【港区・清家愛区長】第2回 「頼れる人がいない」その声が制度を変えた。ベビーシッター利用支援制度
「急に保育園に呼び出された。でも今日はどうしても外せない仕事がある……」。そんなとき、“頼れる人”がいますか? 仕事と育児の両立に悩むママやパパは、全国にたくさんいます。港区では、そうした声を受けて2025年6月、「マッチング型ベビーシッター利用支援制度」がスタートしました。今回は、その背景や制度に込めた想いについて、港区長の清家愛さんにお話を伺いました。
使いたいのに使えない。港区が制度を変えた理由
──港区で“マッチング型ベビーシッター利用支援制度”がスタートしましたね。
清家愛港区長(以下、清家区長):「働くママやパパたちが、もっと安心して子育てできるように」という想いから、2025年6月から新たに「マッチング型」のベビーシッター利用支援を始めました。港区では、2023年に“派遣型”のベビーシッター利用支援を始めました。でもとても人気で、希望してもシッターの予約が取りにくい、急な依頼に対応できない、という声が多くありました。
ベビーシッターをもっと柔軟に、もっと選べるようにしてほしい。そんな利用者の方たちの声に応えて始めたのが、今回の「マッチング型」です。区が認定するベビーシッターのマッチングサイトで、自分に合ったシッターさんを探して予約できて、その後に補助を受ける形式です。
──利用できる時間の上限も増やしたそうですね。
清家区長:そうですね。特に障害のあるお子さんや多胎児(双子など)を育てているご家庭、ひとり親のご家庭に対しては、年間の補助上限時間を、これまでの144時間から288時間に大幅に引き上げました。
子育てと仕事をまわすだけで、毎日必死だった過去
──ベビーシッター利用支援制度は、すごく助かると思います。そのような制度は、以前はなかったですよね?
清家区長:わが子が幼い頃にはなかったですね。当時は、保育園にも入れず、幼稚園も空きがない。民間のベビーシッターはあったものの、けっこう費用もかかります。結局、児童館に通う毎日でした。
でも、雨の日にはその児童館にも行けない。「どうしたらいいんだろう」と一日がものすごく長くて。もう子育てだけでいっぱいいっぱい。働くどころではなかったです。
──わかります。私も似たような時期がありました。
清家区長:私は幸いなことに実家が近かったので、夫やその家族だけでなく、親や妹にも手伝ってもらってなんとかやってこられましたが、それでも本当に大変でした。幼稚園の送迎やイベント参加も、私と夫だけではなく、両実家の家族総出でした。
妹に遠足の付き添いをお願いしたら、妹が他の保護者の方に「今日はきれいね」って声をかけられたそうなんです。「いえ、妹なんです」って(笑)。そんなふうに、家族みんなで支え合って、なんとか子育てと仕事をまわしていました。
ただ、実家が遠かったり、場合によっては子育てと介護のダブルケアをしているママたちもいます。そういう現状を知って、少しでも“楽しくて幸せな子育て”ができるように、制度を変えていきたいと思いました。
ママたちの声には、社会を変えていく力がある
──この記事を読んで、「私も声をあげてみようかな」と思うママたちもいるかもしれませんね。
清家区長:そう思っていただけたら、本当にうれしいです。声をあげることで、少しずつでも社会は変えていけると思います。
これまで、待機児童の解消や学童クラブの整備などにも取り組んできましたが、それが実現できたのは、保護者の皆さんが「困っています」と声を届けてくださったからなんです。
社会とつながって、自分の思いを伝えること。たとえ小さな一歩でも、それが制度や仕組みを変える力になる。そうした実感こそが、民主主義を維持していくうえで大切なことだと思います。
──ママ世代は、子育てと仕事を両立しながら、毎日一生懸命に頑張っていますよね。
清家区長:本当にそう思います。ママたちは、慣れない子育てや、仕事、ときには介護も含め、毎日時間に追われながらも、子どもたちと真剣に向き合っていますよね。だからこそ、「こうなったらいいな」「こうだったら助かるのに」という気持ちがたくさん出てくると思います。その気持ちを、どうか声にしてください。それは、自分のためだけではなく、次の世代の子どもたちのためにもなる。ママたちの声には、社会を変えていく力があると思います。
──「まだ何もできていないけど……」という方にも、励みになりますね。
清家区長:最初の一歩は、本当に小さくて大丈夫です。「ちょっと言ってみようかな」とか、「誰かに相談してみようかな」でも十分です。諦めずに声をあげていくことで、真剣な思いは必ず周りの人の心を動かすし、きっと社会は変わっていくと信じています。
取材、文・長瀬由利子 編集・いけがみもえ 撮影・編集部
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