災害をきっかけに注目度アップ!「乳児用液体ミルク」の販売はいつ?
2016年10月17日、菅義偉官房長官が「乳児用液体ミルクの解禁について検討する」と発表したことから、ママたちの間でも注目度が高まっている液体ミルク。海外では販売されているのに、日本では安全上の規格がないなどの問題で粉ミルクのみの製造・販売となっています。
きっかけは東日本大震災。フィンランド在住の日本人ママたちが発案
乳児用液体ミルクが注目されるようになったのは、2011年3月の東日本大震災がきっかけです。このときフィンランドに住む日本人のママたちの発案で東北に送られました。さらに2016年4月の熊本地震の際には、現東京都知事の小池百合子氏の働きかけにより熊本の保育園に届けるなど、大災害のときに非常に役立っています。
災害時は、普段母乳育児のママもショックやストレスなどから母乳が突然出なくなってしまうこともあります。お湯を沸かしたり哺乳瓶を洗ったりする清潔な水がないなかで、開封するだけで常温のまま飲ませられる乳児用液体ミルクが役立ったママも多いのではないでしょうか。
液体ミルクが普及しない理由について「制度より経営上の問題」
5月には、小池百合子東京都知事は「液体ミルクを考える会」を設立。自身のツイッターで
「液体ミルクについて考える会」を設立。小池から熊本被災地へのフィンランドミルクの配布実績と反響、末永さん(国内製造を求める署名活動に取組む)の報告。厚労、農水等からヒアリングしました。制度より経営上の問題か。今後も活動を続けます。 pic.twitter.com/PkgIyKeaDP
— 小池百合子 (@ecoyuri) 2016年5月25日
と語り、日本で液体ミルクが普及しない理由について「制度より経営上の問題」にあるのではないかと指摘しています。
現在、少子化により子どもの数が減っていることから、今後ミルク市場自体が縮小する可能性があること、粉ミルクに比べ、製造・配送コストがかかることなどの問題もあり、製造・販売にいたっていないのかもしれません。
都立の保育施設が買い上げる方法も
また小池百合子東京都知事は、8月に行われた毎日新聞のインタビューでは
「海外ではどの国でも作っている。国内でも製造してもらえるように、都立の保育施設が買い上げるのも方策だ。民間企業なので経営的に成り立つ生産ラインを確保しなければならない。粉ミルクは有事に使い勝手が悪く、哺乳瓶も煮沸できない。液体ミルクは常温で150日程度保存できる。都が(普及の)火付け役になれば。女性知事ならではの視点なのかもしれない」
と語っています。
粉ミルクを販売している森永乳業株式会社に問い合わせたところ、
「乳児用液体ミルクの研究については以前から研究を行っているものの、国内での規格基準が設けられてないため、製造・販売の予定はたっていません。しかし、熊本地震で海外の液体ミルクが配られたこともあり、必要性は感じています」
とのこと。乳児用液体ミルクについての研究はしているものの、すぐに実現するというわけではなさそうです。
海外では広く普及している乳児用液体ミルクですが、日本では、今ようやく少しずつ動き始めたところです。災害時以外でも、子どもを連れての外出や、深夜の調乳の負担が減らせるなど、日常生活での活躍も期待できます。また、調乳に不慣れなパパでも使いやすいということから、男性の育児参加にもつながるという意見もあります。実際の販売はまだ先になりそうですが、ママたちが声を上げることで1日でも早く実現させたいですね。
取材、文・長瀬由利子