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【障害のある人の仕事・第3回】「障害は個性」という言葉に疑問。個性は別のところにある

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前回からの続き。障害のある方がアートを通して仕事をする福祉施設「PICFA」。最終回となる第3回では、障害のある方、そしてそのご家族がより良く生きるために、施設長・原田啓之さんが伝えたいメッセージについてお伺いしました。「障害は個性」という言葉に疑問を呈する原田さんの言葉は、私たちに多くの気づきを与えてくれます。

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「障害は個性」ではなく、一人ひとりの「らしさ」を見つける

――障害のある方々が、社会で活躍していくために、必要なことは何だとお考えですか?

PICFA施設長 原田啓之さん(以下、原田さん):よく「障害は個性だ」と言われますが、僕は、それは違うと思っています。障害はあくまで特性であり、一人ひとりの個性は別にあります。自閉症だから、ダウン症だから、という枠にとらわれると、その人ならではの個性が見えなくなってしまいます。好き嫌いや個性はそれぞれにあるので、その人らしさを見つけて支援していくことが大切です。
たとえば、障害特性で視覚的に情報を処理することが得意な子もいれば、聴覚が敏感な子もいます。集中力が高い子もいれば、こだわりが強い子もいます。大切なのは、その子の特性を理解し、あとはその方の個性を知り、得意なことを伸ばしていくことです。

――得意なことを伸ばすのは大事ですね。ただ自分の力だけではできない、難しいと悩む親御さんもいると思います。

原田さん:親御さんの中には、「私がこの子を一生面倒見なければいけない」と考えている方もいるかもしれません。しかし親離れ子離れをすることで、お互いが楽になれるときもあります。グループホームや就労支援施設など、使えるサービスはどんどん活用して、お子さんが社会と繋がり、自立していくためのサポートをしてあげてください。そして親御さん自身も、ちゃんと自分のために時間を取って欲しいですね。

頼れるものは頼って、人生を広げていってほしい

――障害のあるお子さんを持つ親御さんに向けて、伝えたいことはありますか?

原田さん:子どもの人生を広げていくために、ワクワクドキドキしながらいろいろな可能性に目を向けてほしいです。「この子だったら、こんなお化粧をして銀座を歩かせてみたい」「もしかしたらモデルになれるかも」そんな風に、楽しい未来を描きながら、日々を過ごしてほしいですね。どうしても日々の生活や障害的な理由で諦めてしまうことが多い。でも、この子の人生を広げる可能性を家族だけでなく、施設や学校、いろんな人に相談しながら、ただ生きていくためにではなく、人生を広げるためにを思い描きながら保護者と子どもの人生設計を立てて欲しいと願っています。

――最後に、原田さんの今後の展望をお聞かせください。

原田さん:好きなことで働いて、お金を稼いで、お金を好きなことに使う、そういう自由があればもっと人生が広がる。障害のあるなしに関係なく、誰でもそういう自由があるべきだと思うんです。障害のある方も、その親御さんも、自分の人生を広げていって欲しい。そのためにPICFAをやっています。自分の人生を大事にするというビジョンを伝えていけるように、これからも活動を続けていきたいと思います。

編集後記:
原田さんのお話を伺い、「障害は個性」という言葉は、時に障害のある方をひとくくりにしてしまう危険性も孕んでいると感じました。
原田さんのように、「特性」の先にある一人ひとりの「個性」に目を向け、その人らしさを尊重していくことが、これからの社会には必要なのだと思います。

※取材は2024年6月に行いました。記事の内容は取材時時点のものです。

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取材、文・nakamon 編集・しらたまよ

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