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【前編】子どもの新型コロナウイルス感染症とワクチン情報!妊婦さんのケースも<2022年10月版>

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新型コロナウイルスが私たちの生活を脅かすようになってから、もうすぐ3年。情報が多すぎるため、逆に何をどうしてよいか戸惑うこともありますよね。
そんなママたちに向け、国立成育医療研究センターが「子どもと妊婦さんのための新型コロナウィルス感染症市民公開講座」を開催。日本で唯一の小児・周産期に特化した専門家たちが、解説してくれました。

【子どもと感染症】子どもにとってのオミクロン株感染は軽症ではない

「子どもの新型コロナウイル感染症」について解説してくれたのは、窪田満先生(総合診療部 統括部長)です。先生が一番に伝えたかったのは「子どものオミクロン株感染は、決して軽症ではない」ということ(以下・窪田満先生談)。

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総合診療部 統括部長 窪田満先生

 

子どももオミクロン株には注意

窪田満先生:新型コロナウイルスの主流がそれまで猛威を奮っていたデルタ株からオミクロン株に移り、「少ない」とされていた子どもの罹患(りかん)がぐんと増えました。10代以下の割合は全体の約1/3です。子どもの症状で多いのは発熱・嘔吐・痙攣(けいれん)など。とくに痙攣が特徴的で、デルタ株でよく言われた味覚障害などはほぼ見られませんでした。オミクロン株では大人で「少ない」とされる肺炎も、子どもでは多く見られました。入院までに至るのは、やはり基礎疾患を持っている場合。とくに免疫不全を持つ子が多く、子どもでも重症になる可能性があります。

後遺症は診断が困難

窪田満先生:新型コロナウイルスの後遺症は、診断が困難です。お子さんの場合気をつけていただきたいのは、”いつもと違うかどうか”。以前からある症状が「感染して以降、少し悪化した気がする」というのは後遺症ではない可能性が高いです。逆に今までなかった症状が急に生じてきたのは、後遺症の可能性も。「おや?」と思った場合は、まずかかりつけの小児科医に相談を。その後に後遺症を診ている大きな病院を紹介してもらうのが、ベストだと思います。

【感染予防のために】

窪田満先生:当センターには無症状・軽症の子たちも入院しましたが、管理は困難でした。マスクが付けられない、泣き叫ぶ、おむつ交換や食事などの介助が必要、勝手に部屋の外に出てしまうなどの事態が。保護者から引き離される非日常は、子どもにとって不安でしかありません。退院後も夜泣きが続く子がいるなど、メンタルヘルスに大きな悪影響を与えるようです。こうしたことからも、大切なのは感染しないための予防です。

1.新型コロナワクチンの接種
接種可能な年齢であれば、ぜひ検討を。個別発症の抑制(かからないこと)よりも、重症化の予防という意味で大切です。
2.発熱や咳など風邪症状がある場合は、登園・登校しないこと
3.同居家族を含む毎日の健康観察
4.手洗い、必要時のマスク、咳エチケットの継続
5.学校側は3密を避ける工夫を継続する

窪田満先生:加えて個人的に最も重要だと感じるのが「食べて、遊んで、寝て、体力をつけること」。家の中でじっとしているだけでは、体力はつきません。そしてわが子を守るには、いかに他己的になれるかが鍵です。子どもに関わる大人や他の子どもたち、”みんな”を守る意識が、結果的に目の前のわが子を守ることに繋がります。

【妊婦と感染症】妊婦でも重症度・症状などは他の同世代女性と変わらない

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「妊婦さんの新型コロナウイルス感染症」について解説してくれたのは、金子佳代子先生(周産期・母性診療センター 母性内科 医長)。新型コロナウイルスに感染した100人以上の妊婦を治療してきた経験を元に、お話ししてくれました(以下・金子佳代子先生談)。

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周産期・母性診療センター 母性内科 医長 金子佳代子先生

 

基本的には重症度は変わらないが、重症化リスクはある

金子佳代子先生:感染した妊婦さんの特徴と重症度でいえば、持病がない限り同年代の妊娠していない女性と変わりません。ただ妊娠後期(28週以降)に感染すると早産(37週より早く出産)する割合が増える、一部が重症化するリスクが報告されています。高年齢での妊娠・肥満・高血圧・糖尿病などの背景を持つ方は、とくに感染予防にご注意ください。

