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ママ×お坊さん座談会~子育ての悩み、聞いてください~

お坊さんに悩みを相談できるQ&Aサイト「hasunoha」をご存知ですか? 現在、質問するだけでも1万人待ちという超人気Q&Aサイトです。

今回ママスタでは「hasunoha」さんとコラボして、ママとお坊さんの座談会を行いました。

お答えいただいたのは、長慶寺副住職 泰圓澄一法さん(保育園の園長)と、大野山福光園寺副住職 鈴木秀彰さんです。お二人とも二児の父親ということもあり、子育て経験者としても参考になるお話が聞けそうです。

ママとお坊さんの本音Q&A

ご参加いただいたのは、1歳の男の子のママであるHさん、つづいて小学校低学年の男の子のママであるMさん。ママたちの心は穏やかになるのでしょうか?

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過保護な自分をどうにかしたい

子どもは小学校低学年で1人で帰ってこられる年齢ですが、毎日のように帰宅時間になるとソワソワしてしまいます。外出先でもちょっと顔が見えなくなるだけで、顔が青ざめるくらい不安になります。過保護すぎというか不安症の自分をどうにかしたいです。それともこのままの状態でもいいものなのでしょうか?

Mさん:私からの質問です。子どもが学校から帰ってくる10分前から外に立って待っているくらい不安です。子どもは友達と話しながら帰ってくるので帰宅が遅くなることもあるんですけど、そうなるとすごく不安なんです。信じてはいるつもりなんですけど……。

編集部:ほかのことでも気になりますか? たとえば家の鍵を本当に締めただろうか、とか。

Mさん:そうですね。日常生活でも心配になる点はいくつかあります。

鈴木:Mさんのお母様もそんな感じだったんですか?

Mさん:どうでしょう。母は「心配して大事なことにいたらなければそれでいいじゃない」とは、この間言っていて。

鈴木:低学年だし、いいんじゃないですか?

Mさん:そうなんですが、ほかの子と比べてうちは過保護かなと思ってしまうところもあって。

鈴木:そこはMさんの問題なので、Mさん自身が安心できるようになれば親離れになるか子離れになるかですけど。
そのうちに思春期になれば、こっちがどれだけ心配しても子どものほうからノーサンキューときます。現在の平均寿命から考えると子育てに関わる時間は短いので、そこはやり切ってしまったほうがいいかなと思います。

泰圓澄:うちも奥さんが子どもに手をかけすぎてると感じたとき「本人にやらせたら?」というんです。すると「あんたは手をかけなさすぎる」と返されます。
夫婦両方で過保護になると心配ですが、ご主人は少し離れてみているならバランスは取れているかなと思いますよ。自立と養護、どちらも大切な視点です。
そのうちに子どもも大きくなり、子どものほうから恥ずかしがると思いますので、その時には子離れやお別れを考えることになると思います。

編集部:お子さんの反応はどうですか?

Mさん:最近、学童に迎えに行くとまわりの子から「あいつ、お母さんが迎えに来てる!」といわれるのがいやらしくて「もう来なくていいから」といわれてしまって。それもあって私は迎えに行けない感じになってしまい、家でムズムズ……。

泰圓澄:「私の心配をわが子はどう理解してくれるのよ」という気持ちですよね。お子さんがちゃんと報告してくれたら安心するのか……。

鈴木:小学校の低学年ですからね。僕も一人っ子で、母親がそんな感じでした。なので息子さんの気持ちもわかります。でも、母親は変えられないし、自然とうまくできるようになりましたよ。
それに母親というのは、60歳でも70歳でも……80歳になっても子どもへの心配は尽きないものです。だからそういうものだと思って、心ゆくまで心配してあげましょう。

生理前になるとすごくイライラして子どもを叩いてしまいそう

私は月経前症候群で、生理前になるとすごくイライラして子どもにあたり散らしてしまいます。子どももママが穏やかではないことに気づいてわがままで泣きじゃくったりします。症状がひどくなると子どもを叩いてしまうんじゃないかと心配で、どうしたらいいのでしょうか。

Hさん:私の体調がすぐれないためか、子どもが一週間限定で赤ちゃん返りをして、いつもはできることができなくなってしまいます。
これじゃまずいと思って病院に通って薬を処方してもらっているのですが、まだ完治には至っていません。大丈夫な時は本当にかわいがれるんですけど……。症状が出てしまうと、自分がこの子に手をあげてしまうんじゃないかと思って……。それがつらくて(涙)。どうしたらいいのかなっていつも思うんですね。落差が激しすぎて、つらくて。毎月来るものなので、どうしたらいいかわからなくて。ごめんなさい……。泣くつもりはなかったんですけど……。

編集部:お子さんは一人ですか?

