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近所の人と顔見知りの環境が安心した子育てに繋がる。芸術と人情味あふれる街「台東区」の魅力とは【東京・台東区】

台東区1

上野、浅草、谷中など日本を代表する観光地が集積し、国内外問わず多くの観光客でにぎわう街、台東区。三社祭や隅田川花火大会、入谷朝顔まつりなど、祭りが盛んなことから、ご近所同士のつながりが深く、人情味あふれるところが魅力です。さらに、数多くの芸術家を輩出している東京藝術大学があることや、東京国立博物館、国立西洋美術館など日本屈指の美術館が多く、子供たちは幼少期から芸術に親しむ機会があふれています。そうした台東区の子育て支援などの取り組みについて、服部征夫区長に伺いました。

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「ゆりかご・たいとう面接」で不安解消。1万円相当の「こども商品券」贈呈も

――台東区では、子育てをするママやパパに対して、どのような支援を行っているのでしょうか?
服部区長:
安心して子どもを産み育て、子育ての喜びを実感できるように、妊娠期から子育て期まで切れ目のない支援を行っています。その1つに「ゆりかご・たいとう面接」という妊婦面接を実施しています。現在は核家族が多いですが、妊娠しても身近に相談できる人がいないと不安になりますよね。そんなときに、専門知識のある保健師や助産師と面接をすることで、妊娠期や出産・初めての育児に対する不安が和らぐのではないかと思い、平成28年4月1日から始めました。

「面接を受けて、子育てに関して分からないこと、不安に感じていたことを解消できた」などの声をいただいているほか、30分ほどの面接を終えたあと、1万円相当の「こども商品券」をお渡ししているため、ママたちからは非常に喜ばれています。

――妊婦さんからはどのような質問を受けることが多いですか?
服部区長:
「妊娠中の食事や運動は?」「保育園の申し込みはいつのタイミングでしたらいい?」「出産後、上の子にはどのように接したらいい?」「出産後、子育てを手伝ってくれる人が近くにいない場合、どうしたらいい?」などです。核家族化が進むなか、保健師や助産師が相談に乗ってくれるというのは、心強いと思います。面接の実施率は開始当初から85%と高い結果が出ています。

歯科健診を受診した6割の妊婦が歯周病やむし歯など治療が必要だった

――「妊婦歯科健康診査」も実施しているそうですね。
服部区長:
妊娠期はホルモンの変化などもあり、むし歯や歯周病にかかりやすくなります。重度の歯周病にかかると、早産や低出生体重児出産のリスクが高まるといわれています。
そのため妊婦さんには、歯科健康診査の受診票を1枚お渡ししています。以前は保健所などの限られた場所でしか受診できなかったのですが、区内170ほどある歯医者さんで受けられるように改善したところ、受診率が上がりました。

――どのくらい受診率が上がったのでしょうか?
服部区長:
平成28年度は191人の受診者だったのが、平成29年度は618人にまで増えました。さらに、受診した妊婦さんの6割が歯周病やむし歯など治療が必要だったのです。出産後は歯医者さんに行く時間が取りづらいことを考えても、実施してよかったと思います。ママ自身が自分の歯の健康について考えることで、これから生まれ育っていく子どもたちの歯のケアにもつながっていくのです。

出産後のママと赤ちゃんを支援する「産後ケア」「こんにちは赤ちゃん訪問」「予防接種事業」

――出産後にはどのような支援が受けられますか?
服部区長:
出産後の支援として、「産後ケア」「こんにちは赤ちゃん訪問」「予防接種事業」などがあります。

「産後ケア」は、「宿泊型サービス」と「外来型乳房ケア」があり、産後4か月未満のママと赤ちゃんが対象になります。
外来型乳房ケアは、主に乳房マッサージや母乳に関する相談などを行っています。宿泊型サービスの場合は、1回の出産で7日まで利用できます。日額の正規利用料30,000円のうち台東区が25,000円負担するので、自己負担額が1日あたり5,000円となります。7日を複数に分けて利用することも可能です。

――それぞれ何カ所ずつありますか?
服部区長:
「宿泊型サービス」(※1)「外来型乳房ケア」(※2)ともに4カ所ずつあります。大変人気で、区内の助産院だけでは予約が取りづらいということで、4月から、ご協力いただける助産院を2カ所追加しました。

(※1)永寿総合病院、吉田産婦人科医院、 八千代助産院(文京区)、 荒木記念東京リバーサイド病院(荒川区)
(※2)にしやま助産院、とりこえ助産院、おひさま助産院、八千代助産院(文京区)

転出先への連絡まで行う「こんにちは赤ちゃん訪問」

――「こんにちは赤ちゃん訪問」とはどういった支援ですか?
服部区長:
産後4か月未満の赤ちゃんがいる家庭を、保健師や助産師が訪問し、子育てのことやママの体調等に関して不安や悩みがないかなどを伺います。

利用したママたちからは「家族以外の人と話ができて、ストレス発散ができた」などの声をいただいています。また訪問を受けていない方が台東区から転出する場合、引っ越し先でもスムーズに生活できるように、転出先の自治体にサポートしてもらえるように連絡をしています。

