わが子の発達障害を調べるうちに……もしかして親の私もそうかもしれない!?【発達障害は個性なの?】
「発達障害は個性なの?」答えはYesでもありNoでもあり、どちらでもない可能性があります。困りごとを抱えているのであれば「個性」という言葉では片付けられないし、困っていないのであれば「個性」なのかもしれません。
この記事では、発達障害の子育てをするなかで見えてきた、さまざまな悩みや問題・対処法などについて紹介していきます。今回のテーマは「大人の発達障害」についてです。
わが子のことを調べるうちに……もしかして私も発達障害?
わが子に発達障害であるという最初の診断が出たのは、保育所に通っていた4~5歳頃、2009年頃のことです。そこから筆者の発達障害に関する独学がはじまりました。
発達障害のわが子が今後向き合わなければならない現実や、困るであろうことはなにか。現時点で周囲とうまくやれていないことの原因や対策を知りたい。何を教え、どのように対処し、サポートしていけばいいのかなど……。不安の数だけ本を読み漁ってきました。何時間もネットの情報を追い続けていたこともあります。
わが子のためと発達障害について勉強を続けていると、ふと気がついたことがありました。本やネットに書かれている発達障害に関する文章のあちこちに、自分の今までの人生に重なる事象がたくさんあったのです。
気がついたことの答え合わせをしていくと、ひとつの仮説が浮かび上がりました。
「もしかして私も発達障害?」
人間関係で困ったこと、心や体に起こり続けた不調、理解してもらえないさまざまな思いや感情。小さい頃から今も続くさまざまな困りごとは、もしかしたら発達障害の特性と関係しているのではないかと気がついたのです。
本当に私も発達障害なのかと悩む日々
子どもが小さい頃は、なんとなく「もしかしたら私も発達障害なのかもしれない」と思うだけでした。わが子への対応に追われるばかりの日々が続いた30代~40代。自分自身に関心をもてるような余裕はなかったのです。
月日が流れ、子どもが高校生になり筆者も40代中盤に差し掛かった頃。子育てのしんどさが変化しはじめ、子ども中心ではなく、自分自身にも意識を向けられる余裕が出てきました。すると抱えて続けてきた日々の困りごとが、いつのまにか顕著に現れるようになっていると気がついたのです。
加速してひどくなっていく日々の困りごとについてよく考えてみると、月経前症候群(PMS)や月経中の不調ともよく似ていました。年齢的なことを考えると、更年期障害の影響を受けている可能性もあるのではないか。もしかすると今までの困りごとは、女性特有の現象や、加齢による現象があいまっていたのかもしれない。そのように考えると、今までの困りごとの数々は、本当に発達障害が原因なのだろうかと考えずにはいられなくなっていったのです。
読んでいた本に、認知症と発達障害の区別が難しいなどと記載されていることもあったので、ますます自分の困りごとの要因が見極められず、歳を重ねるごとに混乱していきました。
参考:月経前症候群(PMS)|女性の健康推進室 ヘルスケアラボ|厚生労働省研究班監修
※更年期障害:40歳代以降の男女に見られるさまざまな体調の不良や情緒不安定などの症状
参考:更年期障害|e-ヘルスネット(厚生労働省)
検査に踏み切れない理由
自分の生育歴や抱えてきた生きづらさ・困りごとは、発達障害が原因かもしれない。そのように考えると、非常に納得がいくことばかりでした。しかし本当に発達障害かどうかを判断するための検査にはなかなか踏み切れずにいます。
理由その1.検査や処置にかかる費用や時間の負担が大きい
検査をするにも投薬や検診を続けていくにも、お金の負担や相応の時間が発生します。費用と時間が、検査に踏み切れない大きな原因でした。
費用については、わが子にかかった発達障害の検査や処置の費用をもとに考えてみました。まず発達障害かどうかの検査を受けるための検査料が数千円程度。発達障害の診断がおり、日々の困りごとを解消するため、診察を受けたり薬を服用したりするとなれば診察料や薬代も発生するでしょう。遠いクリニックへ通うのであれば、通院費も出てきます。
子育てには何かとお金や時間がかかりますよね。筆者は子育てを最優先したいと考え、常々、自分のことよりも子どものために時間やお金を使いたいと考えてきました。そう考えるとなかなか自分の検査には踏み切れず、気がつけば40代後半。子どもももう高校3年生となっていました。
理由その2. はっきりさせたところで今さらどうなるのか
40代も後半に差し掛かり、さまざまな困りごとへの対処方法や諦め方もわかってきました。そうなると、発達障害かどうかをはっきりさせて今さらどうなるのだろうという思いも出てきます。
発達障害の検査を受け、診断がおりれば困りごとを軽減・解決できる薬が服用できるかもしれない。でも診断がおりないかもしれない。薬を飲めても合わない可能性もあると聞きます。なんとなくデメリットばかり浮かび上がってしまい、発達障害かどうかはっきりさせず曖昧なままでも大丈夫ではないかと考えてしまうのです。
わが子には、筆者が発達障害かもしれないという話は随分前からしてあります。検査も受けていないし、診断もおりてはいないけれど、筆者が発達障害かもしれないことをわが子は理解してくれているようです。
発達障害診断済みのわが子と、発達障害未診断の筆者。お互いの困りごとを共有し、解決策を一緒に考えたり、お互いができないことを補い合ったりしながらなんとか生活しています。困りごとはあるけれどなんとかのりきれる現状なので、ムリにはっきりさせる必要もないのです。
大人の発達障害、どこで診断できる?注意しておきたいことは
さて発達障害かどうかの診断を受けたい場合、大人でも子どもでも心療内科や精神科・精神神経科、発達障害を専門的に診る医療機関などで受診・相談できます。
ただ発達障害かどうかは、数値だけでわかることではないようです。「検査を受けたからといって、必ずしも明確な判断が出ないこともある」と、子どものかかりつけ医が話していました。
筆者の子どもを例にあげると、最初の検査では自閉スペクトラム症(ASD)と診断され、2回目は発達障害グレーゾーンで診断名がつきませんでした。3回目で注意欠如・多動症(ADHD)と診断されています。このように、医療機関やドクターによって見立てや考え方が異なり、1度で明確な判断が出ないケースもあるようです。
参考:厚生労働省|メンタルヘルス|こころの病気を知る|発達障害
大人の発達障害への対処は本人次第
発達障害のわが子のために何をしてやれるのか、何をしてやればいいのか。私はわが子に診断がおりる前も、診断がおりたあともずっと考え続け、サポート役に徹してきました。そのようななかで気がついた「自分も発達障害かもしれない」という現実。
「そうかもしれない」と思っても、さまざまな理由や事情・現状を踏まえると、検査を受けることをためらってしまう。もしかすると、筆者と同じような思いを抱えているママがどこかにいるのではないでしょうか。
自分が発達障害かどうかをはっきりさせるのかさせないのか、みなさんならどうしますか?
文・櫻宮ヨウ 編集・しらたまよ イラスト・Ponko