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「合理的配慮」って何?困っている子どもたちが平等なチャンスをつかめるかも【発達障害は個性なの?】

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「発達障害は個性なの?」答えはYesでもありNoでもあり、どちらでもない可能性があります。困りごとがあればそれは「個性」という言葉では片付けられないし、困っていないのであればそれは「個性」なのかもしれません。

この記事では、発達障害の子育てをするなかで見えてきた、さまざまな悩みや問題・対処法などについて紹介していきます。今回のテーマは「合理的配慮」です。

「合理的配慮」をご存じですか?

筆者はかつて、発達障害の子どもをもつ親のために開催されたオンラインセミナーに参加しました。そのときはじめて知ったのが「合理的配慮」という言葉。みなさんはこの、「合理的配慮」という言葉や意味をご存じでしょうか。

「合理的配慮」は、「障害者の権利に関する条約」の第二条で次のように定義されています。

『「合理的配慮」とは、「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう』

かなり簡単にイメージしていただくとすれば、「障害をもつ人たちの困りごとや障壁を取り除くため、個別に適切な調整や変更を行う」という説明になるでしょうか。

日本では2016年(平成28年)4月に施行された「障害者差別解消法 (正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」に基づき、行政や学校・企業などの事業者に対し、障害をもつ人たちへできるかぎりの合理的配慮を提供することが求められているのです。

発達障害の子どもたちにも合理的配慮は適用される

どのような障害をもっているかや、障害によって起こる困りごとによって合理的配慮の内容は変化します。

わかりやすい例をあげると、車いすの人が電車に乗り込む際にスロープを用意してもらい、駅員さんに介助をしてもらう。目が見えない人のために注意書きの文章を声に出して読み上げる。これらはすべて合理的配慮になります。

このような合理的配慮は、発達障害をもつ子どもたちにも適用されます。学校や授業・受験などで起こる・起こるであろう困りごとを、いかに最小限に抑えられるか、当事者である子ども本人の意見を聞きながら、実現可能な合理的配慮を探っていくのです。

学校生活における合理的配慮:筆者の子どもの場合

わが子が発達障害と診断を受けた高校入学頃(2020年・令和2年)には、すでに合理的配慮という言葉は存在していました。しかし筆者もわが子もしばらくは、合理的配慮という言葉の存在すら知らなかったのです。

ただ振り返ってみると、わが子が診断を受けた後から学校へお願いしていたいくつかのことは、すべて合理的配慮だったのだと気付きました。わが子が高校生活のなかで学校側にお願いしていた合理的配慮について紹介しましょう。

大切な伝達事項は必ず書面で

口頭での指示をその場で理解し記憶することは、発達障害をもつわが子にとっては難易度が高いこともあります。そこで曖昧な指示や口頭での指示は避けてもらい、重要な伝達事項は必ず書面で渡すようにお願いしていました。

このような合理的配慮のおかげで、わが子は授業中に口頭で説明されるテスト範囲がわからず、途方に暮れることもなくなったようです。

提出書類や課題の管理への協力

わが子は提出物の管理・提出が苦手であるため、先生には「こまめな声掛けをしてください」とお願いしています。しかし、書面で頂いても紛失したり、カバンの奥底にしまい忘れたりすることが幾度となくおこりました。いくら努力しても発達障害のわが子にとって、「大事なものだから、なくさないだろう」は通用しないのです。「いい加減に扱いたいわけでもないし、わざと雑に扱っているわけでもなく、手から離れた瞬間にないものになってしまうんだ」と本人は話していました。

これらはなかなか一般の人には理解しにくいことようで、学校側も戸惑ったようです。そこで、申請書類などの期日がシビアなものや重要な書類に関しては、「翌日には提出します。翌日に提出されなければ家に電話をください」とお願いし、筆者も何があってもこのルールを守るように務めました。

学校と親が協力して、子どもの困りごとを減らしていこうと試みることも大事ですね。

睡眠障害から起こる困りごとへの説明と対処

わが子には睡眠に関するトラブルがあります。毎日7時間以上の睡眠時間を確保しても、日中に気を失うような睡魔に襲われるのです。そのため、発達障害の治療方針のなかで睡眠に対する困りごとを緩和するための処方薬を服用しています。それでも授業中に眠ってしまうことは珍しくありません。

