<関税って結局ナニ?>今さら聞けない関税の基本。そもそもなぜ必要なの? 第1回
2025年4月にアメリカのトランプ大統領が、世界に向けて追加関税をかけると発表しました。株式市場も大きく下落するほどの世界的な騒ぎに発展。日本に対して相互関税をかけるとのことですが、ここで疑問が。そう、そもそも関税って何だろう? どうして必要なの? ということです。関税が大きな話題になっている今でも、結局よくわからないという人もいるかもしれません。そこで今回は関税について、なかのアセットマネジメント代表の中野晴啓さんに解説していただきました。
ニュースで「関税」について聞くけれど、それって何?
――「トランプ関税」と言われるくらい、大きな話題になっている「関税」ですが、そもそも関税とはどのようなものなのでしょうか?
中野晴啓さん(以下、中野さん):関税は輸入品に対して課される税金のことです。アメリカが日本から輸入しているものにも、税金がかかっているんです。
なぜ関税をかけるのかというと、トランプ政権の場合は、所得税減税の財源にするという目的もあるようですが、通常の場合、関税を課す目的は、他の国で作られたものを輸入させにくくして、自国の産業を守ること。輸入する製品に高い関税がかかると、製品の価格を上げることにつながります。一方自国の製品には関税がかからないため、価格は上がりません。結果、国民は自国の製品を買うようになり、自国の産業や製品を守ることができます。
――アメリカ国民に国内で作られている製品を買ってもらう流れを作ろうとしているわけですね?
中野さん:そうですね。国内製品を買う流れになれば、アメリカ国内の企業は売上を増やすことができます。ところが例えば自動車のケースで見ると、最終製品は米国車であっても部品の多くが外国製なので、やっぱり輸入コストが上がって利益を減らすことになってしまいます。
あるいは、アメリカ国内で製造されるものを喜んで国民が買うかというと、必ずしもそうではなく、国内品よりはるかに質の良い輸入品もたくさんあります。例えば現在アメリカでは、自国の製品を使うように促すため、海外の鉄鋼やアルミニウム製品に対して追加関税がかかるようになりました。しかし海外の鉄鋼製品は丈夫で軽いなど、とても優れています。高度な技術を持って製造された海外製品の中には、アメリカがすぐには造れないというものも少なくないはず。そうすると米国内でも関税が価格に転嫁された高い輸入製品を買わざるを得ないという状況が考えられます。
アメリカ国内で作り、国内で消費するものは…あるの?
――アメリカが国内で製造して、アメリカ国民が消費できるようなものはあるのでしょうか?
中野さん:米国はIT・ハイテク産業に特化して、他の基礎的なモノ作り産業の多くから撤退しています。例えばお子さんが遊ぶおもちゃであっても、それらの多くは中国をはじめとした海外からの輸入品です。アメリカ国内でおもちゃを製造するという方針は、そう簡単に実現することではありません。ずっとおもちゃを輸入してきたわけですから、おもちゃを製造できる会社はほぼないでしょう。仮にあったとしても、中国から輸入したおもちゃと同じコストで製造できるかは疑問です。そうなると結局、輸入品に頼ることになってしまい、関税がかかる分おもちゃの価格が上がってしまいます。要するに関税により値上がりが起こり、そのコストは米国の消費者が負担することになるわけです。
――おもちゃに限らず生活用品すべてがこの状況だと、アメリカ国民の生活に大きな影響が出てしまいますね。
中野さん:アメリカは輸入大国だからこそ、高い関税をかけると国民への影響がとても大きくなってモノが売れなくなることになりかねません。だからといって輸入をしないとなると、今後は国民が必要とするものが国内に入ってこなくなってしまいます。どちらにせよアメリカ国民にとって辛い状況になってしまって米国経済が後退し、それが世界経済にも悪影響を及ぼすことが、今懸念されているのです。
編集後記
関税は自国の産業を守る意味もありますが、行きすぎた関税率になると国民の生活に大きな影響を与えてしまいます。アメリカの場合も例外ではなく、今回の追加関税で、ものの値段が上がってしまいそうです。追加関税がアメリカにとってマイナスになる可能性もあり、貿易相手である日本にも影響が出てきます。引き続き大統領の発言を注視しておきたいですね。
取材、文:川崎さちえ 編集・編集部 イラスト・神谷もち
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