【後編】<あえて声を大にして言いたい>もっと園や学校の先生たちとコミュニケーションを取りた~い!
前回からの続き。「ママたちが園や学校の先生に対してすごいと思うところ」をママたちに聞いた今回の座談会。園や学校現場で「すごい!」と思うことだけでなく、家庭などプライベートとの両立が大変だろうと先生たちを思いやるシーンもありました。お喋りはさらに進み、ママたちの心にある“願い”が生まれてきたようです。
【今回の座談会のメンバーはこちら】
田崎さん:小学校高学年の男の子ママ。息子さんが低学年のとき不登校に。不登校明けの3ヶ月間、毎日一緒に登校して授業中も付き添い続けた経験がある。祖母が元小学校教員。
上岡さん:社会人の息子、高校生の娘がいる。息子さんの不登校をきっかけに、不登校の子をもつママの会を主催したことも。自身の両親が、ともに中学校教員。
林さん:中学生&小学校高学年の男の子きょうだいのママ。小学校の近くに住んでいて、先生たちの残業を目にすることが多い。
佐野さん:大学生の息子と、高校生の娘を持つ転勤族ママ。地域や学校によって異なる教育環境に驚くこともたびたび。
中里さん:小学校低学年の女の子ママ。先生との距離感が密だった幼稚園と違い、先生と話す機会の少ない小学校の環境に戸惑い気味。
先生が思っていること、考えていること、もっと知りたい!
上岡さん:先日、娘が学校の宿泊学習に行ったんです。宿泊学習中はクラス単位じゃなくて、グループに分かれて行動が多くて。その予定表を私と一緒に見ていた元教師の母が「これ、先生大変だわ」って。
林さん:え? 子どもたちだけで動くなら、先生は楽なんじゃ?
上岡さん:そう思うでしょ? でも子ども同士で行動させるっていうのは危険もあるし、事故も多いし目配せも必要だから、その分ものすごく安全な措置を先生が考えないとできないことらしい。
中里さん:でも子どもたちは、クラス全員で列になってズラズラ歩くよりはグループで回る方が楽しいよね。
上岡さん:そういう先生の苦労とかって親も子も知らないじゃないですか。先生としたら大変なことでも、子どもたちのためを思ってやってるとか。
佐野さん:そのグループワークの大変さみたいな話って、教師のなかでは当たり前の話だけど、私たち親のなかでは当たり前じゃないもんね。
上岡さん:学校のシステムとか、もうちょっと学校の先生がどんなところが大変っていうのが、世間にどんどん出ていけばいいですよね。
田崎さん:それを聞いたうえで親が先生に「この意見は言いたい」もあるだろうし、「だったらここは手伝える」もあるだろうし。
知らないことを察するのは難しい
たとえば育児の大変さを知らない旦那さんに、妻が「言わないでも察して」と望んでも難しいように、先生たちの教育の意図や大変さを親が察するのは難しいですよね。もちろん先生たちが親に「察して」と要求することはないですが、もっと教えてほしい……というのもママたちの正直な気持ちのようです。
先生とコミュニケーション、取れてる?
田崎さん:息子の不登校をきっかけに、私も3ヶ月間息子に付き添って学校で過ごしたり、先生とお話することが増えたりして。そこで大前提として知っとかなきゃいけないなと思ったのが、先生が子どもを見るときの時間軸と、親がわが子を見ているときの時間軸が違うっていうことなんです。
佐野さん:ん? どういうこと?
