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<関税って結局ナニ?>アメリカの追加関税で日本への影響は?物価高が続くの? 第2回

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アメリカのトランプ大統領が「すべての輸入品に追加関税をかける」と発表しました。関税は輸入や輸出に関わることで、関税率が上がると日本国内の製造にも影響が出てしまいます。実際にどのような影響が考えられるのか、なかのアセットマネジメント代表の中野晴啓さんにお聞きしていきます。

中野晴啓さん第4弾プロフィール

アメリカの追加関税、自動車産業への影響が大きい

――アメリカは日本にも追加関税をかけるとのことですが、日本国内への影響はいかがでしょうか?
中野晴啓さん(以下、中野さん):日本国内では自動車への関税が大きな影響をもたらすでしょうね。自動車は日本の産業を支える柱ですし、最大の貿易相手はアメリカだからです。
乗用車の場合、もともと相互関税として乗用車には2.5%の関税がかかっていましたが、追加関税として25%が上乗せされました。つまり27.5%の関税がかかっています。(2025年8月6日現在)

当面の間は、トヨタなどの自動車会社が追加関税分を負担する形で輸出をすると思います。すでに製造している自動車の販売数を落としたくないからです。でも関税を負担すれば、当然ながら自動車会社の利益は減りますから、国内の景気や株式市場にも影響が出てくるでしょう。
(※編集部注:2025年7月23日、自動車の関税率は15%で合意したとの報道がありましたが、関税の引き下げ時期は明確になっていません)

――自動車会社がいつまでも関税分をカバーできるかというと、そういうわけにもいかないと思います。いずれアメリカで販売される日本車に関税分が上乗せされて、価格が高くなるということですね?

中野さん:そうですね。しかし今回の関税率15%であれば、ある程度価格が上がったとしても、最終的には日本車の販売への影響は限定的となると想定しています。日本車はアメリカでも人気ですからね。日本の自動車会社の技術は高く、製造される自動車は米国車より燃費がよくて安全性も高い、そして乗り心地も好評価ですから。そのような快適な自動車を知っているアメリカ国民は、多少の価格上昇ならばまた日本車に乗りたいと思うのではないでしょうか。

――トランプ大統領は、アメリカで製造された自動車を日本が輸入をするように要望しているようですね?
中野さん:今もアメリカの車は日本で販売されていますが、今後劇的に輸入数や販売数を伸ばすのは難しいと思います。というのも、アメリカの車を日本で売るための企業努力をあまりしていない企業もあるからです。例えばハンドル1つとっても、アメリカで製造された自動車は左ハンドルが多いですよね。日本の道路を走るのであれば、日本車と同じように右ハンドルにした方が便利でしょう。一方、日本向けに右ハンドルにしている海外メーカーの自動車は、日本でも支持されて売れています。アメリカの輸入車の数を増やしたいのであれば、そのような企業努力をする必要はあると思いますね。

――食品メーカーでも同じようなことが起きそうですか?
中野さん:そうですね。食品に関しても、追加関税がかかります。アメリカでは日本の食品を輸入していますが、関税分を販売価格に上乗せしないと、企業の利益は落ちてしまいますね。でも商品価格を上げれば販売数も落ちてしまうでしょう。
自動車や食品など多くの企業の利益が落ちてしまうと、いずれ日本の産業界全体で収益力が落ち込む可能性があります。そうすると日本の景気が悪くなってしまいますよね。これは日本だけではなく、アメリカと貿易をするすべての国や地域で言えることです。

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トランプ関税は、日本にとってチャンスかもしれない?

――今後日本を含め世界はどのようになると思いますか?
中野さん:アメリカが関税率を下げたり撤廃したりしないのであれば、世界の国々は「どのようにしてアメリカ抜きで貿易をしていくのか」を考えるようになるでしょうね。そして一時的にダメージを受けた国内の産業を、どのようにして建て直していくのかも同時に考えるようになるでしょう。トランプ大統領の任期は4年ですから、この間に日本や世界は変化していくと思います。
これまではアメリカが貿易の中心になっていましたが、これからは大きく変わっていく可能性もあります。今がとても大切な転換点になっていると私は考えていますよ。

――日本にとっても決して悪いことではないということでしょうか。

中野さん:むしろ日本にとってはチャンスだと思います。過去30年、日本の産業界は世界経済の中でどんどん地位を落としてしまいました。「ものづくり日本」と言われ、高い技術もあるのですが、世界で競争力を充分に有している企業は減ってしまいました。しかしこれからは世界の秩序が変わるのですから、日本の産業を再構築していくチャンスではないでしょうか。このチャンスをモノにできるかどうかは、日本政府のこれからの舵取り次第です。日本の産業で対外競争力を有する範囲を峻別して、そこへの先行投資を重点配分するなどの思い切った判断が求められます。

編集後記
追加関税によって日本の産業にもダメージがありそうです。でも今は時代が変わっていくタイミングで、日本にとっては大きなチャンスと前向きに捉えることもできるとのこと。暗い話が多い中で、ほっとするようなお話だったのではないでしょうか。

※取材は2025年7月に行いました。

取材、文:川崎さちえ 編集・編集部 イラスト・神谷もち

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