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<発達障害のお仕事・第3回> 困りごとや生きづらさを抱えながら働く人たちが直面する問題

【記事画像】バルネラブル03

発達障害などで日常的に困りごとを抱えている子どもたち。そのような子どもたちのママは、わが子が将来社会に出て働くことに対する不安や疑問なども多いことでしょう。
そこで、困りごとや生きづらさを抱える人たちと企業をつなぐ支援機関「株式会社 vulnerable(以下・バルネラブル)」の代表の山﨑さんに、障害者雇用や就労支援などについて伺いました。
第3回は障害者がどのように自分の望む仕事に就くか、その難しいバランスについてお聞きします。
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やりたい仕事とやれる仕事、どちらを優先すればいいのか

——私の子どもは発達障害があり、将来やりたい仕事があってそのために勉強をしています。しかし発達障害を抱えながらその仕事ができるのかどうか悩んでいます。実際のところ、障害を抱えている人は、やりたい仕事とできる仕事、どちらを優先するものなのでしょう。

山﨑さん:この問題はとても難しいですね。やりたい仕事とやれる仕事、どちらもバランスよくするのがいちばんです。しかしそこまでうまくバランスを取れることは少ないでしょう。まずはやれる仕事を大前提にし、給与面にこだわりすぎないことが仕事探しのそもそものコツだと考えています。
一方で仕事は、モチベーションがある程度ないと、続けられないものですよね。やれる仕事を優先し選んでしまうと、面接などの際に、「なぜこの仕事がやりたいのか」などという質問に答えられず不採用になるケースもあります。
ですから、仕事に対してやりたいという気持ちや、業務への興味をある程度もっていることを大前提として、仕事探しをすることが必要になります。

——はじめから高い希望の条件を満たす仕事を探すのではなく、やれることから始めて、徐々にやりたいことへステップアップしていくということでしょうか。

山﨑さん:そうですね。たとえば経理の仕事をしたいと考えていたとします。しかし実際、仕事探しをはじめたばかりの方へ、経理の求人はほとんどありません。そこで、まずは数字だけを打ち込むような仕事とか、電卓計算のような、経理に近い雰囲気があって興味のある仕事を選ぶといいですよね。
興味や関心がもてる分野の会社で、取り組む業務は自分のやれることといった形で、最初は社会で働くことの経験を積んでいくといいと思います。

——やりたい仕事や興味のある分野なら、間接的にでも関われると嬉しいですよね。理想が高い子もいると思いますが……。

山﨑さん:そうですね。私は、最初から理想が高すぎてハードルの高い求人にばかり応募してしまい、うまくいかないケースもたくさん見てきました。とくに給与面での理想が高すぎるケースが多いですね。
仕事を探すときにその会社でどの程度ステップアップできるのかにもよりますが、興味のあることに対する将来性を見据え、今できる・やれる仕事を選ぶことも重要と考えています。

——家族や自分だけでそこまでのことを考えて仕事を探すことは、少し難しそうですね。

山﨑さん:得意・不得意、やりたい・やりたくないこと、やれることなど、自分で選んでいくことは本当に難しいことだと思います。だからこそ、就労支援などを利用して、第三者に相談したり意見を聞いたりしつつ、仕事探しをしていくことが最もいいのではないでしょうか。

社会に出て就労するときに求められるスキルや資質は?

——発達障害などでさまざまな特性や困りごとを抱えている方たちが、社会に出て働く場合、どのようなスキルや資質があるとよいのでしょうか。

山﨑さん:いちばんは、「人柄」と思います。障害者雇用は、誰でも行いやすい単純作業が多いです。最初から難しい仕事を渡されるようなことはなくて、マニュアルに沿うか、単純なパターンの業務がほとんど。だから能力が高いだけで面接に受かるといったことは多くないような気がします。もちろん基本的な作業ができるかどうかも重要ではあります。その上で、最終的な判断に人柄が重視されるケースが多いということです。

——スキルも重要ながら、最終的には人柄重視で判断されるのですね。

山崎さん: そうですね。挨拶がしっかりできる、「よろしくお願いします」などの言葉を使ったコミュニケーションができるといいですね。業務内容は単純で簡単なものが多いからこそ、周囲とのコミュニケーションが取れたり、報連相をしっかりできたりとかする子のほうが一緒に働く人も気持ちがいいですね。
これは私の考えですが、配慮が必要でも、応援してあげたくなるような子は、一緒に働きやすいのではと思っています。というのも、そのようなタイプの子は、仕事でトラブルが起こりづらく長く働き続けられるからです。

——発達障害や精神障害をお持ちの場合、周囲とのコミュニケーションが苦手な人も多いですよね。そのような人はどうすればいいのでしょう。

山﨑さん:どうしても周囲とのコミュニケーションが苦手な方は、なんでもいいので自分から発信する方法や力があるといいですね。
たとえば、上司や同僚にメールで「質問をしたいのであとでお時間をいただいてもいいでしょうか」と伝える、というように。直接顔を見たり声掛けができたりしなくてもいいので、何かしらのアクションができればいいと思います。

——社会で働く以上は、自ら発信する力が重要なのですね。

山﨑さん:そうですね。会社は会社であって、支援機関ではありません。自分で発信できる方法や力をもっていないと、なにかあったときに発信できず、困ったりトラブルにつながったりし、うまく働けなくなります。

挨拶や報連相のような基本的なコミュニケーションがとれることと、自ら発信する力(スキル)があることは、障害者雇用ではとても重要です。

(編集後記)
障害者雇用の場合、仕事のスキルだけが採用や就労後の評価の判断材料ではないようです。挨拶や報連相がきちんとできること、困りごとや相談・質問があれば上司や同僚に速やかに発信できる力などが重要になるようです。このようなスキルや資質は一朝一夕で習得することは難しいので、早い段階からトレーニングしておきたいですね。

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取材、文・櫻宮ヨウ 編集・しらたまよ イラスト・Ponko

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