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35歳のときに高校の科学の勉強をやり直しました!学びが楽しくなるキッカケとは【経済産業省・浅野大介さん】

経済産業省・浅野大介さん3「子どもの頃は楽しくなかった勉強も、大人になってやってみると意外とおもしろい」ということはありませんか? 経済産業省 商務サービスグループ 教育産業室長の浅野大介さんも、理系に興味がなかったものの、仕事で理数系の知識が必要になり、35歳のときに勉強しなおしたといいます。「学びが楽しい」と思ったきっかけについて、お話を伺いました。
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省をまたいでのルール変更も手がける

――浅野さんは、なぜ経産省にいながら教育に興味を持ったのでしょうか?

僕は学生の頃、そこそこ勉強はできるほうでしたが、本当に学ぶことが楽しいと思えるようになったのは、経産省に入ってからなんです。なぜなら、経産省ではいろんなプロジェクトを担当させてもらえたからです。この間までエネルギーをやっていたと思ったら、今度はガス開発に行け、その次には地域活性化、その次は景気対策。戻ってきて物流をやれといわれて、留学に行って帰ってきたらまたエネルギーの部署になるなど、いろんな部署でいろんな仕事に携わることができました。そのなかで、「わからないことが出てきたら勉強しなおす」ということと、「ルールは変えられる」ということを学びました。

――「ルールは変えられる」というのはどういうことですか?

エネルギーの部署を担当しているとき、石油産業で大きな再編が何度か起こりました。そのとき僕は裏側で仕事をしていて「この会社とこの会社の組み合わせで再編をする」ということもやってきました。再編する際には、既存のルールでは通用せず、必要に応じてルールを変えなければいけません。ときには、省をまたいでのルール変更も必要になってきます。あるときエアラインについてのルール変更をしなければいけないことがあったのですが、それは国土交通省の政策です。経産省内にとどまらず、他の省にも協力してもらい、ルールを変えることも必要なのです。

リアルなプロジェクトは学びに理由をくれる

――地域活性や景気対策、エネルギーなどのことに携わってきたからこそ見えることがありますね。

いろんな社会課題に対して、仕事として「やれ」といわれるわけです。本当は自分で「これをやりたい」というのが見つかればいいけれど、人から「やれ」といわれたプロジェクトでも十分楽しいんですよ。なぜならリアルなプロジェクトは学びに理由をくれるからです。これを実現しなければいけないから学ぶわけです。エネルギー政策をやっていたとき、私はまったく理系に関心がない文系の人間だったんですけど、仕事は理科と数学が関わってくるわけです。それで35歳のときに高校の科学の教科書などを買って勉強しなおしました。

だけど自学自習しようにも理解するのが難しい。それで先生として目をつけたのが、引退した先輩方です。昔、活躍していて、科学の知識はある。でも、今はもう仕事をしていないし時間もある。誰かに教えたい気持ちも持っている。そういう先輩たちにお願いして科学のことについて教えてもらったのです。

「いつか役立つ・かもしれない」勉強はつまらない

――学ぶ必要が出てきたから、勉強しなおしたわけですね。

「高校のときはおもしろくなかったことが、今はおもしろく感じる。これは学校での学びがおかしいんじゃないか」と思ったのです。子どもの頃の勉強は「何のために勉強するのか」がよくわからないままに、好きな教科も嫌いな教科も勉強しなければいけなくて、「いつかどこかで役に立つ」といわれながらやっていました。
これに対して、大人になってからの学びは「学ぶ目的が明確」なのです。だから、同じ科学の内容であってもおもしろく感じられたし、それがわかったからこそ「子どもだけに苦行をさせるのはやめよう」という気持ちになったのです。

あと経産省で仕事をしていて思ったことは、エリートたちもそうですが、「なぜ当事者意識が不足するのか」ということです。ようするに、与えられた前提が多すぎてみんな何かのせいにするのです。「前提というのは変えられない」「自分でルールを変えられない」というのも、与えられた前提の1つです。みんな何かのせいにしたくなる。その根源が、さきほどお話しした「市民教育が不足しているんじゃないですか?」ということです。みんなのルールはみんなで決めているんだから、不満があったら変えていけばいいわけです。

「ルールは変えられない」ではなく「不満があれば変えればいい」

――「ルールは守るべきもの」と教えられてきますが、ルール自体を変えてしまうというのもアリなんですね。

もちろんです。今の社会は、小さい市民運動を起こす力が明らかに不足しているんです。その根源は、さっきいったように「市民教育が不足しているんじゃないか」ということです。みんなのルールは、みんなが決めるんだから、不満があったら変えればいいだけの話です。そういう小さい市民運動を起こす力が明らかに不足しています。その根源は全部学校にあるのではないでしょうか。だから社会を変えようと思ったら、まずは学校を変える必要があるのです。

そこで今、経産省では「何のために学ぶのか」という「マイ・プロジェクト」が重要だと考えていて、学びの際にAIなどの技術を活用して効率的に勉強を進めていこうという取り組みをしているのです。

取材、文・間野由利子 編集・山内ウェンディ

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