デルタ株が主流だった頃は高熱・咳・息苦しさを訴える方が多くいましたが、現在は鼻水・咽頭痛・頭痛の症状が目立つようになりました。肺炎を起こす方は稀(まれ)ですが、喉が痛く食事がとれない・だるさで動けないなどの理由で入院する方が多い印象です。

赤ちゃんへのウイルス感染は稀と考えられている

金子佳代子先生:赤ちゃんへの影響でいえば、お母さんの胎盤を通して赤ちゃんにウイルスが感染することは稀と考えられています。妊娠初期・中期に感染しても、ウイルスが原因で赤ちゃんに先天異常が引き起こされる可能性は低いといわれます。分娩直前に感染された場合は、出産後の赤ちゃんをNICU(新生児集中治療室)に隔離する可能性はあります。

【感染予防のために】

一般的な感染対策を、徹底的に。ただしヨード入りうがい薬の使いすぎは赤ちゃんが成長するのに必要な甲状腺ホルモンに影響するため、注意が必要。

また、新型コロナウイルスワクチン接種の検討をしてください。副反応の出現頻度は、同年代の妊娠していない女性とほぼ同等です。出血・胎動減少・血圧上昇・破水のような重大な症状があったのは1%以下でした。

【感染してしまったら】

十分に休息し、水分と食事をしっかりとりましょう。かかりつけの産科医に感染を報告し、万が一お腹の張り・出血・破水などがあった場合の対応について相談を。お母さんが苦しいときは、赤ちゃんも苦しい状況です。食事がとれない・尿が濃く減っている・息苦しい・頭痛や倦怠感が薬を飲んでも改善しないときは我慢せず、かかりつけ医に連絡してください。

【ワクチン全般】ワクチン接種によって得られる利益・不利益を考えよう

「新型コロナウイルス感染症とワクチン」について解説してくれたのは、庄司健介先生(感染症科 医長)です。先生は「接種することによって得られる利益と不利益のバランスで、受けるかどうかを決めてほしい」といいます(以下・庄司健介先生談)。

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感染症科 医長 庄司健介先生

 

ワクチン接種で得られる利益とは

庄司健介先生:接種することで得られる利益は、自身の感染や重症化・他者への感染を防ぐことができること。一方の不利益は副反応で、発熱やごく稀ですがアナフィラキシー・心筋炎などの可能性がいわれます。双方のバランスはそのときどきの流行状況、流行している株の重症化の割合でも変化します。

オミクロン株が主流になってからのワクチンの有効性は

庄司健介先生:小児に対するワクチン2回接種後の有効性は、オミクロン株が流行する前の感染予防効果(無症候性または症候性感染予防効果)は12〜18歳、有効成分が大人の1/3である5歳〜11歳でもほぼ100%に近い数字でした。オミクロン株が主流になってからは12〜18歳で約6割、5〜11歳で約3割とかなり低くなりましたが、重症化を防ぐという意味では約7〜8割とまだ十分な効果があると報告されています。さらに3回目のブースター接種で、予防効果は約7割になるといわれます。

副反応は

庄司健介先生:副反応に関して、接種後の発熱は12〜15歳で比較的多いものの、有効成分の少ない5〜11歳では他年齢層よりもかなり低いです。アナフィラキシーや心筋炎など重篤な副反応は極めて稀ですが、備えておくことが大切。ただ、心筋炎には新型コロナウイルスに感染したほうがよほど高い頻度でなりやすいです。こうした利益・不利益のバランスを考えながら、ワクチン接種をご検討ください。

参考:国立成育医療研究センター|子どもと妊婦さんのための新型コロナウイルス感染症市民公開講座アーカイブ

まだまだ大変な期間がしばらく続くかもしれません。いっそこの辛い時期を家族の絆を強くするきっかけと考え、みんなで乗り越えていきましょう。

取材、文・鈴木麻子 編集・しらたまよ イラスト・わたなべこ

【つぎ】の記事:<コロナ禍、Z世代の夢>奪われた海外留学。今までの努力はすべて無駄……無気力な毎日【前編まんが】

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