子どもは本当にお母さんが大好きなのよ。絵本『ぐりとぐら』の作者が贈る、育児書『子どもはみんな問題児。』
やんちゃすぎたり、聞き分けがなかったりするわが子に、ママとしての悩みは尽きませんね。でも、たくさんの子どもを見てきた元保母さん(今は保育士と言いますね。)に、そもそも「子どもはみんな問題児」ですから、と言ってもらえたら……ママはどんなにホッとできることでしょう?
絵本『ぐりとぐら』の作者が贈る、育児書『子どもはみんな問題児。』
『子どもはみんな問題児。』――このタイトルで、子どもについて書かれた一冊の本があります。著者は、発行から50年以上たつ今も、子どもの心を豊かにとらえる絵本『ぐりとぐら』のお話を作った中川李枝子さん。中川さんはその昔、17年もの間、子どもたちに真剣に向き合った保母でした。中川さんは、保母としての経験がなければ、『ぐりとぐら』シリーズをはじめ、『いやいやえん』・『ももいろのきりん』という作品も生まれなかったと語ります。
『子どもはみんな問題児。』は、子どもの”ありのまま”を見つめ、子どもに寄り添ってきた著者だからこその、育児のヒントが詰まった一冊。今回は、本書のはじめの見出し「お母さんが知らない、保育園での子どもたち」の内容を中心に、書籍紹介してまいります。ママたちが本書を手にとる機会となれば幸いです。
「どの子もみんなすばらしい問題児」の真意
まずは、タイトル『子どもはみんな問題児。』の真意を、中川さんは以下のように説明しています。
『子どもはみんな、問題児というのが、私の持論です。(中略)おりこうさんで、言うことがすぐにわかって、「はいはい」と言う子だったらつまらないではないですか。(中略)そもそも子どもというのは欠点だらけで、自分なりにいい子になっていこうと悪戦苦闘のまっ最中なのではないでしょうか』
子どもへの最高の褒め言葉は「よい子」でも「賢い子」でもなく、「子どもらしい子」だと豪語する中川さん。全身エネルギーのかたまりで、熱い両手両足で好きな人に飛びつく子どもは、世間の常識からはみ出ることは日常茶飯事、「問題児」とも言いたくなりますね。でも「だからこそ、子どもはかわいいのだ」と中川さんは自信たっぷりに断言します。
ママも知らない、子どもの愛しい姿
では、どんな風にかわいいのか? もちろんママの心の根本には、わが子を想う心があります。……が、子どもの行動や言動に、愛情が霞んで見えることもしばしば(泣)。中川さんは、ママが知り得ない保育園・幼稚園での子どもの愛すべき姿を、そっと教えてくれます。
「”お母さんのお腹には切った跡がある”って、それが自慢なのよ」
中川さんいわく、子どもの「お母さん自慢」にはキリがないそうです。「私、帝王切開で生まれたの」、「うちのママは盲腸を切っている」などと張り合う園児たち。いちばんすごかったのは、帝王切開・盲腸・胆石除去を経験したYちゃんのママだったそうで、
『Yちゃんはお風呂に入るたびにお母さんの三つの傷跡を眺めていたんでしょう。触って感心もしたのでしょう。大きくなって女医さんになりました。
お母さんの傷を見て、話を聞いて、友達に自慢した子がお医者さんになる。だから私は、どこのおうちでも気づかなくても早期教育をしているのよって言っています』
「お母さんのお弁当をどんなに喜ぶか見せてあげたい」
ママとしては面倒なお弁当作り。しかし、給食はなく、毎日お弁当持参という保育園に勤めていた中川さんは、ママが作ったお弁当のチカラを、よ~く心得ているようで……
『午前中はお母さんを忘れて夢中で遊んでいますが、お昼のお弁当で、それはもう嬉しそうに母のぬくもりを思い出すのです。
それは保母がお母さんに子どもを返す時間でもありました。
そしてお母さんの自慢話が始まるのが、とてもかわいい』
そんな子どもの姿をママにも見せてあげたい、とも綴られていて、これからのお弁当作りのモチベーションが、ぐっと上がる気がしますね。
「ナンバーワンは、お母さん」
苛立ちが募り、つい子どもにきつく当たる自分に、母親としての自信をなくすこと、ありませんか。自信のなさゆえ、悪いループにはまることもあったりして……。そんな自分に中川さんの言葉が胸に沁みます。
『保育園で子どもを注意するとき、「そんなことをしたらお母さんが悲しむでしょう」というのがいちばん効きました。それは男の子も女の子も同じ。
自分の好きな人を悲しませるわけにはいかないのです。
そうやって子どもたちは、お母さんを通して世の中の大事なこと、いいことを覚えていくようです。ですから、私はお母さんはどこまで知っているかしら、こんなに子どもに愛されて幸せねと思っていました』
子どもの本質と中川さんの保育観に、育児を学ぶ
『子どもはみんな問題児。』の始めの部分をご紹介いたしました。中川さんの子どもたちへの愛情と観察眼は、豊かな経験と保育観となり、私たちママのエネルギーになる気がしますね。そんな中川さん、本書の中盤から終わりにかけては、引き続き子どもの本質をとらえながら、育児のヒントを随所に散りばめてくださっています。小見出しとしてご紹介すれば、「子どもはすばらしい先生です」・「”読み聞かせ”でなく、子どもと一緒に読む」・「子どもとつきあうには石頭ではだめ」などなど、日々の子育てに生かせる内容であること、請け合いです。
中川さんが本書の最後で、念を押すように書き綴るのは、
『子どもは本当にお母さんが大好きなのよ』
私たち親子を、あたたかく真摯に見守る中川さんの文章は、ママたちの育児に向かう心をいっそう強くしてくれるのではないでしょうか?
著者:中川李枝子
価格:本体1000円+税
発売日:2015年3月27日
出版社:(株)新潮社
文・福本 福子 編集・山内ウェンディ