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今注目の”プログラミング的思考”はブロック遊びで育つ【経済産業省・浅野大介さん】

経済産業省・浅野大介さん8「子どもの頃、夢中になってレゴブロックで遊んだことで、プログラミング的思考が育まれた」と話すのは、経済産業省 商務サービスグループ 教育産業室長の浅野大介さん。経済産業省が推進するプログラミング教育についてお話を伺いました。
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塾や通信教育など民間の教育にイノベーションを起こす

――経済産業省で「教育産業室」を立ち上げたそうですね。これはどういうものですか?

経産省は、民間教育を所管しています。これに対して文科省は公教育を所管しています。2017年7月に立ち上げて、うちの部局再編の中で新しい軸として、教育改革をやろう。うちは民間教育を所管として、公教育を見ている文科省との対話の中で教育全体を変えていくドライバーになりたいと思い、立ち上げたのが教育産業室です。

そのためには、今までと違う価値観、違う見方、考え方というのをちゃんと持ち込むこと。それを発信することが責務だと思います。あとは、教育にイノベーションを起こすことが自分たちの仕事だと思っています。公教育の中からイノベーションというのはなかなか起こりません。しかし、塾や民間教育は自由です。

今の教育産業は学校、公教育のあとを追っているので、そうではなくて、「教育産業は教育イノベーターであれ」ということなんです。イノベーションを起こせるのは民間のほうなのです。だから教育のイノベーションを起こそうよという運動論をエドテックのベンチャーや旧来型の教育産業、塾、通信教育など、全部集めてプロジェクトを作る。そして教育産業の在り方を変えることによってイノベーションを起こし、それを公教育の世界にも入れていく。そんな感じにしていきたいです。

これからの教育では課題を発見し、解決する力が重要になる

――ちょっと難しい話になりますが、第四次革命、すなわちIoTや AIなどの技術革命によって教育はどう変わるのでしょうか。

第四次革命で、人間に求められる役割が大きくかわってきます。AIの代替を防ぐ。人間はAIを使いこなし、判断する、デザインするという機能にどんどん特化していきます。だから課題を発見し、解決するためのデザインをし、それを現場で実現させる力。その能力が教育の中で最も重要なものになると予測されます。

――経産省では、エドテックなどIT教育にも力をいれていますね。プログラミングに力を入れるのもその一環でしょうか。

プログラミングは学びを深めるための道具の1つです。プログラミングも含め、課題を発見し解決する力。そのためにはプロジェクトを自分で定義して進めていく力と、基礎学力の両方が大事になってきます

――ママたちの中には、プログラミングというと、JAVAなどのプログラミング言語を学んでパソコンでゲームをできるようにするというイメージを持っている人も多いと思います。

それもプログラミングの1つですが、今教育で注目されているプログラミングは、プログラミング的思考です。つまり、解決したい課題があって、それを行うためには、何をどういう手順で行ったらいいのかということを学ぶことが目的です。

ブロック遊びで想像していたことがプログラミングによって実現

――ブロック遊びをするとプログラミング的思考が育つと聞きますが、どう思いますか?

育つでしょうね。僕も子どもの頃、かなりハマりましたよ。レゴブロックを使ってあれこれ妄想遊びをしていたんです。レゴブロックで遊んだときに思っていたことは、「こんな車を作りたい」「こんな走り方をさせてみたい」ということなんですよ。ただ、ブロックだと作りたい形の車を作ることはできたんですけど、自動で走らせることはできなくて。

僕の子どもの頃はブロックで遊ぶことまでしかできなかったんですけど、今はプログラミングを使えば動かしたり、走らせたりできるんですよ。そうすると、自分のイメージしたものを実現させるためには、どんなプログラムを組んだらいいかという試行錯誤をもっと深くできるのです。だからすごくいい組み合わせだと思っています。自分の思った形を実現させていくためには、レゴブロックはいいですね。

自由自在に想像を広げられるブロック遊びに夢中

――ブロック遊びは、教育の専門家の方たちも注目してますね。

レゴブロックのなにがいいかって、集中力ですよ! 私の親によると、私は2時間でもずっと一人でやっていたそうですよ。親も、それを止めなかった。消防車セット、病院セット、宇宙ステーションセットとか、いろいろあったと思うのですが、そういうのは全部バラバラにして、自分で好きな謎の宇宙ステーションセットを作っていました(笑)。そういう決められた作り方ではなくて、新しいものを作りたいというのがあって、それが今の自分につながっている気がします。

――経産省では、子どもがワクワクして夢中になれるプロジェクト「マイプロジェクト」を推進していますが、まさにそれですね!

ハマれるものがあって、自分のこだわりを持って、自分なりに進められる、これは完全に「マイプロジェクト」ですよ。だって、毎日レゴブロックで遊ぶために学校から帰ってきていたわけですから。

親がやるべきことは子どもの「マイプロジェクト」発見のサポート

――最後にママたちへのメッセージをお願いします。

まずは、今の価値観から自由になってください。今の学校、教育が前提にある秩序というのは、必ず近い将来崩れます。崩れたときに生きていけるようにしたほうがいいです。あと、自分の生き方、自分が大切にするものを子どものときから考えられるようにしておいたほうがいいですね。そのためには、お母さんが自由である必要があります。

「子どもをいい大学に入れたい」というお母さんの気持ちもわかります。正直、いい大学に入ったほうが楽です。社会的信用も得られます。昔に比べて学歴社会ではなくなってきているとはいえ、まだ世界中どこにいっても学歴社会です。ただ、いい大学に入るというのはそれほど大変なことじゃないんです。いわゆる「お勉強」の世界というのは、最小努力で最短時間で済ませることが大切。そのうえで一番高い結果を出せる努力の仕方を、子どもと一緒に考えてあげることが大事だと思います。

これから先を生きていく上で、一番大事なことは「マイプロジェクト」の存在です。この「マイプロジェクト」がないと、これから先の人生は苦しいですよ。お母さんは子どもに「マイプロジェクト」を見つけられる環境を作れるか。そのくらいの感じでいていただいたほうがいいと思います。

取材、文・間野由利子 編集・山内ウェンディ

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