パパも対象に。風しん対策の助成範囲の拡大で接種人数が増加

――定期予防接種以外の「予防接種事業」もされているそうですが、どのような助成をされているのでしょうか?
服部区長:
台東区では、麻しん風しん予防接種を法定期間内(※3)に接種できなかった方を対象に補助を行っています。
また、これまで先天性風しん症候群(免疫のない女性が妊娠初期に風しんに罹患すると、風しんウイルスが胎児に感染して、出生児に先天性風しん症候群と総称される障がいの発生を防ぐため、妊娠を希望する女性を対象に、風しんの抗体検査と麻しん風しん予防接種の助成を行ってきました。平成30年度からは対象を女性と同居するパートナーまでに広げて、風しんの抗体検査と予防接種が無料で受けられるようにしました。

――予防接種を受ける人は増えましたか?
服部区長:
増えましたね。平成29年度が全体で150人だったのに対して、平成30年の4・5月の2か月間で、すでに250人が予防接種を受けています。それだけみなさんの関心が高いということがよくわかりました。

(※3)第1期(1歳から2歳の誕生日の前日)、第2期(5歳以上7歳未満で小学校就学前の1年間)

おもてなしの心と命の大切さを育む「花育」とは

――「花育」(はないく)ということをされているそうですね。これはどのような取り組みですか?
服部区長:
「花育」とは、安らぎや癒し、元気や豊かさをもたらしてくれる花の素晴らしさを、子どもたちがしっかりと心に受け止めるような教育活動を充実させていく取り組みです。例えば、幼稚園や保育園では、子どもたちが花を育てることにより、その変化と成長への気づきを学びます。小中学校では、学校の前や校内に四季折々の花を育てて、地域の方々と、来校される方を花でおもてなしをします。また、この活動は、子どもたちだけで行うのではなく、保護者や地域の方々が一緒になって行います。花の育成や花壇の維持管理などを共に行うことで、家庭はもちろん、学校・園・地域の中で、いきいきと育つことのできる環境をつくっていきたいと考えています。
大切に育てている花が咲いたら嬉しいし、しおれたら心配するし、枯れたら悲しい。花を育てることで命を育てることの大切さに気付き、家族・地域が一緒になって行うことで、その絆を深めてほしいですね。

美術や音楽などを通じて「子どもの感性」を磨く

――東京藝術大学の学生による授業・部活動での指導が実施されるなど、文化的活動にも力を入れていますよね。
服部区長:
そうですね。台東区には、数多くの芸術家を輩出している、東京藝術大学がありますから、その学生さんを区立の小・中学校に派遣していただき、専門的なアドバイスを受けています。美術の面では、児童・生徒が学校行事である展覧会に出展する作品を制作するにあたって、その作成期間、授業での指導補助をお願いしています。音楽の面では、東京藝術大学の奏楽堂にて、演奏会や楽器・曲目の説明を受けることのできる「音楽鑑賞教室」を開催しています。
こうした取り組みにより、子どもたちの美術や音楽面での技術の向上や、芸術に対する興味・関心を高めています。

百人一首や将棋などの遊びが人気。子どもたちの放課後活動

――核家族化が進むなか、子どもの居場所が少なくなっているといいます。放課後、子どもたちが過ごす場所はありますか?
服部区長:
「こどもクラブ」「放課後子供教室」という2つの居場所作りを実施しています。「こどもクラブ」は、一般的には学童保育と呼ばれるものです。通常夕方6時までの預かりですが、最大7時まで延長できます。

現在「こどもクラブ」は区内に23施設(※4)あり、小学校5・6年生を対象にした障害児保育対応の「こどもクラブ」は、11施設あります。ともに、平成31年2月に1施設拡大して実施していきます。

(※4)うち1施設は、施設改修中のため休止。

――「放課後子供教室」は、どのような事業ですか?
服部区長:
「放課後子供教室」とは、親の就業に関わらずだれでも学校施設を活用した交流活動に参加できるという事業です。夕方は4時45分までですが、夏休みなどの長期休暇中も利用できます。

保護者からは「学校内で過ごしているということで、非常に安心できる。仕事や介護などに専念できる」と喜ばれています。年間800円の保険代はかかりますが、費用は無料。地域の交流の場にもなっています。

――どのような活動内容ですか?
服部区長:
地域の人が来てサッカーを教えてくれたり、ドッヂボールをしたり、百人一首や将棋なども人気ですよ。学力・体力の向上につながるようなプログラムや自由遊びを取り入れていて、子どもたちはイキイキと活動しています。

「奨学給付金事業」で高校進学をサポート

――その他、台東区独自の支援があったら教えてください。
服部区長:
平成30年度から、高等学校等の進学者に対して入学にかかる費用の一部を助成する「奨学給付金事業」をスタートしました。高等学校等への進学時には、入学金・制服購入など、保護者に一時的な負担がかかります。そうした経済的な負担を軽減するために、保護者の家庭環境、経済状況に応じて奨学金を給付します。

地域みんなで子どもたちを見守り、子育てしていく

――最後に子育てするママ・パパたちにむけてメッセージをお願いします。
子どもは、国の宝、輝かしい未来への希望です。子どもたちが、よりよい未来を切り開けるように環境を整えることが大切だと考えています。また、妊婦さん、子育て中の方が子育ての喜びを実感できるまちであることが重要です。幸い、台東区には、ご近所同士深いつながりがあり、地域で子どもたちを見守る環境が整っています。
私は、子どもの幸せを第一として、すべての子どもと子育てを支え、見守るまちであるように、これからも支援、環境づくりに全力を尽くしてまいります。

取材、文・長瀬由利子 編集・北川麻耶

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