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<発達障害のお仕事・第1回> ウチの子は将来働ける?将来に備えて知っておきたいこと

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発達障害などで日常的に困りごとを抱えている子どもたち。そのような子どもたちのママにとって、わが子が将来社会に出て働くことに対する不安や疑問なども多いことでしょう。
そこで今回は、困りごとや生きづらさを抱える人たちと企業をつなぐ支援機関「株式会社 vulnerable(以下・バルネラブル)」の代表の山﨑さんと三浦さんに、障害者雇用や就労支援などについて伺いました。
第1回は、就労支援についてご紹介します。

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困りごと・生きづらさを抱える人が働くにあたって壁となることは?

——発達障害などの困りごとや生きづらさを抱える子どもが働くにあたって、不安な親は多いと思います。障害者が働くときによく起きるトラブルは何かありますでしょうか?

山﨑さん:よくあるのが、希望の仕事になかなか就職できないということです。当事者のこだわりが強いと、やりたいことの範囲が狭くなり求人も少ないためハードルが上がります。給与が多い仕事を希望される場合も、仕事で求められるスキルが多岐にわたることが多いですから、どうしても選択肢が狭まってしまいますね。

また障害者雇用では、事務作業の求人が多いんです。デスクワークが苦手な方には、仕事の選択肢がそもそも少なくなる傾向にあります。ご自身の希望だけでなく、得意・不得意の内容によって、仕事探しの難しさは変わってくるのかもしれません。

——仕事探しから困難があるのですね。そういう方たちは、就業してからはどうでしょうか。

山﨑さん:コミュニケーションが苦手な人は、苦労されるようです。実際に、会社側から「報連相(ほうれんそう/報告・連絡・相談)ができない」、「配慮ばかり求められて困る」といった相談もあります。これらは、障害を抱えた人が就労する上で直面する課題と考えています。

——社会で働くのは、学校とはまた違った困難がありそうですね。

山﨑さん:会社は福祉機関ではないので、学校などとはまったく違うということは知っておかないといけませんね。学生時代には間に入ってくれる先生などがいたと思うのですが、会社は仕事をする場所ですから、学生時代ほどの手厚さはありません。サポートしてもらいたいことがあるなら、会社側からなにかしてもらうのを待つのではなく、自分から発信することが大前提です。

今あげたトラブルはほんの一部です。就労支援を利用すれば、支援者が当事者に代わり企業側と調整に入るため、当事者の悩みやトラブルの解決をスムーズにおこなえます。

就労支援とはどのようなもの?

——障害を抱えている当事者が受けられる「就労支援」にはどのようなものがあるのでしょう。

三浦さん:就労支援には大きくわけると3つがあります。国や都道府県・自治体がおこなうもの、国の障害福祉サービスで受けられるもの、バルネラブルのような民間の企業がおこなうものです。
また、就労支援とひとことでいっても内容や種類がさまざまで、相談をしにいくところもあれば、職業訓練のために通うところもあります。長く働くためのサポートとなる「定着支援」、登録をして仕事を紹介してもらう人材派遣も、就労支援に含まれます。

——就労支援を利用するにはお金は発生するのでしょうか。

三浦さん:国や自治体の「相談」や「定着支援」は、国や自治体のものであれば基本的に無料です。
障害福祉サービスは、本人(と配偶者)の収入によって自己負担金が発生します。定着支援の場合は、最初は無料で支援がうけられ、一定期間が経過すると費用が発生するといったケースも(※前年収入がない場合は1年後から収入に応じて自己負担金が発生します)。どのような支援を受けるかで費用は変わってきます。
われわれのように企業さまからお金をいただいて運営している場合は、利用者には費用が発生しないパターンもあります。

——民間の支援機関であるバルネラブルさまではどのような業務をおこなわれているのでしょうか。

山﨑さん:バルネラブルでは障害を持つ方を雇用したい企業に対して雇用のコンサルティングを主におこなっています。長く働き続けるための企業側の仕組みづくり、困りごとや生きづらさを抱える当事者への相談支援、そして就労前の高校生以上のお子様向けに「未te来ru」という、就労適性評価の実施。これら3つの事業をおこなっています。

就労支援を受けるために障害者手帳を取得することについて

——障害者雇用には、障害者手帳(以下・手帳)が必要と聞きました。支援を受けるにも、手帳が必要なのでしょうか。

三浦さん:国や都道府県・自治体の相談については、手帳の有無は問いません。障害福祉サービスで支援を受ける場合は、ご自身が住んでおられるエリアのサービスに申請してもらうことになります。手帳がなくても、自立支援医療(長期通院が必要な場合の通院費補助制度)や診断書があれば利用可能なケースが多いですが、障害者雇用で働くのであれば、手帳は必要になります。

——障害者雇用で働くつもりなら、やはり手帳は必要になるのですね。事前に取得しておいたほうがいいのでしょうか。

三浦さん:手帳が発行されるまでにはだいたいの場合、3カ月以上かかります。そうなると働きたいタイミングに働くことができず、働き出すまでに時間がかかってしまいます。スムーズに就労支援を受ける場合は、事前に手帳を取得しておくといいかもしれません。

しかし就労支援は、手帳を取るかどうかについても一緒に検討できる場所と考えていただくこともできます。国の就労支援や障害者福祉サービスの利用者のなかには、手帳をお持ちでない方もいらっしゃいます。当事者の相談を受けるなかで、「手帳を取ろうか」と決まることもありますよ。

——障害者雇用に手帳が必要だといわれても、「障害者と見られたくない」という考えから、取得したくない人もいます。そのあたりはいかがでしょう。

三浦さん:手帳の取得に関しては、なかなか受け入れられない方もいらっしゃいますね。しかし若い当事者の方だと、手帳は一種の「お守り」のような感覚で持たれている方も多いです。手帳を持っていれば受けられる支援やサービスがありますから、いざ支援やサービスを受けたいときのための、「お守り」なんでしょうね。

——デメリットばかりを見ず、うまく使えるものとして取得することを検討すればいいのですね。

三浦さん:そうですね。就労支援を受ける人の中には、自分の困りごとがわかっていなかったり、困りごとをうまく説明できなかったりする人がいます。
障害者雇用は手帳を持っている人が対象になります。ただ手帳を持っているだけでは、“何に困っているか”が企業側に理解してもらえません。自分がどこに困っているのかを、親御さんや私たちのような支援機関などと話をしながら理解を深め、それから手帳を取得してもいいのではないでしょうか。

(編集後記)
発達障害をはじめとする精神障害をもつ方々が社会に出て働くためには、制度や支援を知り、適性や評価の自己理解、第三者の評価が必要であることが見えてきました。いずれ社会に出ていくわが子のために、就労支援について詳しく知っておきたいですね。

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取材、文・櫻宮ヨウ 編集・しらたまよ イラスト・Ponko

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