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赤ちゃんが夜泣きをしても不安にならなくていい理由【新生児科医・今西洋介先生】

赤ちゃんが夜泣きをしても不安にならなくていい理由
妊娠・出産を経て退院し、赤ちゃんと一緒に自宅へ帰ったときから、あわただしい子育ての日々となりますね。赤ちゃんのなかには新生児のころからまとめて寝てくれる子もいれば、なかなか寝ない子もいるでしょう。抱っこで寝かしつけてやっと寝たと思ったら、布団に寝かせたとたんに起きた、なんてことも……。

そんな謎の多い新生児の睡眠について、大阪母子医療センター 新生児科の今西洋介先生にお話を伺いました。

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「背中スイッチ」は医学的には……?赤ちゃんの睡眠について

――新生児がなかなか寝てくれないと、ママは負担に感じたり、不安になったりします。新生児は一日のなかでどういった睡眠リズムになっているのでしょうか?

大阪母子医療センター 今西洋介先生(以下、今西先生):産まれたばかりの新生児の睡眠リズムは確立していません。産まれてしばらくは短い睡眠を繰り返します。時間の経過とともに、徐々に確立していきます。

――新生児の睡眠リズムを整えるにはどうしたらいいでしょうか?

今西先生:睡眠リズムを整えるのは新生児期には難しいとおもいます。なぜなら新生児期の赤ちゃんは、寝ようとして寝るわけではないからです。赤ちゃんの睡眠リズムは、生後3ヶ月くらいから徐々に整い始めます。ただし睡眠リズムの整い方、整うペースには個人差があります。1歳を過ぎても夜泣きすることもありますよ。

――新生児期を過ぎて、睡眠リズムを整える方法はありますか?

今西先生:ママには非常に厳しい話に感じるかもしれませんが、睡眠リズムを整えるコツは、実はありません。赤ちゃんは日照時間のリズムで睡眠リズムを確立していくので、朝になったら起こして、夜になったら寝かせる、といった太陽の動きに合わせて生活リズムを整えてあげる働きかけはできるとおもいます。

――赤ちゃんとは一緒に寝たほうがいいでしょうか? それとも別の部屋にそれぞれ寝たほうがいいでしょうか?

今西先生:赤ちゃんの1ヶ月健診でもときどき、別室で寝ることで、表情が乏しく口数が少ない「サイレントベビー」となることを心配する声もあります。ただ「サイレントベビー」という医学用語はないんですね。赤ちゃんが物事に反応するのは生後半年から1歳以降といわれています。新生児期から赤ちゃんと別室で寝ていたことが原因で、赤ちゃんが何らかの障害などになることはありません。それは医学的に根拠のない話です。

赤ちゃんを抱っこして授乳して触れ合っていれば、寝ている部屋が別だからといって、愛着障害になることはないんですよ。

――ママの抱っこでしか寝ない赤ちゃんもいるようです。赤ちゃんが寝やすい姿勢、というものはあるんでしょうか。

今西先生:僕自身もいわゆる「背中スイッチ」には苦しめられました。赤ちゃんを寝かせる、寝やすい姿勢や「背中スイッチ」について医学的に対処できること、分かっていることはないんです。

夜泣きの原因がわからなくても、不安にならなくていい

――赤ちゃんが寝ないだけでなく、夜泣きをするとママたちはさらに不安になってしまいます。

今西先生:赤ちゃんが夜泣きをするのはママのせいではありません。夜泣きの大半は原因不明といわれています。授乳をしていないことやおむつを長時間替えていない、といったよほどの理由がなければ、夜泣きに原因はない、と考えていいですね。なので夜泣きの原因を探って不安に陥る前に、「赤ちゃんはおっぱいを飲んで寝てうんちして泣くものだ」と考えてお世話をしたほうが、ママをはじめとする家族の皆さんの気持ちが楽になるのではないでしょうか。

――夜泣きを含め、赤ちゃんが泣くことは当たり前のこと、と考えればいいんですね。

今西先生:我々小児科医にとっては、赤ちゃんが「泣かない」ほうが怖いことなんです。泣くのが当たり前の赤ちゃんが「泣かない」ということは何か病気があり重症化している可能性がある、と考えます。

――泣き続けて寝ない赤ちゃんは睡眠不足にならないのでしょうか? 

今西先生:赤ちゃんは大人と違い、人間の本能に近いところで生きていますから、自分で睡眠を調節しています。起きようとして起きるわけではなく、寝ようとして寝ているわけでもありません。もっというと自発的に夜更かししたりはしません。睡眠不足の心配はいりませんよ。

育児不安を感じない親はいない。周りに頼ることを忘れないで

――赤ちゃんに泣かれたり、寝なかったりするとつい自分のせいだと思ってしまうママもいます。先生から世の中の子育てしているママさんたちに伝えたいことはありますか?

今西先生:世の中の、とくにお母さんたちに伝えたいことがあります。

育児不安を感じない親はいません。誰しも大なり小なり育児不安を抱えています。育児不安を軽減するのは人とのつながりです。たとえば旦那さんの協力は欠かせません。ママ自身の家族との同居も育児不安の軽減には有効です。

また男性の育児参加は、ママと赤ちゃんを助けることになるし、パパにとっても子どもへの愛着形成の一助になります。
ママは決して無理をしないこと。そばにいる人に頼ること。これを忘れないでください。

人を育てるのはとても大変なことであり、大切なことです。

赤ちゃんを育てるのは、慣れないこともある。誰かに頼って、パパはできるだけ育児参加をしてください。

「手伝う」「助ける」ではなく、パパも主体となってママと一緒に育児をしてほしいです。

 

――今西先生、貴重なお話をありがとうございました。

取材、文・しのむ イラスト・水戸さゆこ

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