田崎さん:先生って、4月の始業式から翌年3月の修了式までの1年間で子どもの成長プランを組んでいるらしいです。でも親って、1年間で子どもの成長を考えることってなかなかない。子どもに悪いところがあったらすぐ直したいし、親は何かと焦りがち。
林さん:なるほど。
田崎さん:子どもに何か嫌なことがあったりとかするときも、先生は1年間かけて取り組んで、1年後に子どもが成長してハッピーになるように指導してるみたいなんです。それを親が知らないから、親と先生の感覚が何かずれているって感じることも出てくるのかも。親の考え方と先生の考え方、どっちがいい悪いじゃないんですけど、まずは互いの理解が必要。
中里さん:互いに理解したうえで話をしないと……ってことですね。
上岡さん:私は学校に行かない子どもたちのお母さんの会を主催してたときがあるんですけど、そのときは学校の先生とうまくいかないっていうお母さんたちの声が多くて。
田崎さん:私も息子に付き添って学校に通うようになるまでは、先生に不満しかなかったですよ。なんか「わが子を人質に取られてる」みたいな感じで。先生の機嫌を損ねたくないし、関係をうまくやりたい。だけど先生がやってることとか対応には不満だらけだった。でも3ヶ月間1時間目から放課後までずっと先生を見てたら、そうは思えなくなったんです。
上岡さん:私も結構先生と仲良くなって “人として付き合うようになった”あたりから、自分の「先生に対する見え方」が変わったような気がします。
佐野さん:何かきっかけがいるのかな。ほら今は先生たち忙しいから、学校によっては「先生たちとあんまり連絡取らないでください」みたいな指示もあったりするって聞くし。
中里さん:子どものために先生とやりとりしたいと思ったとして、どうやって先生とコミュニケーション取ったらいいんだろう。
コミュニケーション不足が、関係を難しくする場合も……
「わが子を人質に取られてる」という感覚が親のほうにあるとすれば、先生に正直な気持ちは話せませんよね。「学校の先生」と聞いただけで、どこか身構えてしまう人もいるかもしれません。けれど先生だって、一人の人間です。「人と人」というフラットなスタンスでコミュニケーションをしっかり取れれば、もっと互いに理解が進むはずですが……。
先生の負担を増やさずにコミュニケーションをとる方法は?
林さん:ともすると子どもの忘れ物やトラブルのときと三者面談のときくらいしか、先生と話さないかも。でも先生の声を聞く機会が欲しいなと、今回ちょっと思いました。
上岡さん:保護者会とか参加してます?
中里さん:うちは保護者会、ないんですよ。
林さん:え? ないの?
中里さん:保護者会とか懇談会とか、言葉では聞いたことあるけど……。
佐野さん:地域によるかも。参観授業のあと保護者だけ残って……というパターンが多いと思うんですけど。先生がクラスの様子を教えてくれたり、「お母さんたち、わが子についてどんなことで悩んでますか?」って聞かれたり。
上岡さん:そうそう。
林さん:うちは親同士の懇親会的な意味合いが強いかな。先生はその様子を見守っているだけ。
佐野さん:娘が小学生のとき、保護者会で先生が「僕は以前、当時話題になっていた〇〇という教育法に取り組んだことがあるんですけどうまくいかなくて、それでこういう本に出合って違うやり方で子どもたちと向かい合うようになったんです」という話をしたことがあって。すごく印象に残ってますね。
田崎さん:いいな~。そういうの、もっと聞きたい。「お母様方にちょっとお願いしたい」とかの要望も、プリントでのやり取りよりも直接聞いて「なるほど」と思うことありますしね。
上岡さん:先生が親に伝える場ってそうそうないですもんね。でも学校がいくら機会を設けても親が参加しなかったら、結局……。
田崎さん:そうだね。保護者会って途中で抜けられない雰囲気だし面倒くさいと思ってたけど、そういうのを聞くと参加した方がいいんだろうなと考えが変わりました。
中里さん:私は保護者会とか経験したことがないし、学校のこと何も分かんないです。でも先生たちがどんな考えで、どういうことやってるか知りたい。
林さん:中里さんみたいに「先生とコミュニケーションのきっかけがつかみにくい」っていうお母さんもいるんだろうな。
佐野さん:でも難しいですね。先生とコミュニケーションを密に取りたいけど、先生の負担になるのは本意ではないっていう、そこのバランスがね、もう先生が忙しいのは分かってるから。
先生と語り合う機会を大切に
先生との距離の近さは、地域や学校によって違う場合もあるでしょう。また親によっても違うように、先生にも性格や考えの個人差があります。でもその違いを知ることも大切なのではないでしょうか。互いを知ったうえで「子どものために」を話し合った方が、より建設的ですよね。せっかく先生とコミュニケーションを取る機会があるなら参加してみるのもいいかもしれません。
「先生、もっと教えてください!」
ほかにもママたちからは「先生の声を聞く機会が少ないからこそ、子どもが言うことを全てだと思って先生を批判するのは危険」「子どもが言っていることは間違ってなくてもフィルターがかかっていたり、すごく狭い視野で見てたりする可能性はありそう」といった意見もありました。学校に限らず、コミュニケーション不足はとかく誤解や問題を招きやすいですよね。
座談会でママたちが言っていたように、先生たちが今以上のハードワークになるのは誰も望んでいません。けれど「もっと先生の知見や思っていることを知りたい!」という願いもあります。なんとか教育現場の負担を増やさずに、先生と親のコミュニケーションを密にする方法が見つかれば……親も先生も子どもも、みんながよりハッピーになれるのではないかと思えた座談会でした。
インタビュー、文・千永美 編集・ここのえ イラスト・Ponko