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<発達障害のお仕事・第2回> オープン就労とクローズ就労、それぞれのメリットとデメリット

【記事画像】バルネラブル02
発達障害などで日常的に困りごとを抱えている子どもたち。そのような子どもたちのママにとって、わが子が将来社会に出て働くことに対する不安や疑問などは多いことでしょう。
そこで今回は、困りごとや生きづらさを抱える人たちと企業をつなぐ支援機関「株式会社 vulnerable(以下・バルネラブル)」の代表の山﨑さんに、障害者雇用や就労支援などについて伺いました。
障害者の働き方は、障害があることを伝えて働く「オープン就労」、障害があることを伝えないで働く「クローズ就労」があります。第2回はこの2つについて、詳しくお聞きします。
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オープン就労とクローズ就労のメリット、デメリット

——「障害を持っている」とレッテルを貼られて働くことに、抵抗がある人もいると思います。障害があることを伝えて働くこと、いわゆる「オープン就労」のメリットを教えてください。

山﨑さん:オープン就労として働くメリットは、就労する上で必要な配慮を受けられる点です。たとえば通院されている方の場合、平日でも時間調整や遅刻・早退などの配慮をしてもらえます。仕事の負荷に関しても、障害を理由に量を増減してもらったり、できる範囲で業務を行ったりするなど、ある程度の調整をしてもらうこともできます。
オープン就労は、企業側も障害を理解した上での雇用になるので、細かな困りごとなどの相談がスムーズに行えます。障害者枠雇用を想定した働き方ということになりますね。

——会社内に理解者がいることで、当事者の気持ちや心の負担も軽減できそうですね。では逆にオープン就労で働くことのデメリットはいかがでしょう。

山﨑さん:どうしても「障害者」というレッテルを貼られてしまうことですね。障害者への対応に慣れていない企業の場合は、その対応の仕方から、どうしても意識せざるを得なくなることもあります。
他には、一般的な就労よりも、もらえる給与額が低くなってしまうことが多いですね。業務内容の面でも、与えられる作業が比較的単純作業になることが多く、キャリアアップが難しいケースもあります。
給与面とキャリアアップにレッテル、これら3つがデメリットになるのではないでしょうか。

——就労支援を利用せず、障害などがあることを企業に伝えず働く、いわゆる「クローズ就労」についてのメリットを教えていただけますか?

山﨑さん:クローズ就労のメリットは、オープンで就労する際の3つのデメリットがないということです。障害者雇用を利用しないため、一般雇用となります。
実力次第で給与がアップする可能性もありますし、業務の幅が広がるかもしれない。将来的に出世して高い地位を望むのであれば、就労支援を使わずクローズで就労したほうが可能性は広がりますね。

——ではデメリットについてはいかがでしょう。

山﨑さん:すべてを自己管理でおこなわなければならないことが大きなデメリットです。
支援者や先生などがついていれば当事者の相談にのることはできますが、支援者や先生が会社に介入してしまうと、クローズ就労にもかかわらず周囲に障害があることがバレてしまいます。支援者が直接フォローできないため、当事者が自分で解決する力が必要になります。
また体調だけでなく、心についても自己管理が必要になってきますね。発達障害の方は二次障害としてうつ病などのメンタル不調になりやすい傾向にあります。クローズ就労している障害者の中には、心の自己管理が難しいのか、メンタル的な部分で体調を崩してしまう人もいますね。その結果、自分ではどうすることもできずに、休職・退職になってしまうことも実際にあります。

——オープン就労・クローズ就労、どちらにもメリット・デメリットがあるんですね。

山﨑さん:そうです。どちらを選択するにせよ、自分の得意・不得意をきちんと理解しておくことが大切ですね。理解できていないと、オープン就労とクローズ就労のどちらが適切かどうかも判断できません。

——自分がオープン就労、クローズ就労、どちらが向いているのか判断するには、なにが必要でしょうか?

山﨑さん:客観的な視点が必要です。親御さんの気持ちだけでわが子の得意不得意を考えると、見え方に偏りが起こってしまいます。親から見て、子どもはコミュニケーションが苦手だからオープン就労にしよう、などと簡単に決まるものではありません。たとえば時間はかかるかもしれませんが、就労支援の窓口で相談をし、「見立て」をしてもらうのもよい方法です。本人・親御さん・第三者と、違う視点からの評価があるほうが、子どもがオープン就労かクローズ就労かどちらが向いているかをより正確に判断できるでしょう。

(編集後記)
オープン就労、クローズ就労のそれぞれのメリット・デメリットをご紹介しました。どちらがよいか判断するには、親子で相談することが大事。第三者の意見も貴重になってくるのですね。一度決めたらその職場では変えにくいことですから、慎重に話し合っておきたいですね。

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取材、文・櫻宮ヨウ 編集・しらたまよ イラスト・Ponko

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