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健康な歯を抜くこともあるの!?矯正歯科治療に関する疑問を解決

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子どもの矯正歯科治療を始めたいと思ったらさまざまな不安が出てきますよね。治療期間や通院の頻度はどれぐらい? 健康な歯を抜かないといけないって本当? 費用はどれぐらいかかる? 保険はきくの? などなど、矯正歯科治療についての素朴な疑問について、矯正歯科専門開業医の団体である「公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会」専務理事の土屋朋未先生にお話を伺いました。

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矯正歯科への通院は月に1回

――矯正歯科治療の治療期間はどれぐらいですか?

矯正歯科治療の最終的なゴールは、親知らずを除く第2大臼歯、つまり12歳臼歯と言われる歯が生えてきて治すまでを考えています。昔は第2大臼歯は12歳に生えてきたんですけど、今は14歳ぐらいまで生えてこないことが多いので、矯正歯科治療が終わるのはそれ以降と考えていて下さい。

一般的にワイヤーをつけた治療期間は2〜3年と言われているのですが、実際には12歳臼歯が生えてきて、それを咬み合わせに関与させて終わりとなります。もちろん個人差はありますが、中学卒業から高校生くらいまでかかると考えていただければいいと思います。

――矯正歯科治療をすることになったら、どのぐらいの頻度で病院に通う必要がありますか?

だいたい1カ月に1回が多いですね。歯を固定しているだけなら3カ月に1回という場合もあります。

注意が必要な「床矯正(しょうきょうせい)」とは

――健康な歯を抜くこともありますか?

症例によっては歯を抜く必要もあります。あごが小さいという話がありましたが、10センチの器に12センチのものは入りませんよね。あごに歯が入らない場合は抜歯することがあります。

逆に器を大きくすることができるのであれば、入れる方も増やせます。「床矯正(しょうきょうせい)」って聞いたことありますか? これは、あごを広げると思われている方もいますが、あごを大きくするように見せて歯を抜かずに行うやり方です。実際にはあごの骨が大きくなっているのではなく、歯を起こして広げているように見せかけているだけです。凸凹の歯並びの場合、あごに入りきらない歯を無理して並べようとすると、歯が前へ前へと全体的に出てしまうことがあるので要注意です。

つまり、歯を抜かずに治そうとしてこの拡大床を使うと、歯を一列に並べることはできて見た目は綺麗になりますが、歯が全体的に前に出てしまい口を閉じることができなくなる可能性があります。いつも口が開いてしまうか、口がとんがり怒ったような顔になるので、歯だけ見るときれいに並んでいるように見えるのですが、口全体でみるとよくない結果になってしまうことも。あごに歯が入りきらない場合、抜歯せずに治そうとするのは難しい話なのです。

しかし手っ取り早く簡単に使うことができるのでとりあえず使ってみるといった事例がみられます。拡大だけで完結させるのは無理があることがあり、この床矯正をおこなって口が閉じにくくなったという相談は結構多いです。歯は並んだはいいけれど口が閉じないといったことにならないためにも、歯だけではなく、骨の状態もしっかり診ないといけません。そのためにもきちんと検査した上で診断をし、治療計画をしっかり立て、最終的にはワイヤーが入る矯正歯科治療が必要なことなどをきちんと説明を受けるようにして下さい。

ニッケルやラテックスでアレルギーが出ることも。その場合は早めに相談を

――矯正歯科治療を行う上で、金属アレルギーが出ることはありますか?

金属アレルギーは装置を入れるときに出ることはあります。特にニッケルに対するアレルギーが割と多いです。その場合はニッケルフリーの材料がありますので、初めに言ってもらうとありがたいですね。他にはラテックスというゴムのアレルギーもあって、その場合は担当医の手袋から変える必要があります。金属アレルギーがあると知らなくて、つけてみたら発疹が出たということであれば、皮膚科でパッチテストをしてアレルギーの有無を調べてもらうといいでしょう。その後装置を変更することが可能なので、その都度相談してくださいね。

治療費用にまつわる疑問を解決

――治療費の目安はどのぐらいですか?