Hさん:そうです。

編集部:一人目はどうしてもがんばっちゃいますもんね。

Hさん:今までは仕事でがんばれば上司や先輩に評価されて、自分の存在価値があったんですけど。子育ては教科書もないし、主人はほめてはくれるんですけど、家族以外の人から自分を認められることがなくなると、すごくよけいなことまで考えてしまうんです。普通だったら「なんでこんなことを考えていたんだろう」というようなことまで考えてしまいます。
毎日、子どもの世話に家事にとやることはいっぱいあって、忙しいんですけど、暇なんですよ。それで月経前になると、よけいにいろいろ考えてしまって。

編集部:月経前にそうなってしまうからこそ、普段は「がんばらないと!」と思うことはないですか?

Hさん:どちらかというとそうだと思います。がんばりすぎてため込むタイプです。

泰圓澄:つらさの原因がどのあたりにあるのか気になります。体というのはリズムとかバランスとか波があるじゃないですか。その波を考えず、高いレベルで子育てなり家事を保たなければいけないと思っていませんか。いつも笑顔で、子どもに対して優しい役割でいなければいけないと思うけれど、それができないことで自分を責めてしまう。母親としてだめなんじゃないかな、不十分じゃないかなと。わかっているけど、そこで子どもに当たってしまう自分がつらかったり、悲しかったりするのではないでしょうか。

Hさん:なんだろう。子どもがワーとなると自分もワーとなっちゃって、それでパニックになっちゃう感じです。

泰圓澄:ワーとなった時に、「私は母だからちゃんと受け止めなければいけない」という固定観念があるのではないでしょうか。

Hさん:あります。

泰圓澄:そこで後悔が生まれ、理想とする「母親像」とのギャップを埋められない自分のつらさがあるのかもしれませんね。
そういうときはそういうとき。あとでどうフォローするか、ニュートラルな時になにができるかということを考えるほうを大事にしてほしいです。
そこらへんはもう少しやわらかく考えてもいいのかな。
台風の時にどう台風を止めるのかを考えるのではなく、いかに被害を最小限に抑え、復旧をするかということですね。

編集部:ワーとなった時に相談できる人はいますか?

Hさん:主人に聞いてもらっています。ただ、その積み重ねがきていて、主人もすごく仕事が忙しくて大変な時期なんですよ。いつも甘えちゃっていると思って、いえなくて……。そういうときには「hasunoha」ですね(笑)

泰圓澄:「hasunoha」なら何人もの坊さんからやさしいありがたい言葉がワーときますよ(笑)

鈴木:吐き出せる場所があることは大事ですね。

Hさん:そうですね。友達で5人産んだママがいるんですが、その子に聞くと「私も一人目を生んだときはそうだったけど、5人になっちゃうとそんなことはいってられないよねー!」と(笑)。でも、毎回頼ってしまって「重くならないかな?」と変なことを考えちゃいます。

編集部:ワーとなるのは、その子がどういう行動をしたらなるんですか?

Hさん:1日グズグズなんですよね。

泰圓澄:たぶんお母さんのそういうのをわかっているから、ワーとなるのが彼なりの出し方なんでしょうね。「そろそろそんな周期なんだね」と察しているかどうかはわかりませんが、なんとなくいつもと違うということを子どもなりに察しているんでしょうね。
毎日一緒にいて、お母さん自身の変化を感じずマイペースにいられても逆にすごいですけど(笑)。そこは彼なりの変化を出しているところだと思います。

Hさん:そうか。じゃあ、ギャーとなっているんだけど「ママ、大丈夫?」といっていると思えば。

泰圓澄:そういう意味もあるんです。「いつもと違うママなんだよね」と思っているかもしれない。

鈴木:子どもは親をよく見ているので、私は逆に子どものほうが大人だと思います。さきほど話したように、子どもがのびのびと遊んでいる姿こそがすべてだと思っていて、何も心配はないと思います。ただ単にがんばりすぎないこと。弱音を吐いてもいいんですよ。

