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沼田先生って何者!?子どもをやる気にさせるカリスマ小学校教師が語る「教育」とは

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沼田晶弘先生は、東京・世田谷区の小学校で担任をもつ今話題の小学校教師。先生が教室で繰り広げる「子どもをやる気にさせる」教育手法が、Facebookで9万件以上もシェアされており、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
沼田先生が語る「今必要な教育」についてお届けします。

―子どもをやる気にさせるのが得意な沼田先生。どうやって熱意を出させているのでしょうか。

沼田
小学校は義務教育なので、みんなが「同じことをやりたくて来ている」というわけではないんです。
たとえば、運動会。運動神経がよくて運動会をすごく楽しみにしている子もいれば、できれば運動会には参加したくないと思っている子もいるわけです。だからまず、みんながやる気があるわけじゃないことを理解しないといけないんです。

そこでやる気を出させるために、僕は役割分担を徹底しています。
運動会だと足が速い子が目立ちがちですが、足が速くなくても体格があって力持ちな子には、棒たての棒を支える役割だったり。
そして自分の役目を頑張っているところをしっかり観察して、すかさず誉めていくということがポイントだと思っています。運動会のカメラマンもそうした姿をしっかり押さえてくれるので、後で写真を見て、再度「頑張ったねー!」と誉めてあげると、運動会が苦手だと思っていた子でも好きになっていくんです。

クラス対抗の全員リレーの時には、足が速くない子の順に走らせていきます。すると、スタート時はどんどんほかのクラスに引き離されていきます。でも、「よし!差は半周で抑えられたぞ、よくやった!」などと誉めるんです。後半からは、足が速い子しか出てきません。その子たちも、他クラスを追いかける役割として十分に活躍します。しかも、保護者の方にもウケがよくて。お子さんがリレーで抜かれてしまうようなことがないので、「うちの子がすいません」みたいなことにはならないんです。

―なるほど~。そうすると、運動が苦手な子も嫌な思いをしないし、自分の役割を頑張ろうと思えますね。

沼田
僕は、子どもたちに成功体験を積ませることが大切だと思っています。実は最近、一年間漢字テストで100点を取れなかった子どもが初めて取ったんです。もう、クラス全員でスタンディングオベーションですよ。その子のお母さんにも電話して「大げさに驚いて誉めてくださいね!」と伝えました。

「がんばったらみんなが誉めてくれた」「お母さんが喜んでくれた」。そんな成功体験ができたら、子どもはまた頑張ろうと思うんです。こうやって積み重ねた成功体験は自信となり,他の学習や活動にも生きてきます。だから、僕はあらゆる場面で誉める仕組みを盛り込んでいます。
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―子どもたちに成功体験を積ませることで自信をつけさせ、やる気を出させているという沼田先生。次に、子どもたちが大人になり社会に出たときに、自ら考え動くことができるために、どのように教育しているかも語られています。

沼田
僕は以前塾講師をしていて、その時は、自分がおもしろい授業をして生徒を惹きつければいいという考えでした。それこそ、声が枯れるまで毎日教えまくる。
だけど、ある時「先生、私授業をやってみたい」と言ってきた子がいた。それで、「おお、やってみろ」って任せてみたんです。そうしたら、その子は教えるためにものすごく勉強してきたんですよ。

この経験から、子どもたちには「1日キャプテン」をさせています。キャプテンは担任の僕より偉いというルール。その日一日にあったいいこと、悪いこともすべて、先生ではなくキャプテンがクラスの代表として責任をもつんです。キャプテンになった子どもは,クラス全体をほんとうによく見ていて,担任の僕以上にいろいろなことに気づきます。キャプテン、ありがとうって感じです。

―確かに、自分でやりたいと思ったことは、それを達成させるためにどうすれば実現できるか自ら調べたり、責任を持つということも学びますね。子ども達が成長し、人間として自立するためにはどのようなことが必要だと考えているのでしょうか。

沼田
僕は小学生に、「世の中は不公平だよ」と伝えているんです。福沢諭吉もそう言ってるからね、って。福沢諭吉の『学問のすゝめ』の冒頭の有名な一文、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずといへり」。 これは人間の平等性を語っているように見えますけど、実際はその後に、「平等だと言われているのになぜ不平等が世にあるのか? それは勉強してる人と、勉強していない人の差である」と言ってるんです。だから僕が教えているのは、「世の中は平等ではないことがほとんどだけど、どんな人にも唯一平等なのが時間。だったら限られた時間の中で、自分が得意なところを探して、そこを伸ばしていくかどうかが人の差になる」と伝えています。

―確かに、時間は平等ですね。同じ時間の中で自分にどれだけのことができるかと言われたら、何をすべきか考えるようになりますね。
子ども達が成長して社会で生き抜くために、どのようなことを教えているのでしょうか。

沼田
僕はリスクについて教えることが大事だと思っています。
小さい話ですが、たとえば、給食がカツカレーだった時にカツが一枚余ったら、カツを食べたい人はいるかと手を挙げさせます。そして、挙手した子どもを集めて、じゃんけんをするか、平等に分け合うかどっちがいいか考えさせるんですよ。
その時に、じゃんけんをして、負けたら食べられないリスクはあるけど、そのリスクを冒してでも勝てば一人で食べられるチャンスを得ることができる。
これが「リスクを取る」ということだ、ということはよく言ってますね。

僕は生徒が小学生だからって、小学生らしい型にはめ込むことはしたくないんです。
運動会であれば、どうしたら勝てるかを考えさせたい。スポーツでは「フェイント」というものがあります。相手を騙して抜いていく技術ですが、小学校教育の「正々堂々と戦おう」みたいな概念からいくと、「だます」ということにも捉えられるかもしれません。
しかし、僕は勝つための最善策を考え挑戦した姿だと思います。

失敗しても何度でも挑戦できるタフネスも本当に重要だと思います。
どんなに崖っぷちに立たされても、「イケる」と思える。そうやって立ち上がれるところが人間としての強さだと思います。だから、「イケる!」と思う環境作りや,モチベーションを高めてあげるのが僕の仕事です。

―毎日全員の子どもと交換日記をしているという沼田先生。先生の教育方針は一見ユニークなものにも思えますが、ひとりひとりの子どもをよく観察して、実践している教育の結果を日々見つめてきたからこその説得力がありました。
子どもたちのやる気を引き出し、自立した大人になれるよう取り組む先生の教育に今後も注目です!

沼田晶弘
ぬまた・あきひろ/国立大学法人 東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。1975年、東京都生まれ。東京学芸大学教育学部卒業後、インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、アメリ カ・インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士を修了後、同大学職員などを経て、2006年から東京学芸大学附属世田谷小学校へ。 児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が話題に。教育関係のイベント企画を多数実施するほか、企業向けに「信頼関係構築プログラム」などの 講演も精力的に行う。

Photo:大根篤徳