自費診療なのでさまざまですが、大学病院を基準にすると総額60万円から120万円くらいになると思います。毎回の治療費が全部込みでいくらという場合もあれば、毎回来るたびに調整料をプラスして払う場合もあります。

また地方と都内では価格が違う場合もあったり、歯の裏からの矯正やマウスピース矯正は治療費が違うことがあります。

――料金体系は一般的にどうなっていますか?

初診相談料はあるところとないところがあります。あとは検査代、診断料、矯正歯科治療費(第1期治療と第2期治療に分けるところもあれば、分けないところもあります)、処置料(再診料とか管理料とか名目は各医院で違いますが、来院ごとにかかる料金のこと。これがあるところと、矯正歯科治療費に含めて処置料がかからないところもあります)です。

第2期治療が終わった後も、後戻りを防ぐ治療があります。ワイヤーを外した後、リテーナー(保定装置)という装置を使って、治療が全て終わってからも2年間ぐらいはチェックしに通ってもらうことになります。毎月というわけではなく3カ月に1回とか期間は空きますが、定期的に見せに来るのが一般的です。

――保険は適用されますか?

通常の矯正歯科治療は保険適用外ですが、「厚生労働大臣が定める疾患」に起因した矯正歯科治療、ならびにあごの外科手術が必要な顎変形症の手術前、手術後の矯正歯科治療などは保険診療の対象となります。

保険で治療を行うには保険医療機関でないとできません。顎変形症に関しては顎口腔機能診断料算定の施設基準を満たしている必要があります。
また国からの補助はないですが、医療費控除があります。

――矯正歯科治療をしていて、遠方へ転居することになったとき、他の歯科医院に転医した場合の治療の継続や治療費はどうなりますか?

日本臨床矯正歯科医会には「矯正歯科患者の矯正歯科医変更に関する規程」というのがあって、矯正歯科治療の途中で、転居やその他の事情で別の医院でその続きの治療を行うことになった場合、治療の内容と料金についての清算を行います。治療の料金は規程に従って、ワイヤー矯正の場合は治療のステップを4つに分けて考えます。例えば4分の3 まで治療が進んだところで転居になった場合、すでに全額支払っていた場合は4分の1を患者さんに返金となり、転居先で残りの4分の1の治療を行うので転居先の料金体系の4分の1の治療費を支払います。治療のステップがどれぐらい進んでいるかで清算していくことになります。

この治療費の精算に関しては、規程にそって査定をします。治療費は各医院で異なりますので、金額ではなく割合で算出します。詳しくは担当医にお尋ね下さい。

――今までの先生が、転居先の先生に治療の説明をしてくださるのでしょうか?

直接担当医同士が話すことが基本的には一番望ましいですが、直接存じ上げない先生のところに患者さんが行かれる場合もあるんです。そのときは今までやってきた治療内容や治療費について記載した転医用のフォーマットがあるのでそれをお出しします。受ける方側もいきなりだと驚くので、その先生にお伺いを立ててから患者さんには行っていただくようにします。私の場合ですが、基本的には紹介前に「こういう患者さんが行くのでいいですか」ということを相手方の先生にお電話して、了承が得られたら患者さんの転居先でこの先生のところに行って下さいとお伝えしています。

――もし一度治療をやめてしまった場合はどうなりますか?

一応治療を始める前に契約書を交わすので、そこにどう記載されているかにもよりますが、基本的には途中で終わることはあまりないと思います。突然来なくなった、行きたくなくなって途中でやめてしまった、でも後からまた治療をしたくなったなど、無断で治療に行かなくなった場合でも、もう一回治療を始めることはできます。同じ医療機関に行けば治療費をまた一から支払うことはないかもしれません。

子どもの場合は乳歯から永久歯に生え変わる時期は何もできない時期もあります。歯が抜けてしまって歯がないときです。その時期は定期検診ということで年に3、4回通っていると思います。でもそれを怠った場合などは先生に相談してください。いずれにしても、治療途中で自ら通院をやめてしまった場合は、連絡はしにくいとは思いますが、治療再開を申し出てみて下さい。医療機関側としては、心配していることが多いので、とにかく一度連絡を取ることをオススメします。

取材、文・山内ウェンディ 編集・横内みか イラスト・おんたま

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