授業中でもお構いなしに眠ってしまうことに、わが子は困り果てていました。しかし周囲からすれば「夜更かしをしたんだ」とか「やる気がない」と受け取られてしまいます。眠ってしまうことに対して、先生からは怒られたり大きな声で怒鳴られたりなど、厳しい指導がありました。

そこで、決してサボっているわけでもなく、だらけているわけでもないことをまず学校側に伝えました。その上で先生方には、わが子が眠ったら起こしてもらったり、保健室へ行くように促してもらったりしていただいています。見るからに状態が悪そうなときは、筆者に連絡をもらえるようにもお願いしています。また学校と連携を取ることで、かかりつけ医と薬の量を調整できるようになりました。

合理的配慮をお願いしてからは、「眠りたくて眠っているんじゃないんだ」とツラそうに話していたわが子の言葉を聞くことがなくなったのです。母としても本当に嬉しいことでした。

些細なことでも報告してもらう

自分が困っているとわかっていなかったり、困っていてもどうしていいかわからなかったり。発達障害の子どもには多く見受けられる現象のようで、わが子もそうでした。そのため、知らず知らずのうちにトラブルに巻き込まれる、あるいはトラブルの種をまき散らしたりしている……なんてこともよくあったのです。

高校生にもなると、学校でのトラブルはよほどのことがない限り、親が介入することは減っていくでしょう。しかし筆者の場合、困りごとの多いわが子のことを考えると、介入せざるをえませんでした。わが子に起こった問題を放置しておくと、わが子は問題をさらに悪化させたり、大きなストレスになり心身に異常をきたしたりすることもありました。

そこであえて、些細なトラブルでも連絡してもらえるよう学校にお願いしています。担任の先生もお忙しいなかこまめに連絡をくださっているので、今何が起こっているかや子どもの現状の問題点などがわかります。そのおかげで、対処法を考えたりわが子に話を聞き出してストレスを発散させたりできました。これらは大きな収穫だったと思っています。

合理的配慮の連携がうまく取れないときもあったけれど

お願いしていた合理的配慮のおかげで、安心して高校生活を送れることが増えたわが子。しかしこれらの合理的配慮は完全なものではありませんでした。教科担任ごとに考え方・受け取り方が異なるうえ、伝達ミスもあったため、怒られたり「評価を下げる」と言われたりしたこともあったようです。

その都度悔しい思いをしていたと後日わが子が話していました。困っているのに理解してもらえないことに対するツラさや、お願いしていても周知されきっていないことへの、ある意味憤り。しかしわが子は、言葉や態度で反論・反撃することなく、すべてを飲み込み「諦める」選択肢を選んでしまっていました。

ツラさや苦しさにフタをして、心の奥底へ押し込めてしまうと、鬱や身体的トラブルなどの二次障害を引き起こしかねないと筆者は考えています。何か起こってからでは遅いので、その前に問題解決のために動くことは何度もありました。いまだに解決できていないこともたくさんあります。

合理的配慮は、当事者がお願いしたことをできる限り対処してもらうもの。配慮する側にとってはできないこともあれば、理解してもらえないこともあるのだと思い知らされました。

それでも合理的配慮がある・ないでは大違い

わが子に起きる問題を理解してもらえないときは、親子で思い悩み、諦めることが当たり前になっていました。しかしそれでも合理的配慮があるのとないのとでは大違い。学校と家庭・当事者が歩み寄ることで、少しでも困りごとやトラブルを減らしていけば、障害をもつ子どもたちが障害をもたない人と平等に同じ土俵に上がるチャンスをつかめるのです。

発達障害がある子どもの親御さんは、多くのことを諦めているのではないでしょうか。しかしかつて諦めたことのなかには、合理的配慮を受けられれば解決できることもあるかもしれません。わが子が学校生活を少しでも快適に楽しく送るためには、どのような合理的配慮が必要なのかをよく考え、関係各所と交渉し続けることが大事です。

※本記事の内容はあくまで個人の体験に基づいた内容であり、人によっては当てはまらないケースもあります。

櫻宮親子2022

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文・櫻宮ヨウ 編集・しらたまよ イラスト・Ponko

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