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経済産業省が日本の教育再生に本腰。未来の教育はどう変わるの?【経済産業省・浅野大介さん】

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「教育は、文科省だけがやればいいというものではなく、塾や通信教育など民間教育に携わる経産省も積極的に関わるべき」と話すのは、経済産業省商務・サービスグループ教育産業室長の浅野大介さん。経産省が掲げる「教育再生」とはどのようなものか。今後、教育はどのように変わっていくのかについて話をうかがいました。

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学校教育も含めて教育全体を変えていきたい

――教育再生というと、文科省が担当というイメージがあります。なぜ経済産業省が教育再生に力を入れているのでしょうか?

浅野:まずEdTech(エドテック)というのが1つのキーワードになります。エドテックとは、Education(教育)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせた造語です。学び方というのを、テクノロジーの力を使ってかなり変えることができるだろうなと思っています。それでエドテックに取り組んでいるのです。

その前に、なぜ経産省が教育に絡むかというと、元々僕らは塾産業とか、いわゆるエドデックなども民間の教育産業が持っているツールのひとつです。塾産業、通信教育、その他エドテック、民間の教育産業というのは、まさに僕ら経産省の担当領域です。ただ、これまで経済産業省としてはテクノロジーをつかって新しい学びを作り出そうということはやってこなかったのです。これはもったいないなと思って、新しいテクノロジーも含め、民間教育のいろんなプログラムやリソースを、今度は公教育の現場も含め、教育全体を変えていきたいなと思っています。

社会課題の解決ができる人材を増やしたい

浅野:「教育全体を変えていきたい」という思いから始まった教育再生ですが、「じゃあ、なぜそんなことを始めるんですか?」というと、ひとつは、僕らは社会課題の解決をできる人をもっと増やしたいという思いがあります。世の中全体が時代の変化に合わせていかないと、日本の社会全体がアップデートされていかない。

これまでの前例、これまでの経緯、これまでのやり方というのをずっと踏襲して同じことをやってしまう人たちは、日本の社会の中では多いと思うんです。そこを変えていく力というんですかね。その気持ちを持った人たちをもっと増やさないと、社会全体で行き詰まるだけだし、産業では新しいイノベーションは起こらないし、そういう意味では日本は世界の中でどんどん存在感がない国になってしまいます。

一人ひとりの個人の人生を考えてもクリエイティブに生きたほうが楽しいじゃないですか。それに誰かが何かをしたことによって、人から賞賛を受けて、いい気分になって、またさらにがんばるという、そういう前向きのサイクルを作るためには、一人ひとりが課題解決力というのをつけないといけない。だったら学校というのは、課題解決の場を学ぶ場になったらいいし、そもそも学びはそのためにあるものだ、というふうに考えています。

社会で活躍できる人材を作るためにも民間教育に力を入れるべき

――教育再生を経産省からやっていくのは、難しかったのでは?

浅野:いや、それほど難しくもないですよ。さっきいったみたいに教育と産業、2つの切り口があるんですよ。僕らは、日本の経済産業の未来について責任を持ちます。そのためにも、まずいい人材を育てて、働きやすい環境を整えることが大切です。なかでも、人材育成は非常に重要なポイントで、いい人材を育てるためにも民間教育に力を入れる必要があるのです。

これまで教育といえば、文科省の担当領域だから、僕ら経産省はそれほど積極的にはかかわってこなかったんです。学校教育という点では文科省ががんばるけど、学校教育の出口となる、経済や産業の中で活躍できる人材をどう育成するかは、経産省が深く関わるところです。

国の未来を決める教育は各省庁で取り組むべきこと

浅野:そもそも教育は、日本の国の未来を左右する大きなテーマの1つなので、1つの役所だけで考えればいいというものではないと思うんです。教育の出口のところに責任を持っている我々の視点でも、教育というのはちゃんと考えるべきだし、文科省だけがやっていればいいというものでもないと思うんです。やっぱりいくつかの役所が教育についていろんなやり方を出し合いながら考えていくべきものだと思ったので、やりましょうとなったんです。

とくに、経産省はさきほどもお話したように、塾や通信教育、エドテックなど、民間教育に深く関わっています。そのため、経産省としてももっと積極的に教育に関わる必要があると思います。

省内では「そこまでやるんですか?」という意見も、当然ありました。ただ、幸い経産省の大臣が近畿大学の理事長の学園経営をされていた方で、大臣自体が教育改革について非常に強い思いを持っていたこと。また、省内でも反対意見がありつつも「これはやるべきだ」という声もけっこうあったので、その波にのって経産省主体の「未来の教室」作りをスタートしました。

新しい学び方をデザインする「未来の教室」とは

――「未来の教室」とは、どのようなものですか?

浅野:「未来の教室」とは、エドテック、個々の学習方法に合わせた個別最適化・文理融合(STEAM)・社会課題解決という4つのキーワードを元に、効率的に知識を習得し、自ら課題を発見したり解決する能力を育てていく学校です。経産省では、この新たな学習プログラムについて、「未来の教室」実証事業として開発・実証を進めているのです。

この実証プロジェクトの進捗状況や最新動向などは「未来の教室 Learning Innovation」ポータルサイトで随時公開していくので、注目してみてください。

取材、文・間野由利子 編集・山内ウェンディ

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