泰圓澄:そのつらさがこれからもずっと続くわけじゃないと思います。小さいうちは子どもへの目配りは必要ですが、12、3年たち、思春期に入ると「母ちゃんはつらいんだから今日は無理。ご飯は自分で電子レンジで温めなさい」「1カ月に1回なんだから洗濯などの手伝いをしなさい」となりますよ。
子どもだって「お母さんはつらいから、月イチなら仕方がないな」となりますよ。

鈴木:今、お母さんの体調の悪さに接することで、将来、女性の体を思いやれるようになりますよ。そういうのが学びになっていくのだと思います。もしこれからそういうことがあっても、そう考えればいいのではないでしょうか。

泰圓澄:開き直って先にいってしまってもいいんですよ。「今日はお母さんつらいからよろしくね」といえれば、子どもも「そうか。しかたがないな」となり、してもらって当たり前の感覚から「お母さんがつらいなかで、自分にできることはなにか」と、お母さんの心を汲む経験にもなります。本当は朝も昼も晩もきっちりやらなければいけないと思うところですが、「できないからフォローよろしく。その分ほかで埋め合わせはするよ」くらいでいいんですよ。

Hさん:たしかに弱音を吐くのは苦手というか下手というか。いつもいわれているけど、できなくて。さすがに子どもを産んでからは「できない」といわざるをえなくなって。
今まではがんばればなんとか自分一人でできたのですが、今は逃げられないので、まわりにいって助けてもらうしかないかな」と思っていて。

泰圓澄:そこで「できない」が「自分だけの問題」にしないで「家族全体の問題」として家族を味方にして「ありがとう」「おつかれさま」「大変なときはお互い様」という言葉がいきかうようになるといいです。

母親だから「やってあたりまえ」と思われる。自分で自分をほめる方法は?

編集部:さきほどのHさんのお話にもありましたが、母親というのは誰からもほめられないし、感謝されることも少ないです。そんなときはどうしても自己肯定感が持てないのですが、自分で自分を認める、ほめる方法はありますか?

泰圓澄:今、僕らが生きている時代というのは短いサイクルで結果を求めたくなりますが、今ここがすべてじゃないと割り切るようにしています。

たとえば今日畑を耕したからといって、明日すぐにおいしい野菜が食べられるわけではないですよね。結果が出るには時間のかかることもあります。

今ここでの評価で自分を判断するのではなく、後になって、一生懸命子育てをがんばっていた当時の自分に、現在の自分がねぎらいの言葉をかけてあげてもいいんです。当時は辛く大変だったけどあのとき乗り越えたからこそ現在がある。「あのときの自分へ、えらかったね、がんばったね!」と過去の自分が報われる声かけを自分で自分にしてあげることは可能です。自分の一番の味方は自分です。結果がすぐにでないのは不安になるのではなく、それはそれで当たり前なんです。

仏様は大勢の人を救ってきたわけですが、それは 1 回で救ったわけではありません。トライアンドエラーを繰り返し、5劫とか56億7000万年とか長い、長い年月をかけて一人前の仏様になったと私は思っています。

そういう長いスパンで出る結果もあるので、目の前の結果ばかりで自分を責める必要はないです。

今は中間地点だな、折り返し地点だな、と思えると不安も和らぐのではないでしょうか。自己肯定感というなら他者からの評価でなく、現在の自分が過去の自分を大切に扱うことが重要に思います。

鈴木:子どもを育てているお母さんというのは、なによりもすばらしいです。なにか不安になった時は、子どもを育てているのは自分なんだと思えば、それがなによりの自信になると思います。

「自分、すごいな!」って思ったもの勝ちです(笑)。それを口に出していわなくてもいいんですが、それを自分で思えたか思えなかったかで、いろんな相談、悩みというのは解決できるかなと思っています。

そして、そんなお母さんの姿を子どもは見ているから強いじゃないですか。誰が育ててくれているかといったら、やっぱりお母さんなんですよ。そこは申し訳ないけど、父親は勝てません(笑)

