<スポーツ能力を伸ばす!>プロバスケットボールクラブ「アルバルク東京」が伝える見守り力
スポーツの習い事を通して「親は子どもをどうサポートしたらいい?」「チームメイトとのケンカは親がどこまで口を出すべき?」など、悩むことはありませんか? B.LEAGUE所属のプロバスケットボールクラブ、アカデミーコーチの草野佳苗さんとアルバルク東京U18ヘッドコーチの桝本純也さんに、スポーツにおける子どもの能力の伸ばし方や親のかかわり方などを伺いました。
初心者でも楽しみながら上達を実感できる授業
――上原小学校5年生の体育の授業を担当されました。子どもたちにバスケットボールを教えていかがでしたか?
草野佳苗さん(以下、草野さん):今日は、子どもたちがとても楽しんでやってくれたらいいなと思ってきました。練習を通して、心からバスケットボールを楽しんでくれたように見えたので、私たちも嬉しかったです。
――工夫したことはありますか?
草野さん:バスケットボール初体験の子でも楽しめて、上達を実感しやすい内容にしました。たとえば、「ドリブルを100回!」という練習方法だと、子どもたちは飽きてしまうこともあります。そこで笛の合図に合わせて、ジャンプしたりしゃがんだりドリブルしたり。子どもたちからしたら、遊びの延長で、楽しいし、より試合に近い動きができるから実戦でも役立ちます。
子ども同士のケンカは成長のきっかけに
――スポーツに熱中するあまり、子ども同士でケンカしてしまうこともありそうですね。
桝本純也さん(以下、桝本さん):ケンカは一概に悪いことではなく、子どもたちの成長にとってはむしろ必要な学びであることがあります。子どもが納得してないのに無理に「ごめんなさい」と謝らせることはしません。こんなとき僕ら大人はあえて仲介せず、「何があったの?」「今、どういう気持ち?」など、お互い自分の気持ちを相手に伝える。相手の気持ちを理解できるようにサポートします。
――ケンカの仲裁をしてほしいと思う保護者もいるのでは?
桝本さん:「止めないの?」と思う保護者の方々もいると思いますし、そのことも理解できます。しかし、子どもたちが自分たちで考えて解決していく姿を見ていくうちに、だんだんと僕たちが継続して取り組んでいる活動を理解してくれるようになると考えています。
草野さん:小学生に限らず、中学生でも高校生でも、自分たちで考えて学ぶことを大事にしてほしいと思っています。必要があれば「なぜそれをしたほうがいいのか」「どんなプロセスをふんだらよかったのか」などを伝えることはありますが、基本的には口出しはしないで見守るスタンスです。
子どもの主体性を引き出すためにやるべきこととは?
――子どもたちの指導にあたり、意識していることはありますか?
桝本さん:あえて口を出さず、子どもたちの主体性を引き出すことです。コーチによっては「もっとこうしなさい」「この練習をしなさい」と、手取り足取り細かく指導するところもあります。ただ指示を出しすぎてしまうと、自分で考えて動けず、常に指示を待つようになってしまうこともあるんです。コーチの顔色ばかりうかがってプレーするようになってしまうと、子ども自身楽しくないし、伸びません。アルバルク東京のアカデミーとしては保護者の方々と一緒に子どもたちと関わりを持ちながら、子どもたちの主体性を大事に取り組んで行くことを大切にしています。僕は、中学生や高校生の子どもたちにも教えていますが、指示を出さないほうが圧倒的に伸びると感じています。
――バスケットボールを通して、いろんなことが学べそうですね。
桝本さん:バスケットボールは、5人対5人のチームプレー。敵も味方もお互いに尊敬しあってこそ気持ちよくプレーできるし、逆にそれがないと伸びていかないんです。技術と人間性両方がそろうことによって、素晴らしいプレイヤーに成長していきます。子どもたちが社会に出ていくうえで必要なのは「自分で課題を見つけて行動していくこと」だと思っています。バスケットボールを通して、子どもたちは自然と社会性も身についてくるのではないでしょうか。
草野さん:小学生時代は、子どもも親もスポーツに熱が入りやすい時期です。スポーツを通して小学生時代にたくさん楽しい経験をすることで、「もっと上手になりたい」と思う気持ちが育ち、中学、高校へと続けていく原動力となります。親としては、つい「レギュラー入りできた」「試合に出られた」ことばかりに目が行きがちですが、子ども自身が楽しめることが一番。長い目で見守ってあげるのがいいかなと思います。
取材、文・長瀬由利子 編集・荻野実紀子