「赤ちゃんのだ液」が指令を送る!?母乳が赤ちゃんの免疫と関係しているワケ
ちょっと理系な育児のsumireです。母乳育児の知られざる新情報が詰まった本の出版を記念しての連載、今回は、母乳の赤ちゃんを守るための仕組みについて、書籍から一部ご紹介したいと思います。
みなさんは、母乳には免疫物質が含まれているとは知りつつも、「母乳の免疫は初乳だけ」「先進国は衛生的で感染症になりにくいからメリットは小さい」などと聞いたことがないでしょうか?
しかし、実際は、赤ちゃんの月齢や清潔な環境に関係なく、赤ちゃんを守るための驚くべき仕組みが働いていることが明らかになってきました。
母乳は細菌やウイルスへ対抗する免疫を補う
「私たちは、日々、細菌やウイルスに囲まれながら生きています。大人は、成熟した免疫システムのおかげで、病気にならずに済んでいます(あるいは病気からスムーズに回復することができる)。母体で作られたさまざまな免疫物質は、母乳中にも出てくることが分かっています(P146)。母子は同じ細菌やウイルスに囲まれていることが多いので、赤ちゃんがまさに感染しつつあっても、母乳を飲むことで、それに対抗できる免疫物質をどんどん補給することができるのです。」
『ちょっと理系な育児 母乳育児篇』p.138より抜粋
母乳が赤ちゃんへ抗体を届けられるきっかけは「赤ちゃんのだ液」
「免疫細胞の多くは小腸に集中しています。母体には「乳腺—腸管リンク」といって、母乳を作る乳腺組織と腸管の免疫細胞が、情報を簡単にやり取りできるメカニズムがあります。そのおかげで、もし、ある細菌に赤ちゃんだけが接触し感染した場合、授乳をするたびに、赤ちゃんはだ液を通じて細菌の情報を母体に伝え、お母さんは自身の免疫システムを使って素早く抗体を作り、作った抗体を今度は母乳と一緒に赤ちゃんに供給することができるのです。」
『ちょっと理系な育児 母乳育児篇』p.138より抜粋
母乳の免疫物質は、赤ちゃんにダメージを与えずに細菌やウイルスをやっつける
「私たちヒトが何らかの細菌やウイルスに感染した時、免疫システムの活性化にともなって、発熱や痛みなどの炎症が起こることがあります。しかし、母乳に含まれる免疫物質は、赤ちゃんに炎症を起こすことなく、穏便に敵を殺したり、さりげなく敵を一網打尽にするお手伝いをしたりしています。」
『ちょっと理系な育児 母乳育児篇』p.138より抜粋
赤ちゃんを守る免疫の効果は、母乳を飲ませる間ずっと続く
「乳幼児の免疫システムは未熟で、2~6年くらいかけて成熟していくようです。その間、母乳が赤ちゃんの免疫システムを補う役割を担っていると研究者たちは考えています。母乳を飲ませるだけで、大人の力強い免疫システムを、簡単に赤ちゃんにも貸し出すことができるなんて、とても心強いですね。」
『ちょっと理系な育児 母乳育児篇』p.138より抜粋
一般的には、1歳を過ぎると母乳のメリットはなくなると思われていますが、実はそんなことはないようです。
他にも、書籍には母乳についての知られざる新情報が満載です。そちらもぜひのぞいてみてくださいね。
ちょっと理系な育児 母乳育児篇
作:牧野すみれ
出版社: 京阪神Lマガジン
文・sumire イラスト・藤森スズメ