「老後2000万円問題に備えて」「生命保険代わり」。投資用マンション勧誘電話にご注意を!
「投資用マンション販売のトラブルが後を絶ちません」というのは不動産コンサルタントの前田浩司さん。筆者の携帯にも先日、不動産販売会社から電話がありました。相手は一方的に質問をしかけてくるため、聞かれるままに返事をしていると、マンション投資にまったく興味がないにも関わらず、営業マンに直接会って話を聞くことになりかねません。万が一のために備えて、『元営業部長だから知っている 不動産投資 騙しの手口』の著者であり、不動産コンサルタントの前田浩司さんに伺いました。
最初は投資用マンション販売の電話だとは気づかなかった
――先日、投資用マンション販売の会社から電話がありました。「突然のお電話失礼します。○○会社の××といいますが、老後2000万円問題のことでアンケートをとっていますが、お時間取らないので回答してもらえますか」という感じの始まりでした。
なぜ不動産販売会社だとわかったのでしょうか?
――「老後の生活心配じゃないですか?」という話から、「実は私どもの会社は資産形成のお手伝いもしています。今、ご自宅はマンションですか? 戸建てですか? 今お住いの住宅のほかに、もう1つ物件を持って人に貸したら、毎月今の家賃と同じくらいのお金が入ってきますよ」という話をしてきたからです。
直接不動産販売や投資用マンションという言葉は使わなかったわけですね。
――はい。そのため最初は不動産販売会社からの電話だとは気づきませんでした。
投資用マンションの営業マンだと、まず相手に警戒心を与えないようにするために、自分が不動産販売の社員だということを名乗らないようにすることがあります。そのうえで、年代に合わせての関心事を質問形式で行い、まず始めに相手の不安をあおるようなことを言ってきます。
「もしかしたらこのままではまずいかも」。イエスを引き出す質問術に要注意
――たとえば、どのような質問をするのでしょうか?
さきほどお話に出たように「今、老後2000万円問題が言われていますが、この先2000万円貯められる自信はありますか?」「年金もどんどん減ってきていますよね。私たちが60代、70代になったときには年金は雀の涙程度になっているかもしれませんよね」と、そんなことを話して「将来、お金がなくて生活に困っている姿」を想像させるような質問をするのです。
――それを聞いたら、本当に不安になってきました!
一度相手の不安をあおってから、「老後のお金を貯めるためにも、今マンションを人に貸せば税金がたくさん戻ってきますよ」「ローンを完済してしまえば、投資用物件から得られる賃貸収入は丸ごと生活費に使えるから年金代わりになりますよ」と、今度は「不動産投資をしてプラスになる」イメージを話します。
――恐怖心をあおった後に、「こうすれば救われる」という話をもってくるわけですね。
さらに「物件を持てば生命保険がついているので、今かけている生命保険の死亡保障が5000万円だとしたら、3000万円くらいにすれば、現在払っている月々の生命保険料の支払いが減りますよ。それを不動産投資にまわせばいいんじゃないですか?」と、「今の生活費が少し安くなる」ということをアピールしてきます。
――1つ質問ですが「物件を持てば生命保険がついてくる」というのは、どういうことですか?
物件を持つ=投資用マンションを購入するということになります。その場合、たいていは不動産投資用のローンを組むことになりますが、同時に団体生命保険に加入することになります。団体生命保険とは、契約者が亡くなった場合、ローンの返済をしなくてよくなるものです。その場合、賃貸収入がそのまま生活費や貯金として使えるようになるため、生命保険がわりとして考える人もたくさんいます。
子どもに資産を残したい。親心に付け込んだトーク術
――ほかにはどんなことを言うのでしょうか?
「お子さんに資産として残してあげることもできますよ」という言葉は、ご家庭を持たれている人には、よく使う言葉だと思います。
ここであげている具体的な事例は、間違いではないです。投資用マンションや投資用の住宅を持つことで、収入が入り続ければ将来の年金代わりにもなるし、生命保険代わりにもなるし、お子さんに資産を残すこともできます。
ただし、それが「優良物件であった場合」「自分の現状の資産状況に合っていれば」という話です。トラブルになるのは「物件自体が良くなくて、人に貸したくても借主がつかない」「無理やりローンを組まされて買ったものの、資金繰りがうまくいかない」「相場よりもかなり高い金額で売りつけられた」というようなことがあるからです。
目的は「直接会って話をすること=その日のうちに契約締結」
――電話をかけてきた不動産の営業マンの一番の目的はなんですか?
直接会って話を聞いてもらうことです。「話だけなら」と思ってみなさん出かけていきますが、ここが気をつけなければいけないところです。ほとんど知識がないまま話を聞いてしまうと、いいことばかり言われて気づいたらその日のうちに契約してしまっていることが非常にたくさんあります。
――そういう場合はどうしたらいいですか?
まずは、営業マンに会うときは不動産の知識がある人に一緒に行ってもらう。もう1つは、決して会ってその日に契約しない。まずはこの2点について気をつけてください。もし電話での勧誘で疑問を持つことがあれば、いったん電話を切り、国民生活センターなどに電話して相談してみてください。
知識がないままに話を進めると危険
偶然かかってきた1本の不動産営業の電話から、どのような誘い文句を伝えているのかがわかってきました。不動産投資が危ないというわけではなく、知識がないままに話を進めてしまうと大変危険です。まずは本やネットの記事などを読んで、知識をつけておくことをおすすめします。
取材・文、長瀬由利子 編集・山内ウェンディ