【港区・清家愛区長】第3回 港区が若者を対象としたヤングケアラー実態調査を行った理由とは? | ママスタセレクト - Part 2

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【港区・清家愛区長】第3回 港区が若者を対象としたヤングケアラー実態調査を行った理由とは?

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子育てをしていると、「これって私だけ?」と感じることがありますよね。
家族のことは外から見えにくく、特に子どもが家族の介護やお世話を担っている場合、本人や家族にとっては当たり前のことに思えてしまい、なかなか周りに知られません。
こうした“見えにくい実態”を、行政がしっかり受け止め、支援につなげる取り組みが港区で進められています。そのひとつが、子どもが日常的に家族のケアを担う「ヤングケアラー」への支援です。今回は、港区長の清家愛さんに、その取り組みについてお話を伺いました。

「誰にも頼れない」と思う前に、声をすくい上げたい

──最近、「ヤングケアラー」という言葉を耳にするようになりました。具体的には、どんな子どもたちのことをいうのでしょうか?

清家愛港区長(以下、清家区長):ヤングケアラーとは、家族の介護その他の日常生活の世話を過度に行っていると認められる子どもをいいます。たとえば、病気や障がいのある家族のために掃除や買い物をしたり、きょうだいを保育園に迎えに行き、ご飯を作って寝かしつけまでしている子です。また、港区には外国籍や多文化背景をもつご家庭も多く、親が日本語に不慣れなために、病院や役所の手続きに子どもが通訳として同行することもあります。

本人は「当たり前のこと」と思っているかもしれませんが、それによって学校の友だちと遊んだり、勉強をしたりする時間がないこともあります。子どもが“子どもらしい時間”を持てていないとしたら、大人が気づいてあげることがとても大切です。

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港区が“全国初”の実態調査を実施した理由

──港区では、全国で初めて18歳〜39歳の若者を対象にしたヤングケアラーの実態調査を実施されたそうですね。

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清家区長:港区にはこれまでも、「誰にも頼れない」「助けてって言えない」といった若者たちの声が届いていました。ヤングケアラーの問題は、子ども本人や家族が「これが普通」と思ってしまって、誰にも相談できないまま抱え込んでしまうケースが多くみられます。

だからこそ、私たち大人が気づいてあげることが大切です。今まさにケアを担っている子どもたちだけでなく、今回の調査では、子ども時代を振り返ることができる18歳〜39歳の若者の声に耳を傾けました。そこから見えてきたのは、「早く気づいて、寄り添うこと」の大切さでした。

──どのような調査を行ったのでしょうか。

清家区長:今回の調査は、日常生活のなかで家族の介護やお世話を過度に行っている若者の実態把握を目的にしていました。早期に必要な支援につなげることを目指したものです。18歳~39歳の若者を対象に、「18歳未満のときに家族の介護やお世話をしていたか」「それについて、どういう影響があったか」などを調査した全国で初めての取り組みです。

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「困っていない」と答える子どもたちの本音

──調査からどんなことが見えてきたのでしょうか?

清家区長:友だちと遊ぶ時間がなかったり、勉強する時間がなくて進学を諦めていたり、仕事を常勤で続けられなかったりと、いろいろなところで人生に影響が出ているにもかかわらず、「ヤングケアラーという言葉を知らなかった」「自分がそういう存在だと知らなかった」「声をあげられなかった」という声が多く寄せられました。つまり、本当は大変なのに、そのことに気づけていないのです。そうした声をしっかり受け止めて、実態に合わせたきめ細やかな支援体制を整えています。
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──港区ではどんな支援体制があるのでしょうか?

清家区長:港区では「ヤングケアラー支援コーディネーター」を配置しています。これは、ひとりで抱え込んでしまいがちな子どもたちやご家族に、そっと寄り添う存在です。たとえば、ご家庭の状況やご本人の気持ちに合わせて、訪問支援や配食サービス、必要に応じて通訳のサポートまで。無理のないかたちで、必要な支援を確実に届けられるようにしています。

「知られたくない」気持ちにも、寄り添いたい

──支援を受けたいけれど、周りに知られるのが恥ずかしいと感じる子もいるかもしれません。

清家区長:「知られたくない」「言いたくない」も、大切なサインだと思います。港区では、本人の希望や思いを尊重した「気づく→つなぐ→支援する→見守る」という支援のステップを大切にしています。
保護者の皆さんも、「私が頑張らなきゃ」と思い詰めてしまうこと、ありますよね。
でもその頑張りが子どもに伝わり、子どもも頑張っているかもしれません。限界を迎える前に、どうか声をあげてください。その一歩が、同じように悩む誰かを救うきっかけになるかもしれません。私たち行政は、そうした声をきちんと受け止め、支援へつなげていきます。

※取材は2025年7月に行いました。記事の内容は取材時時点のものです。

取材、文・長瀬由利子 編集・いけがみもえ 撮影・編集部

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