【算数・国語のプロに聞く!第3回】国語の点数が伸び悩む子のための「国語力の上げ方」
前回からの続き。小学校に入ると1年生から学ぶ「国語」。漢字や慣用句を習ったり、物語を読んで登場人物の気持ちを語ったり状況を説明したり……そんな国語が苦手なお子さんに悩んでいるママもいるでしょう。今回は「音読道場連盟」代表でもある前田先生に、国語が得意になるやり方を教えてもらいました。まずは国語でよくある悩みから答えていただきます。
国語のよくある悩み1.問題文を読むことに時間がかかってしまう
――国語の文章問題を上手に解くには、どのようなやり方をすればいいのでしょうか?
前田大介先生(以下、前田先生):「文章問題は 『問題』だから、文を読むのが目的ではないよ」と子どもたちには伝えています。子どもたちのなかには、本みたいに、普通に読んでいる子がいます。でも試験なのだから、解かなきゃいけない。だからはじめに「これは解くのが目的だから、楽しむためにやるんじゃないよ」と教えます。
――具体的にはどのような順番で進めていけばいいですか?
前田先生:まず設問を確認して、読みながら解きます。理想は、1回読んだ時点でほぼ設問が解き終わっている状態にしたいですね。国語が苦手だという人は2回も3回も問題文を読み、設問を見てはまた問題文を確認して、を繰り返しているんです。それだと問題が多い場合には時間が足りなくなってしまいます。だから「解くために読む」という方法は知ってほしいですね。
――最初に設問を読むときに、どのようなことを意識すればいいでしょうか?
前田先生:国語は、あまり問題のパターンがないのです。指示語問題、どういうことか答える、○○の理由を答える、全体を総括した文を選択肢から選ぶ、などの問題がほとんどです。まず設問で聞いていることを確認して、設問になっている箇所の前後を注意しながら読み進める。答えが含まれる箇所をメモしたりマーキングしたりしてわかりやすくしておくと、解きやすいです。「この文章で作者は何がいいたいのか、次から選びましょう」というような選択肢の問題は、選択肢のおかしな部分を見つけることを意識すると、ゲームのような感覚で解けますね。
国語のよくある悩み2.ケアレスミスが多い
――ケアレスミスやちょっとした間違いを減らす方法はありますか?
前田先生:ケアレスミスはヒューマンエラーですから、ゼロにはならないですよね。間違いを減らすためには、「なんでここを間違えるのかな? ちょっと考えてみたいね」とママが子どもに聞いてみたらいいのではないでしょうか。子どもはきっと、最初はなぜ間違えているのかわからないんですよ。
――親目線だとつい、子どもがもっと気を付ければいい話だと思ってしまいますが、ちゃんと話すほうが良いのですね。
前田先生:間違えた原因だと親が思っているところ、子どもの反論も含めて、親子みんなが話すことが大切です。家庭教師をしていたときは、国語の読解に限らず、何か問題があれば、僕が第三者として参加して、パパも呼んで全員で対話することがありました。親同士、親と先生だけでしゃべると、子どもからしたら「私抜きで勝手にしゃべっているから、私は関係ない」という立ち位置になってしまう。結果、子どもの意思が育ちにくくなります。全員が同じ立場で話し、共通認識を持つことはとても大事です。
国語力の向上に必要なことは「言葉への敏感さ」
――根本的に、国語の力を上げるにはどうすればいいのでしょう?
前田先生:言葉の一音、一音に対して敏感さがないといけません。算数の文章題に対しても同じです。「5分の2」と聞いて、何が分母で分子なのかを判断できないとすれば、言葉を数式に言い換えられていないということ。言葉への敏感さが足りないのだと思います。言葉に敏感になるためには、家で音読するといいですよ。はじめは一音、一音ちゃんと丁寧に読み、それから速く読むトレーニングをしていくといいですね。
――前田先生は、塾講師としてどのような指導をされているのですか?
前田先生:僕らの運営する「音読道場」では、一音一音、母音と子音を発声することから始まり、はっきり日本語を発話して、そこから古典文を音読していきます。『算数が苦手でもだいじょうぶ! 小学生のための魔法の暗算術「ぶんかい算」の本』の監修をした松永暢文が作った方法で、作ってから20年くらい経ちます。音読自体が効果的であることはすでに科学的に検証されていますが、僕たちの音読の方法がどのように効果的かまだ科学的にはよくわかっていません。しかし、本をたどたどしく読んでいる子でも、この方法を使うと国語ができるようになります。
――具体的にはどのようなことをするのですか?
前田先生:古文から現代文までのテキストを選びます。まずそれを一音一音切って読むんです。たとえば古今和歌集だと、最初に「やまとうたは、人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける」とあるのですが、これを「や、ま、と、う、た、は」と切って読む訓練をしています。それからステップバイステップで、速く読めるように訓練していきます。
――訓練になぜ古文を使っているのですか? 少し難しい気もしますが……。
前田先生:百年、千年と長く読まれているということは、たくさんの人が真似したから残っていると思うのですよ。真似されたものは、無意識にみんなの文章のなかに隠れていますし。古文はその源流で、読んでおく方がいいと考えています。
もちろん、勉強全部に共通することですが、たくさんやらせるとやっぱり子どもはイヤになっちゃいます。それぞれの年齢で、やりこなせるくらいの最低限の量がいいですね。古典の良文だとたくさん読まなくても真髄を肌で感じられます。国語嫌いの子はたくさん読めないから、古典の良文がぴったりなんです。
――とはいえ、古文はなじみがなくてイヤがる子もいませんか?
前田先生:ほとんどいませんね。大人向けにも音読をおこなっていますが、むしろ「古文は嫌い」と大人に言われることの方が多いです(笑)。よく学校の古文の授業はつまらなかったと言っている方がいますが、そういう印象なのかもしれませんね。
勉強を嫌いにならないようにするために
――前田先生は3人のお子さんのパパということですが、子育てのポリシーはありますか?
前田先生:子どもが集中しているときに邪魔しないようにしています。学校に行くのを忘れるくらいのときもあります。ただこれは大変なので、あまり人にはおすすめできません(笑)。でも集中する環境は大事という意識は、変わらずもっていたいですね。
――最後に、ママたちへメッセージをお願いします。
前田先生:子どもたちが勉強嫌いにならないように育ててほしいです。そうはいっても、勉強に対してコンプレックスを抱えてしまうのは、普通にあることだと思います。もし子どもが勉強に対してコンプレックスを持ってしまったら、「親子で対話できる時間ができた」と考えてみてください。子育ての時間は、人生100年のなかで見ると限られているもの。あまり深刻にならずポジティブに考えれば楽しく子育てができると思います。
(編集後記)
幼児の頃から言葉に敏感になるよう、一音一音大切に音読することが大切だと前田先生は言います。ママやパパが子どもと本を一緒に読むときは、丁寧に音読してあげるといいのかもしれません。とにもかくにも勉強は、親子で対話することが大事だそう。勉強する子どもに、ママやパパが明るく元気に寄り添ってあげることが一番なのでしょうね。
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