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わが子がいじめを受けている!そのとき親ができる子どもの心のケアとは【臨床心理士・吉田美智子先生】

わが子がいじめを受けている!そのとき親ができる子どもの心のケアとは
子どものいじめの問題を考えるとき、自分の子どもが加害者になるケースもあれば被害者になるケースもあるでしょう。子どもがいじめの被害者とならないために、あるいはもしいじめの被害者になってしまったとき、親にはどんなフォローができるのでしょうか。臨床心理士の吉田美智子先生にお話を伺います。

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わが子がいじめの被害者に?親がSOSに気づくためには

――親なら「自分の子どもがいじめの被害者になりませんように」と願うものです。自分の子どもをいじめの被害者にしないために、親が普段から気を付けておくことはありますか?

吉田美智子先生(以下、吉田先生):普段の学校生活や習いごと、SNSなどにおいても「何か困ったことがあったら、親が話を聴いてくれる」と子どもが感じられることは、とても大切なことです。いつでも・何でも相談できる相手が身近にいる、と感じると安心できますね。

――いじめの被害に遭っているとしても、なかなか話してくれない子どももいます。いじめの被害に遭っている子どもにあらわれる、言動の変化はありますか?

吉田先生:元気がなくなる、学校に行きたがらない、部屋にこもりがちになる、イライラしているといった行動がみられることがあります。また自分の持ち物が壊れている、持ち物にゴミが混ざっているなど持ち物に気になる兆候が見られること、他には親に八つ当たりする、「どうせ私なんて」「誰もわかってくれないし」などという投げやりな言い方をすることもあります。

こういった言動や持ち物の変化が見られたら子どもの様子を注意深く観察してください。

ただ大切なのは親が感じる親が感じる「ちょっとした違和感」です。子どもの様子が普段と違う、と感じたら、それがSOSになることがあるんです。

――「違和感に気づかなければならない」となると、「私は自信がない」という人もいると思うのですが……。

吉田先生:もちろんママひとりで子ども全員を細かく観察するのは難しいことです。言動や持ち物の変化の具体例を挙げていますが、親御さんには「どこを見るか」だけでなく、子どもに対する親の勘、第六感のようなものも大事にしてほしいんです。

子どもの朝の様子がなんとなく冴えないなど「なんか変だぞ」と感じたら、1週間くらい注意して様子を見るといいですね。しばらく注意して観察することで「違和感」がただの思い過ごしだったのか、確信できるものであるのかがつかめてくるでしょう。

親は子どものSOSにどう対応すればいいのか

――子どもからいじめの被害についての相談を受けたり、違和感が確信に変わったりしたら、親はどう対応したらいいでしょうか?

吉田先生:子どもの話をよく聴いて、学校の先生などいじめの現場にいる先生に相談してください。子どもに我慢させないでくださいね。いじめの対応中は、日常生活を変えないことが大切です。

――生活を何を変えないのには、どんな理由がありますか?

吉田先生:生活の変化はストレスを生むからです。でもあたたかい雰囲気で過ごしてもらうのは、とてもいいことですよ。

――子どもが話しやすい環境とは、具体的にどういうことをすればいいでしょうか?

吉田先生:子どもが安心して話せる環境であれば、自宅でなくてもいいです。子どもが好きなカフェなどに出かけてもいいですね。あるいは一緒にお風呂に入ってもいいですよ。

子どもと話すときは「親は子どもの話を聞く準備ができているよ、話すタイミングは子ども自身に任せるよ」ということを伝えてください。相談するかしないかは子どもが決めていい、親は子どものすべてを受け入れる準備ができている、と子どもに伝えることが重要です。

もうひとつのコツは、子どもからの話を聞くときは子どもの隣に並んで座ることです。

――子どもの隣に並んで座るのは、どうしてですか?

吉田先生:子どもと並んで座ることで親も子どもも同じ方向を見て、お互いの目を見ないで負担なく話すことができますよね。また「私はあなたサイドにいるんだよ(あなたの味方だよ)」と伝えることができます。

――そういうところにも気を配っていくといいのですね。親として、必ず伝えておきたいことはどんなことでしょうか?

吉田先生:「あなたは今のままでいい」と声かけをしてください。

「自信が持てなくても、

泣いていてもいい。

ありのままでいい」

と子どもが「いじめられた自分にも居場所がある」と感じられるメッセージを伝えてください。ありのままの自分でいい、と言われることは子どもの自己肯定感を育てることにつながります。

――ちなみに話を聞いた結果、子どもの双方に悪い点があったときはどうすればいいですか?

吉田先生:子どもが「いじめを受けている」と言っていたとしても、一方的に被害者になることは少ないんですね。やったりやられたりしているんです。子ども同士の小競り合いは日常的にありますから。

子どもの話をじゅうぶんに聞いたうえで、もし子どもが手を出したことが過去にあるとわかったら「いじめられると苦しいね」という声かけをしてあげてもいいかもしれません。

相談相手の選び方は?

――親が最初に相談するのは、やはり担任の先生ということになるでしょうか?

吉田先生:担任の先生に相談する大きな理由は、学校という子どもの社会において、子どもにとって一番身近な大人である担任の先生が味方になってくれると、子どもの安心につながるからです。

担任に相談したくない場合は、スクールカウンセラーに相談するといいですよ。担任の先生に相談する場合でもスクールカウンセラーもあわせて相談するといいかもしれません。なぜならスクールカウンセラーが加わることで、担任の先生と加害側・被害側の対応・ケアの役割分担ができるからです。スクールカウンセラーのほかに保健室の先生などもいいかもしれません。もちろん初めに相談する窓口は担任の先生かスクールカウンセラーの話しやすいほうでいいですよ。

――学校関係者以外で相談できる人や窓口はありますか?

担任の先生、スクールカウンセラーのほかには、自治体の教育相談センターでも相談できます。

「親はいつも子どもの味方」だと改めて子どもに伝えたい

子どもが心にストレスを抱えて言動まで変わってしまうほどのいじめだとしても、きっかけはささいなことかもしれません。子どもが発する小さなSOSを家庭で察知することができたら、いじめの影響を抑えることができるかもしれません。

吉田先生からは子どもが発するSOSの具体的な例や、SOSを受けたときに親がとるべき行動についてのお話がありました。たとえ結果的に思い過ごしになったとしても、”小さな違和感”を拾っては子どもの言動を観察する習慣を親がつけておくと、いじめの影響を軽減できる可能性が高くなるのではないでしょうか。

そして子どもが相談しやすくなるように、日頃から子どもには「何があろうと親はいつも子どもの味方」だと、声に出して伝えてあげたいですね。

取材、文・しのむ イラスト・よしはな

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