弱ったスズメのヒナが道端に!「保護」から「別れ」までの記録
先日学校に用事があり、娘と娘の友達といっしょに下校したときのこと。子どもたちが、道端に転がるように落ちているスズメのヒナを見つけました。一見すると、もうダメかな? という雰囲気だったので「ああ、巣から落ちて死んじゃったんだね。かわいそうだね」といったら、子どもたちが駆け寄って見に行きました。
「生きてる! 目をあけた! かわいい!」どうしよう!? と私の目を見る子どもたち。
「動物病院に連れて行こうか」と私は言いました。 当初私は、『スズメは野鳥なので、捕獲や飼育をしてはいけない』ということを知りませんでした。ただ最初から、飼うという発想はなく、怪我をしているように見えたので、初期治療だけ動物病院で受けさせて、すぐに元の場所に戻そうと考えていました。
動物病院に電話
その日は、ふだん通っている動物病院はお休みだったので、スマホで鳥を扱う動物病院を調べて電話しました。すると「ああ、スズメは野生だから診れません。鳥獣保護センターに電話してください」とのこと。この時点で初めて、スズメは野生動物であり、野良猫や逃げてしまったインコなどを保護するのとは違うのだ、と思い知ります。
「鳥獣保護センター」に電話
次に鳥獣保護センターに電話。「スズメの子どもが怪我をして道に落ちていたので保護したのですが……」と言うと、こんな回答が返ってきました。
「スズメの子ども? 子どもっていいましたよね?
子どもはダメなんです。 親鳥が4、5日は子どもの声や場所を覚えていて戻ってくるかもしれないので、そのまま元の場所に戻してきてください」
けれども明らかに体が傾いていて羽根が片方機能していない様子。このまま元の場所に戻すと、確実にノラ猫かカラスの餌食になります。食い下がって「でも、サイズは小さいけど子どもではない普通のスズメかもしれません」と言ってみましたが、ダメでした。冷たいなあと思いましたが、この対応の理由は後でわかります。
一晩自宅で保護して病院へ、しかし……
けれどもその時点では無知だった私たち。かわいそうだから、翌日いつもの動物病院が開くまで一晩保護しようということになりました。 砂糖水をあげると、なんとか飲み込みます。しかし目はほとんど閉じたまま、一度も鳴き声を出さないし、かなり弱っている様子でした。 そして翌日、やっと動物病院に連れて行きました。「ああ、スズメ……。血はついているけど怪我は浅いからしてあげられることはないです。小鳥のエサを少し分けますからこれをあげてみて様子をみてください」と先生。帰宅してもう一度様子を見ることになりました。
しかしヒナは人間が与えるエサを受け付けてくれず、ずっと目をつむったまま、どんどん弱っていきます……。
その日の夜に命を終えてしまいました。ノラ猫やカラスにやられたかもしれないけど、もしかしたらあの場所に返してきた方が、親が戻ってきて助かる確率は少し高かったかもしれない。人間が助けてあげようなんて、おごりだったのかなあ……と反省と後悔の念が湧きます。
ごめんねと謝りながら、なきがらを元拾った場所のすぐ近く、木の陰の土に戻してきました。
スズメに兄弟がいた
次の日、スズメのなきがらを確認したかった娘と、現場を通りました。スズメの話をしながら歩いていたら、向こうから歩いてきたご夫婦が私たちの会話を聞いて「スズメ?」と話しかけてこられました。そんなにスズメに興味があるのかなあと思ったら、「ああ、この子は死んじゃったんだね」という話に。
実はこの道の近くで同時期にもう一羽保護されていたのです。そのスズメは保護したカフェの方たちの介抱でエサを食べるようになり、近所の公園にお散歩に連れていったら、ある瞬間、自分で飛び立ったのだとか。
兄弟は助かったんだ。良かった。と思う反面、私が保護したスズメに申し訳ない気持ちでいっぱいでした。もちろん最初に地面に落ちたときのダメージが違ったのかもしれない。同じ介抱をしてもダメだったかもしれない。後悔はつきません。
野生動物について、話し合おう
実は日本鳥類保護連盟では「ヒナを拾わないで」キャンペーンを実施しています。
ヒナは巣立ちヒナかもしれませんし、野生動物の子育てを邪魔しないよう、見守るというスタンスが大切ということです。ただし怪我をしている場合はこの限りではなく、一旦保護して各都道府県の野生動物を担当している部署に連絡して指示を仰ぐか、都道府県の許可を得て野生動物の保護を行っている動物病院に連れていく方法があるそうです。
傷ついた野生動物の保護については、いろいろな考え方があります。私の住む都道府県の鳥獣保護センターでは、「スズメのヒナなら元の場所に戻すこと」が原則だったのでしょう。
この一件で、私も子どもも、野生動物を保護することの難しさを学びました。日常生活で出会うであろう野生動物について、伝染病や寄生虫等の問題も含め、日頃からお子さんと話し合うことが大切なのかもしれません。
文・yuki イラスト・んぎまむ