに名前を決めていたので、その名前で呼びかけて。その助産師さんが本当によい方で、「ママ、産んでくれてありがとう」なんて当て振りをやってくれたんですよ。それにもすごく感動しました。カンガルーケアをお願いしていたので、すぐに抱っこできて「頑張ってくれてありがとう」って呼びかけました。
ご主人の立ち会いはあったのですか?
立ち会いました。感動していましたね。すごく喜んでくれて、私に負けないくらい号泣していました(笑)。私の大変さを目の当たりにしたので、「無痛じゃなかったら、いったいどうなっていたんだろう?」って言ってました。
ただ、出産が大変なのは聞いていましたけど、そのあともまた痛みがいろいろあるのは「聞いていないよー!」って思いましたね。
あっちもこっちも、痛いことが続きますよね! 母乳はすぐに出ましたか?
最初はうまく出なかったんですよ。お医者さんにも「よく食べて、よく寝て」って言われてましたけど、入院中はほとんど寝られなかったので。途中から出るようにはなったんですけど、今度は痛くなっちゃって。胸に冷却枕みたいなのを乗せていました。
出産の数だけ、ドラマあり。「安産」のひと言でくくられてしまうことも多いけれど、エリーさんのようにそれぞれなりのエピソードはあるものですよね。「お見舞いに来た友達がなかなか帰ってくれない」は、出産経験のある人には本当に”あるある”で、思わず笑ってしまいました。どちらにも悪気がないのは、明らかなのですが(笑)。
さて次回からは、そうして誕生した娘さんのお話。自己主張の強い娘さんだそうですが、さてパパとママのどちらに似たのでしょう?
取材、文・鈴木麻子 撮影・泉三郎