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<関税って結局ナニ?>もしあなたが総理大臣になったら日本をよくするために何をする? 第3回

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アメリカが日本に高い関税をかけると、いずれ日本の景気が悪くなり、国民の生活も苦しくなるかもしれません。これは今の日本が直面している大きな課題と言えるでしょう。加えて、昨今の物価高で家計が圧迫されている家庭も少なくないため、国は対策を求められています。消費税減税や給付金が議論されているのは、みなさんの記憶に新しいでしょう。
でも、今の状況を打開するには、もっと違う方法があるかもしれません。そこで、なかのアセットマネジメント代表・中野晴啓さんに、こんな質問してみました。
中野晴啓さん第4弾プロフィール

もし総理大臣だったら、日本をよくするために何をしますか?

――アメリカの追加関税や物価高など、今日本に住んでいる人たちは、不安を感じていると思います。給付金や消費税減税などの対策もあるのでしょうが、もし中野さんが総理大臣だったら、どんなことをしますか?
中野晴啓さん(以下中野さん):関税がかかると、日本企業は製品の販売数が一時的に減ってしまいます(第2回参照)。海外での販売が減るのであれば、日本国内での販売数を伸ばすことを考えますよね。これを内需と呼びます。
内需を支えるには、国民の消費が重要になってきます。でも昨今の物価高や給料もなかなか増えないことを踏まえると、「どんどんものを買いましょう!」というのはそう簡単な話ではないと思います。

――その手立てとして、「給付金」という手がありそうですが……。
中野さん:給付金は目に見えてお金が入ってくるので、ある程度ものを買うことにはつながるでしょう。しかしお金に余裕がある家では、給付金が消費に使われない可能性もあります。新型コロナウイルスが流行したとき、政府は国民全員に10万円を給付しましたが、「給付金をそのまま貯金した家庭もあった」とも耳にします。それでは日本の内需を支えることにはなりません。まして、現金を市中に供給すれば、経済理論上インフレを加速させます。給付金が物価高対策だとすれば、実に矛盾した政策だと言えます。

――昨今では「消費税減税」も話題になりましたが、こちらはどうでしょうか?
中野さん:消費税減税をすれば、会計時に支払う金額は減るため、今よりも消費は増えるかもしれません。しかし内需を支えるほどの効果があるかは疑問です。例えば消費税率が10%から5%になると仮定すると、消費者から見れば1,100円のものが1,050円になります。もちろんお財布から出ていくお金は減った方がよいですが、消費税減税による支払額の差は少なく、また税金を支払う点については同じ。消費が大きく膨らまないように思います。

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「ものを買おう」というマインドになるためには?

――中野さんは、国内の消費を伸ばすため、何をしたらいいと思いますか?
中野さん:今の日本の大きな問題は、可処分所得が減っていることです。可処分所得は、所得から所得税や社会保険料などを引いて、個人が自由に使える手取り収入のことです。これが増えないと「ものを買おう」という気持ちは起きないですよね。今は可処分所得が減っているので、消費を抑えている状況です。

――可処分所得を増やすため、何をしたらいいと思いますか?

中野さん:私ならば、毎月の手取りの金額を増やすために、今給料をもらっている人が支払っている社会保険料を減らします。社会保険料には健康保険料や厚生年金保険料、介護保険料などがあります。この負担を軽くすれば手取りの金額が目に見えて増えるので、消費をしようというマインドになるのではないでしょうか。
しかも消費税に関しては、社会保障に充てるために増税になった経緯があります。だとすると、消費税を減らせば社会保障の国民負担が増えるという矛盾が出てしまいます。実は日本の税収は、今インフレ率が上昇した分だけ増えているのです。ですから増収分を国民に還元するという財源で社会保険料を一定期間下げることはできるはずです。

―― 一個人が少々多く買い物したところで、景気に影響するようには思えないのですが、そんなことはないのでしょうか。
中野さん:個人の消費が伸びると、国内の産業は活性化されて、国内企業収益が改善されることで景気には確実に好影響です。そして日本の未来は個人の消費の質にかかっていると私は思います。もちろんなんでも欲しいものを買うということではありませんが、お金を経済の中に入れることはとても重要になってきますね。高いクオリティを求める消費が国内産業の力を上げることにもなるわけで、国内産業が強くなれば給料も上がって、その分経済が隆起される。その好循環を作れば日本の未来は明るくなるのです。

編集後記
個人が消費をしないのは、手元にあるお金が増えずにいることが大きな要因のひとつとのこと。社会保険料は必要であるものの、国民の負担を減らして手取りを増やすことができれば、消費マインドは高まっていきそうです。この議論をして決定していくのは国の役目ですが、国民としてこのような考え方や選択肢があることを知っているだけでも、世の中の見方が変わるかもしれませんね。

※取材は2025年7月に行いました。

取材、文・川崎さちえ 編集・編集部 イラスト・神谷もち

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