やっぱり自分で産んでいるから強いですよね。なによりもそこが強みだし、自信をもってもらいたいと思います。

お二方から読者の方に向けてメッセージ

泰圓澄:「悩めるお母さん」は責任感が強く、自分のことを後回しにして、子どもや家族や周囲に気を使いすぎているんじゃないかと思います。手を抜くことと力を抜くことは別です。病んでしまうくらいなら抱え込まず、「hasunoha」や仏教をうまく活用してくださるといいなと思います。

鈴木:いつも子育て支援センターなどでお話していることですが、親だからといって完璧である必要はありません。

これは私どもお坊さんにも同じことがいえますが、「いつも微笑みを絶やさず、心穏やかにいるもの」と自分自身のなかで「理想」を追い求めがちです。

また、まわりの人からもそうあることを暗に求められることもあります。

しかし、母親もお坊さんも中身は人間です。ダメなところがあっていいんです。
子どもにとっての反面教師でいいんです。親の悩んでいる、怒っている、泣いている、いろんな姿を見せることは子どもにとってもいいことです。
がんばりすぎない、完璧すぎない、ぐうたらでいいと思います。なによりも今、子育てをがんばってやっている。それだけで大変すばらしいことだと思います。そのままでお会いできたらなと思います。

全国のママから質問です! こんな時お坊さんはどう考えますか?

最後に全国のママさんからいただいた悩みについて、お坊さんに回答いただきました。

他の子ができていることを自分の子どもができていないと、自分の子育てが不十分なのか、失敗しているのかと不安になり、つい子どもや主人にあたってしまいます。いつも穏やかに過ごすためにはどうしたらいいですか?(20代ママ)

子育て中はどうしても「子どもの評価=親の評価」になりがちですが、子どもと親は別の人間です。親としては「こういう子どもに育ってほしい」という気持ちもあるでしょうが、そこに依存し過ぎないことです(鈴木)

子どもにあたるのはよくないので、気がすむまでご主人に気持ちをぶつけましょう(笑)。時には夫婦ケンカをして、仲直りしてください。大切なことは一人で抱え込まず伝え合い、相手とともに穏やかになる方法を探ることです(泰圓澄)

自分が比べようと思わなくても、身近にいる人、たとえば実母や義母などから他の子と比べられてあれこれ言われることがあるかと思います。そんなときはどう対処したらいいですか?(編集部)

「子育ての一部しか見ていない人の言葉」と考え、そこにとらわれすぎないことです。まわりの意見はありがたく右から左へ聞き流し、自分の子どもを信頼して見守ってあげることが大切です(鈴木)

子育て中はついついその場その場での「完璧」を目指してしまいがちですが、昔でいったら家訓、「家族として大切にするルールは何か」を明確にすることです。それによって人から言われて気にしなければいけないこと、気にしなくてもいいことがわかり、心穏やかにすごせる時間も増えるようになりのではないでしょうか(泰圓澄)

お坊さんに聞く子育て相談は、ママたちにとっては非常に心強いものとなったのではないでしょうか。ありがたいお坊さんのお話がきけたところで、本日はお開きにしたいと思います。また次回、機会があったら聞いてみたいですね。

今回ご協力いただいたお坊さん

鈴木秀彰さん

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真言宗智山派大野山福光園寺副住職 理学療法士、心理カウンセラー
「子育ての参考書の一つに仏教を」
山梨県内、県外をはじめ、県外の子育て支援センターなどで講演、セミナー、ワークショップなど開催中。本人も2児のパパ。

泰圓澄 一法(たいえんちょうかずのり)さん

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浄土真宗圓鏡山長慶寺 副住職 社会福祉士。一般社団法人メッター副理事長
障害者福祉、児童養護を経て現在は保育園園長を務める。2児の父。

お坊さんがこたえるQ&Aサービス「hasunoha」

心や体の悩み、恋愛や子育てについて、お金や出世とは、助け合う意味など、人生において誰もが考えることがらについて、いろんなお坊さんからの癒しや救いの言葉、たまに喝をいれるような回答を参考に、あなたの生き方をあなた自身で探してみてはいかがでしょうか。

http://hasunoha.jp/

hasunoha お坊さんお悩み相談室 (ShoPro Books)

サイトリリースから4年。hasunohaが書籍化されました。

恋愛、子育てなど日常に思うことから、生きる意味を問うものまで、「どうするべきか」ではなく、「どうあるべきか」をお坊さんと一緒に考えるきっかけにしてみませんか?

 

取材、文・長瀬由利子

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